「経営計画」と聞くと、「なんだか難しそう」と苦手意識を持つ社長もいらっしゃるのではないでしょうか。経営計画は、社長が「来期やりたいこと」を数字に落とし込んだものです。まずは、社長の「来期やりたいこと」を思いつくままに挙げてみましょう。それが経営計画をつくる第一歩です。
その上で、「来期やりたいこと」を実現するためには、どれくらいの資金が必要になるかを会計事務所と一緒にシミュレーションしてみましょう。そのシミュレーションの元になるのが、①目標経常利益②売上高の伸び③限界利益率(粗利益率)④従業員給与・賞与の伸び⑤従業員数――の「5つの質問」です。「来期やりたいこと」を盛り込んだ、具体的な数字で考えてみると、取り組むべき課題が明確になってきます。
来期に向けて、経営計画、つくってみませんか。
パート・アルバイトで働く人の中には、自身の年収と配偶者の扶養の範囲を意識している人も少なくありません。税金や社会保険の扶養の範囲に影響のある年収のライン、いわゆる「年収の壁」について、従業員に説明しておきましょう。
【所得税・住民税】
○100万円の壁 ▶ 住民税が課税
○103万円の壁 ▶ 所得税が課税
○150万円の壁・201万円の壁 ▶ 配偶者特別控除の額が段階的に縮小→0に
年収103万円以下であっても、給与所得以外に副業等の収入があると、一定の場合、一時所得や雑所得、譲渡所得となって、所得税が課税される「103万円の壁」等を超えてしまうことがあるので注意が必要です。
【社会保険】
○106万円の壁 ▶ 社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用
○130万円の壁 ▶ 社会保険(国民年金・国民健康保険)の適用
政府は現在、「年収の壁」を意識せずに働ける環境整備に力を入れています。これからは、扶養の範囲内で働くよりも、世帯収入を増やす働き方を提案しても良いかもしれません。
経済・社会のデジタル化に伴い急速に増えているのが、「デジタル資産」です。写真・動画などのデジタルデータもデジタル資産に該当しますが、中でも注意して管理することが必要なのは、ネット銀行・ネット証券口座の残高、サブスクリプションサービスの利用料金、FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産などの、金銭的価値のあるデジタル資産です。
デジタル資産は管理に必要な情報が運用者(本人)に集中しやすく、他人がその存在や内容を把握することは容易ではありません。また、FXや暗号資産取引など、金額の大きなデジタル資産は、税金の申告漏れ等の税務トラブルに発展することもあります。
デジタル資産の早期・適切な管理は、家族等の負担を減らすだけでなく、トラブルに巻き込まれるリスクを減らすことにもつながります。今のうちから、①デジタル資産の内容をリストアップする②信頼できる存在に共有しておく――といった対策をとると良いでしょう。
インボイス制度導入から1年が経過しました。インボイス発行事業者間の取引については、実務上の混乱は少なくなってきましたが、注意が必要なのは免税事業者等との取引です。免税事業者等からの仕入れに係る原則や経過措置を受けるための要件等を再確認しましょう。
□原則:買手は仕入税額控除ができない
□経過措置:令和11年9月30日までは一定割合の仕入税額控除が可能
この経過措置の適用を受けるためには、次のことが必要です。
①請求書・領収書等に消費税込みの請求金額・領収金額
(「区分記載請求書等保存方式」の記載事項)が記載されていること
②帳簿に「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載
記載要件が満たされている請求書等であるかどうか、まずはきちんと確認することをあらためて徹底しましょう。
生前贈与により財産をもらったときは、原則として贈与税の納税義務が生じます。その課税方法には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つがあります。
暦年課税制度は、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額(基礎控除後の課税価格)に、所定の税率(10%~55%)をかけて贈与税額を計算します。同制度の利用には特段の要件・制限等はありません。
相続時精算課税制度は、1年間に贈与された財産の合計額を基に、一定の税率(20%)で贈与税を計算して「仮払い」し、相続発生後、贈与された財産を相続財産に加算した上で、相続税額から「仮払い」した贈与税の分を差し引く(精算する)制度です。同制度の利用には一定の要件等があり、同制度を選択した贈与については、暦年課税制度に戻すことができません。
財産の状況や家族構成、贈与期間等により、どちらの制度が有利であるかの判断は非常に難しく、慎重な検討が必要です。生前贈与をお考えの方は、早めに当事務所までご相談ください。
政府は働き方改革の一環として副業・兼業(以下、副業)の普及を図るという方向性を示しています。企業にとっても、従業員が副業を行うことにより「社内では得られない知識・スキルを獲得できる」「社外から新たな知識・情報や人脈を得ることで事業機会の拡大につながる」等の効果が期待される一方で、①過剰労働や本業に専念できない②業務上の秘密やノウハウが漏洩する③競業により自社の利益が害される④労務管理等が煩雑になる――などのリスクが挙げられます。
副業自体への法的な規制はありませんが、裁判例では、企業の利益や信頼を損なうおそれがあるときは、副業の禁止や制限することを認めています。したがって、就業規則に「原則として、従業員は副業を行うことができる」とした上で、例外的に副業を禁止、制限する場合の規定を設けるといった対応をすると良いでしょう。就業規則に副業のルールを規定しておかないと、知らないうちに従業員が副業をしていても止めさせることができないおそれがあります。
就業規則がない中小企業も見受けられます。「副業をしたい」と従業員から申し出があったときに備えて、副業のルールを含めて、就業規則の整備を検討してはいかがでしょうか。
決算書や試算表を見ていて、「表示されている勘定科目の中身をもっと細かく、リアルタイムで確認したい」と思ったことはありませんか。
インボイス制度の導入によって、正確な会計処理を行う上で必要不可欠となったのが、自計化システムの導入と、取引先およびそのインボイス番号の管理です。同制度導入を機に定着した取引先別管理を、会計処理だけでなく経営分析にも活かしてみましょう。
主要勘定科目等(売掛金、買掛金、売上高、売上原価、経費科目等)について取引先別管理を行うと、自社の取引状況や債権・債務の取引先別の残高確認が容易にでき、経営課題や売上・利益アップのヒントをいち早く見つけられるようになります。
また、売掛金と売上高の取引先別管理に加えて、FXクラウドシリーズの「得意先順位月報」を活用すると、取引先別の詳細な分析ができるようになります。
夏から秋にかけては台風シーズン。風水害や地震等により法人の資産が被害を受けたときの損害額や復旧費用、被災した従業員や取引先を支援したときの支出等の多くは、当期の費用や損失として損金とすることができます。災害時によくあるケースを確認してみましょう。
〇ケース1:被災した自社の従業員等へ災害見舞金品を支給した
〇ケース2:取引先等へ災害見舞金等を贈った
〇ケース3:被災地に自社製品等を贈った
〇ケース4:取引先等へ事業用資産を供与した
〇ケース5:取引先の売掛金等を免除した
ただし、被災した取引先等への支援であっても、場合によっては寄附金や交際費等に該当するものもあります。災害時の税務上の取扱いについて判断に迷われた際は、当事務所までご相談ください。
発注事業者(業務を委託する事業者)とフリーランス事業者(業務を受託する事業者)との取引の適正化等を目的とした「フリーランス法」が11月1日に施行されます。この法律は、原則として事業者間(BtoB)における委託取引が対象で、フリーランス事業者に対して、発注事業者が果たすべき最大「7つの義務項目」を定めています。具体的な義務項目は次のとおりです。
①書面等による取引条件の明示
②報酬支払期日の設定・期日内の支払
③禁止行為
④募集情報の的確表示
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
⑥ハラスメント対策に係る体制整備
⑦中途解除等の事前予告・理由開示
発注事業者が満たす要件によって、遵守すべき義務項目は異なります。また、もしも義務項目に違反した場合には、罰則が科されることとなっています。施行日までに、必要に応じて業務フローや委託内容等を見直し、スムーズな取引に向けて準備を進めておきましょう。
会社の通常の事業とは関連しない「営業外収益」のうち、少額なものや、たまたまの取引で得た収益は、実務上「雑収入」として計上します。
例えば、不動産等の賃貸収入、保険会社からの契約者配当金、使用しなくなった車両・機械装置等の売却代金、自動販売機による収入、鉄くず・建設廃材等の売却代金、消費税の納付差益・精算差益、代理店手数料――等が雑収入に該当します。
雑収入は、通知があった時や債権が確定した日に収益計上すべき取引であり、税務調査でも期ずれを指摘されがちです。たとえ少額であっても漏らすことなく、正しく計上しましょう。
雑収入の判断や取扱いについて迷われた際は、ぜひ当事務所までご確認ください。
1年間の経営成績を表す損益計算書に対して、過去から現在に至るまでの経営努力の結果を示しているのが、貸借対照表です。財産や債務の内容、利益や損失の過去からの蓄積が表れている貸借対照表の「磨き上げ」をして、今から将来に備えておきましょう。
経営者が最高経営責任者として経営を担った後は、「次世代に事業承継する」「M&Aにより会社を譲渡する」「廃業する」等を選択することになります。ところが、金融機関からの借入金が多額であったり、貸借対照表が実態を表していなかったりした場合には、いずれの選択肢を選んだとしてもスムーズに進まない可能性があります。そのため、今のうちから貸借対照表の「磨き上げ」が必要なのです。自社の貸借対照表を、①不良債権②不良在庫③貸付金・仮払金等④投資等⑤借入金⑥隠れ債務(連帯保証を含む)の有無⑦自己資本――の観点からチェックしてみましょう。
「年収の壁(106万円)」などで話題に上ることが多い社会保険(厚生年金保険・健康保険)。政府はいま、「多くの人に手厚い社会保障を」との方針のもと、社会保険適用拡大の制度改正を進めています。令和6年10月から「従業員数51人以上」の会社が義務的適用となり(現行は「従業員数101人以上」の会社が義務的適用)、次の基準をすべて満たすパート・アルバイトの方が、社会保険の新たな加入対象者となります。
①週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
②所定内賃金が月額8.8万円以上
③2か月を超える雇用の見込みがある
④学生ではない(休学中、定時制・通信制の方を除く)
なお、従業員数をカウントする際は、店舗や工場等の複数の拠点を持つ会社では、全拠点の従業員数を合算する必要があることに注意しましょう。
新たに社会保険に加入した従業員の手取りが減らないよう、手当を支給するなど収入を増加させた場合は、「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」の活用が可能です(令和8年3月31日までの措置)。
融資審査にあたり、金融機関が重視するのは、主に①貸したお金は何に使われるのか?(資金使途)②貸したお金はきちんと返済されるのか?(返済能力)――の2つです。
金融機関からすれば、「将来、返済するためのお金(返済原資)」を生むものでなければ、融資は難しくなります。そこで融資の申し込みにあたっては、「借りたお金は何に使うのか」「融資実行後、どのくらい利益が生まれるのか」「その利益からいくら返済していくのか」を、社長自身の言葉で説明できるように準備しておきましょう。これらの説明が明確で、かつ具体的であればあるほど、金融機関は融資実行を判断しやすくなります。
また、年1回の決算書に加え、「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を通じて、定期的に試算表も金融機関に提出するようにしましょう。積極的・定期的な情報開示は、金融機関との信頼関係をより深める「第一歩」です。
「修繕費」とは、社屋や工場の外壁塗装、機械や車両のメンテナンスなど、会社が保有する固定資産の通常の維持管理と原状回復にかかる支出を指します。修繕費は、当期の費用として計上することができます。
修繕費と迷う支出に、「資本的支出」があります。新たな機能の物理的な付加や品質・性能の向上によって、固定資産の価値や耐久性をアップさせるような修理・改良を行った場合の支出が該当します。この場合には固定資産として計上し、法定耐用年数の期間中、減価償却費(費用)として計上しなければなりません。
なお、税務調査では実際に修理を行った箇所を確認することがよくあります。修理箇所の作業前後の写真や、修理内容がわかる資料を保存しておくと良いでしょう。
修繕費か、資本的支出か。判断に迷ったら、ぜひ当事務所までご相談ください。
残業手当は、会社が定めた「所定労働時間」を超えて労働させた場合に従業員に支給する賃金のことで、時間外労働手当とも呼ばれます。「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)」を超えて労働した従業員に対して、会社は割増賃金を支払わなければなりません。また、深夜や休日の労働には、別途割増賃金を支給する必要が生じます。
残業手当が支払われないと、従業員の離職につながるだけでなく、訴訟に発展してしまうおそれもあります。「労働の対価」という考え方のもと、適切に支給しましょう。
また、「なぜ残業が生じているのか」をあらためて考える機会をつくることも必要です。働き方改革が進み、ワークライフバランスが重視される昨今。残業時間の削減は、従業員の満足度向上や定着、採用の強化などにつながります。デジタル活用による「残業ありきの働き方」の見直しもあわせて進めましょう。
令和6年6月から「定額減税」が始まります。所得税の定額減税は、原則として、年末調整時の「一括控除」が認められておらず、月次での対応が必要になります。6月以降の給与計算事務をスムーズかつ適切に実施できるよう、次のことを準備しておきましょう。
(1)控除対象者の確認と減税額の確定
〇給与計算担当者は「令和6年6月1日」時点で、自社の従業員のうち「誰が」「いくら」減税となるのか──を確定する必要があります。
(2)「各人別控除事績簿」の作成
〇各従業員の減税額が確定したら、氏名、扶養親族等の人数、合計の減税額を記載した一覧表「各人別控除事績簿」を作成しておきましょう。
(3)給与等の明細書の様式の見直し
〇定額減税がスタートすると、各従業員の給与等の明細書に、当該給与等の所得税から控除した額を記載する必要があります。事前に明細書の様式を見直しておきましょう。
令和6年度税制改正で、法人税において交際費等から除外される1人あたりの飲食費の基準が5千円以下から1万円以下に引き上げられました。とは言え、会社のお金を安易に使うのは考えものです。
そもそも「交際費等」とは、得意先や仕入先等、会社の事業に関係のある人に対して、接待や贈答、慰安等を行うために支出する費用。会社の売上や利益の維持・増加、円滑な取引の継続等のために支出するものです。
そのため、交際費等が使われている実態が、個人的な友人とのゴルフや家族との飲食のような、役員の私的な支出であれば、役員への給与とみなされ源泉所得税が課されることになります。また、会社では損金算入が認められず、法人税等の課税額の増加につながることも。
「経費になるから」と公私混同はせず、適切な支出を心がけましょう。
現在、国税庁は「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指して、税務手続のデジタル化を推進しています。中小企業等にとっては、以下のような点で利便性が向上しています。
(1)キャッシュレスで「行かない」納付
〇e-Taxを利用したダイレクト納付、インターネットバンキングなどを利用すれば、窓口に行く手間や現金管理の事務負担を削減できます。
(2)年末調整の簡略化
〇「マイナポータル」や給与計算ソフトを活用すれば、煩雑な年末調整の手続きもスムーズに進みます。
(3)個人の確定申告は「書かない」時代に
〇e-Taxや「マイナポータル」の機能拡充に伴い、給与等の収入金額や医療費の支払額などのデータも自動的に取り込み、入力なしで確定申告を行うことができます。
税務手続のデジタル化は、従業員の対応を含め準備が必要になります。当事務所と一緒にデジタル化を進めましょう。
「値決めは経営」と言われるほど、経営において重要な位置を占める価格設定。資源価格や原材料価格の高騰を受け、製品・サービス等のコストは上昇傾向にあります。また、賃上げ機運の高まりもあり、人件費の増加も見込まれます。適正な利益を確保し、日頃、頑張ってくれている従業員に報いるためにも、適切な「値決め」がますます重要になっています。
次の3つのポイントを踏まえ、自社の値決めの方針についてあらためて考えてみましょう。
(1)コストと利益を踏まえて価格を見直す
(2)自社の「強み」を見つめ直す
(3)値上げ等の交渉ではその根拠となる具体的なデータを提示する
企業の賃上げを応援する税制として設けられた「賃上げ促進税制」。従業員に対する給与等の支給額(雇用者給与等支給額)を前年度よりも一定割合増加させた場合に、賃上げ額の一部を法人税から控除できる制度です。
令和6年度税制改正により、適用期限が3年延長され、最大控除率もアップ。加えて中小企業については、赤字であった、もしくは大きな黒字ではなかったために税額控除をしきれなかった場合に、最長5年間、未控除額を繰り越せるようになりました。
同税制の適用を受ける前に、次のことを確認しておきましょう。
(1)ベースとなる前年度の雇用者給与等支給額を把握する
(2)直近の経営状況を踏まえ、①どの程度の賃上げが可能か②その際、何%の税額控除を受けられるか――を確認する
(3)賃上げの原資となる利益(限界利益)を確保する方法を検討する
5月から6月にかけては、季節の変わり目とも相まって、メンタルヘルスの不調を訴える人が多くなるシーズンです。1人ひとりの従業員に本来の力を発揮してもらうには、企業におけるメンタル面での健康を守る取り組み(メンタルヘルスケア)が大切です。
メンタルヘルスケアとは、すべての働く人が健やかに、いきいきと働けるような気配りと援助をすることと、その活動が円滑に実践される仕組みづくりのことをいいます。
メンタルヘルスケアの第一歩は、従業員自身にメンタル面のセルフケアに取り組んでもらうことです。従業員がメンタルヘルスの変化に気づき、セルフケアに取り組むきっかけの1つとして「ストレスチェック」があります。積極的な活用を検討しましょう。
また、メンタルヘルスの異変を自覚した従業員をケアできるよう、①専門家を活用する②相談しやすい環境を整える――など、社内の体制づくりも大切になります。
令和6年度税制改正により、6月から納税者(合計所得金額1,805万円以下の給与所得者と個人事業主等)と、その配偶者を含む扶養親族1人につき4万円(所得税3万円・住民税1万円)の定額減税が行われます。
所得税については、6月1日以後最初の給与等の源泉徴収される所得税から減税額を控除。控除しきれない場合は、減税額に到達するまでそれ以後の給与等の支給時に順次控除する仕組みのため、給与計算の担当者は注意が必要です。
給与計算担当者は、従業員から提出された「扶養控除等申告書」「源泉徴収に係る申告書」を基に、減税額の計算対象となる配偶者や扶養親族を正しく把握する必要があります。これらの申告書から把握できない配偶者等については、年末調整で調整します。
令和2年から行われている中小企業の時間外労働(残業)の上限規制。令和6年4月1日から建設業・自動車運転の業務・医師に対する猶予が終了し、「残業」への社会の見方がより厳しくなると予想されます。これを機に自社の残業の状況を再確認し、適切な労務管理に努めましょう。
そもそも労働時間は、①所定労働時間②法定内残業時間③法定外残業時間――の3種類に分けられます。このうち③法定外残業時間は、原則として「月45時間、年360時間以内」に抑えなければなりません。残業を減らすための取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。
○残業の事前承認制の導入
○変形労働時間制の採用
○事業・製品・商品構成の見直し
○新たな技術の積極的な導入
相続によって取得した不動産(土地・建物)の登記(相続登記)がされないまま相続が繰り返され、登記簿上の所有者がわからない「所有者不明土地」が全国で増加しています。その発生予防の一助として、令和6年4月1日から、相続した不動産について不動産登記簿の名義を変更する「相続登記」が義務化されます。
(1)相続人は、不動産を相続(遺言を含む)で取得したことを知った日から3年以内に、法務局に登記の申請をしなければなりません。
(2)令和6年4月1日より前に相続した不動産についても、未登記であれば、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。
(3)「正当な理由」がないにもかかわらず、相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、相続登記の期限までに遺産分割をまとめることが困難なときは、令和6年4月1日から新たにスタートする「相続人申告登記」という手続きを活用すると良いでしょう。
3月は企業の決算が集中する月です。決算を迎える企業は、決算日までに次のような点を確認しておきましょう。
○請求を再確認する:売掛金の計上漏れがないか、納品書控・得意先元帳・売掛金台帳等の記録を確認する。
○滞留・不良債権への対応を検討する:滞留・不良債権化している売掛金等は、貸倒損失や貸倒引当金を計上できる条件を満たしているかどうかチェックする。
○不良在庫は決算日までに処分する:セール等による値引販売や廃棄処理、買取業者への依頼等によって処分することを検討する。
○固定資産を確認する:①実際に事業用として稼働しているか②少額減価償却資産の特例が適用できるか③その固定資産の修理は修繕費か――を確認する。
○仮払金等を精算する:残高がある場合、精算して適切な勘定科目に振り替える。
手元により多くのキャッシュ(現金・預金)を残すことを重視する経営を「キャッシュ・フロー経営」といいます。資金の入りを「多く・早く」、資金の出を「少なく・遅く」することがポイントです。自社の仕入から販売、支払い、回収までのサイクルを次の指標で確認することが重要です。
○棚卸資産回転期間(日)=棚卸資産÷純売上高×365
※原材料・商品を仕入れてから販売するまでの期間。
○売上債権回転期間(日)=売上債権÷純売上高×365
※製品・商品を販売してから代金を回収するまでの期間。
○買入債務(支払基準)回転期間(日)=買入債務÷仕入代金支払高×365
※原材料・商品を仕入れてから代金を支払うまでの期間。
○必要運転資金回転期間(日)=(棚卸資産回転期間+売上債権回転期間)-買入債務回転期間
※仕入代金を支払ってから販売した代金を回収するまでの期間。
「必要運転資金回転期間」は、資金調達が必要な期間です。この期間を短くすることで資金の心配が減り、安心の経営につながります。
新たな従業員の雇用や、有期雇用の従業員との契約更新の際に義務付けられている「労働条件の明示」。そのルールが、令和6年4月1日から変わります。令和6年4月1日以降、新たに書面で明示すべき事項は次の通りです。改正点の確認とともに、自社の労働条件およびその明示の方法を見直してみましょう。
(1)すべての従業員に対する明示事項:就業場所・業務の変更の範囲
(2)有期雇用の従業員に対する明示事項:
①有期労働契約の更新の上限
②無期転換申込機会
③無期転換後の労働条件
商売繁盛の「カナメ(要)」となるのが、「日々の記帳(毎日、会社で会計データ〈仕訳〉を入力すること)」と、年12回の「月次決算」です。
日々の記帳は、①自社を守るための証拠づくり②経営者自身への報告(自己報告)──という2つの側面があります。日々の記帳が習慣になっているか否かで、お金の使い方や行動にも大きな差が出てきます。日々の記帳を良い習慣としてしっかり根付かせましょう。
月次決算とは、「経営者自身が、毎月の業績を翌月早々に把握でき、かつ、活用できる状態」を指します。そのためには、発生主義で正しく月次決算を行い、前月の取引にかかった費用/得た収益を正確に把握することが何よりも重要になります。
これらの前提は、①正確な日々の記帳をサポートする法令に準拠した会計システムを活用すること②会計事務所のチェック・助言を毎月受けること(月次巡回監査)──です。
一緒に商売繁盛を目指しましょう。
会社の経営にとってキャッシュ(現金・預金)は、人間の体でいう血液に相当します。人が貧血になれば倒れてしまうように、会社のキャッシュが少なくなれば企業活動は停滞し、倒産という事態にもなりかねません。会社のキャッシュを増やすことは、経営を安定させ、将来への投資を自己資金で行えるなど経営の自由度が増すことにもつながります。
「キャッシュがきちんと生み出されているか」は、キャッシュ・フロー計算書で確認しましょう。「Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つに分類され、それぞれの活動でキャッシュがどれだけ増減し、最終的にどれだけ残ったのかが表示されます。
自社のキャッシュ・フロー計算書を見ながら、あらためて最近の経営状況を思い返し、今期、来期の資金計画に活かしてみましょう。
個人事業者の消費税や所得税の確定申告の時期になりました。免税事業者からインボイス発行事業者となった個人事業者は、今年から消費税の確定申告・納税も必要になります。その際、免税・課税事業者の期間を区分することが重要です。業種にかかわらず売上税額の一律2割を納税額とする特例措置(2割特例)を適用することも検討しましょう。
所得税の確定申告で注意しなければならないのは、家事費と家事関連費です。家事費は業務に関係のない生活(プライベート)のための支出で、必要経費として認められません。したがって、仕入代金・広告宣伝費・従業員給与など、業務上の必要経費と家事費とはしっかり区分しておく必要があります。
家事関連費は、必要経費と家事費が混在した支出です。例えば、店舗併用住宅の水道光熱費や家賃、火災保険料、業務と生活において利用する自動車の諸費用等が該当します。家事関連費については、使用時間や使用頻度などの合理的な方法によって按分し、業務上必要な部分を明確にすることで、その部分が必要経費として認められます。
2024年には、会社の経営に関わるさまざまな制度改正が予定されています。例えば、次のような制度改正があります。
①電子取引データの電子保存の本格義務化(1月1日~)
②暦年課税制度・相続時精算課税制度の見直し(1月1日~)
③建設業・自動車運転の業務・医師の残業規制開始(4月1日~)
④相続登記の義務化(4月1日~)
⑤フリーランス保護新法施行(秋ごろまでに施行予定)
⑥社会保険の適用拡大(10月1日~)
自社で対応が必要となるものを事前に把握し、準備を進めておきましょう。
「経常利益」は、限界利益から固定費を引いた残りで、経営の総合的な成果、いわば社長の「最終成績」ともいえる数字です。経常利益がマイナスであれば、慢性的な資金不足を引き起こしかねません。また、たとえ経常利益がプラスでも、自己資本の蓄積が少ない場合は、借入金を返済するための元本等となるため、キャッシュとして残るまでには至りません。法人税等の納税資金を準備する必要もあります。こうしたことから、安定した経営を継続するために、毎期、黒字化を目指していくことは非常に大事です。
黒字決算を実現するには、「PDCAサイクル」と呼ばれる業績管理の実践が必要になります。それは、期首に立てた計画(Plan)に沿って行動計画を実行(Do)し、計画と実績の差異を検証(Check)し、課題や変化への対策を考え実践(Action)すること――です。
PDCAサイクルの前提となるのが、正確な月次決算です。月次決算を行って変動損益計算書を確認していると、早期に課題を発見し、打ち手を検討することが可能になります。
インボイス制度の開始後、PDFをはじめとした電子データによる「電子インボイス」を受け取っている会社も多いことでしょう。電子インボイスの一種で、世界各国はもちろん、日本でも現在導入が進んでいる「ペポルインボイス」。その主な特徴は次のとおりです。
〇送信/受信側が同じシステムを利用していなくてもデータのやりとりが可能
〇発行者名・品名・取引金額等のインボイスの記載事項について、受信したシステムでその内容を正確に読み込めるため、請求書の確認・仕訳入力が楽になる
ペポルインボイスの送受信には、「ペポルサービスプロバイダー」に認定されている企業と契約を結ぶ必要があります。その点、TKCは、「ペポルサービスプロバイダー」に国内で初となるタイミングで認定されています。また、TKCのFXシリーズ・SXシリーズを利用している場合には、標準機能でペポルインボイスの送受信が可能です(送信機能は今後順次搭載予定)。
ペポルインボイスの利用を検討されている場合は、当事務所にご相談ください。
自社が稼いだ付加価値(限界利益)に対して、人件費(賃金、給与、賞与、役員報酬、法定福利費等)が占める割合を「労働分配率」といいます。人手不足等で賃上げの機運が高まる中、適切な労働分配率の管理はますます重要になっています。
人件費の原則は、「労働分配率をおさえながら1人当たりの人件費を高く」することです。ただし人件費を増やしすぎれば赤字に転落するおそれもあるため、自社に合った適切な労働分配率・給与水準を保つことは大切です。従業員にとって納得感のある給与水準とするには、①年収の時給換算で生産性アップ②柔軟な勤務・給与体系の設定③利益を公平に分配するルールづくり――といった具体策があります。
適切な労働分配率の管理とともに、原資となる限界利益を増やす取り組みも重要です。
年末調整事務は、従業員が提出した基礎控除申告書、扶養控除等申告書などの「年末調整申告書」に基づいて行うため、従業員に記載上の注意点を事前によく説明しましょう。
本年中の従業員の親族の異動(結婚、出産、家族の就職、離婚、死別など)について確認し、訂正等があれば、再度、扶養控除等申告書の提出を受けます。
配偶者控除等や扶養控除等を受ける従業員には、配偶者や子どもの収入(所得の見積額)の誤りや記載もれがないよう、よく確認するように注意喚起しましょう。
また、年末調整事務の電子化も検討してみましょう。電子化によって、給与事務担当者と従業員双方の事務負担を減らし、会社全体の生産性を向上させることができます。
訪日観光客の対応や人手不足の解消が期待される外国人材の活用。外国人(日本国籍を持たない人)には、入国の目的に応じて「在留資格」が与えられており、その資格の範囲内でのみ、就労することが可能となっています。
また、中長期で日本に在留する外国人には、多くの場合「在留カード」が発行されています。外国人材の採用時には、同カード表面の「在留資格」欄や「就労制限の有無」欄、「在留期間」欄を必ず確認しましょう。
なお、外国人材に支払った給与等は国内源泉所得に該当し、所得税と住民税の課税対象になります。住民税については、前年に給与所得がある場合、日本人従業員と同様に特別徴収(給与からの天引き)を行うことになります。未納があると、在留期間の更新申請等が許可されない場合があります。国籍を問わず、適正な納税が大事です。
最低賃金が全国平均1,000円台に引き上げられる中、「年収の壁」は、従業員はもちろん、経営者にとっても大きな関心事の1つです。
所得税の課税対象となり、配偶者控除・扶養控除の対象外になる「103万円の壁」、社会保険の加入対象となる「106万円の壁」、国民年金・国民健康保険の加入対象となる「130万円の壁」――。これら3つの「年収の壁」についてよく知り、個々人に合った働き方を選べるようになれば、従業員にとっては世帯年収のアップが、経営者にとっては人手不足解消が期待できます。
「年収の壁」にとらわれすぎない働き方を、従業員と一緒に検討してみましょう。
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、原則として一定事項を記載した帳簿と仕入先から受け取ったインボイスの保存が必要です。一方で、実務では、次のようなケースもありますので対応を確認しましょう。
○インボイスを発行できない免税事業者等からの課税仕入れであっても、令和8年9月30日までは、消費税額の80%相当額について仕入税額控除が受けられます。
○従業員の通勤手当・旅費交通費等において、賃金規程等に基づいて従業員に支給する通勤手当、出張旅費規程等に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当は、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
○旅費交通費や備品購入等における従業員の立替払いの精算については、原則として「会社宛てのインボイス」が必要です。「従業員宛てのインボイス」の場合は、従業員が作成した「立替金精算書」等も合わせて保存することが求められます。
贈与税の課税方法の1つである「暦年課税制度」は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた価格に課税されるものです。直系尊属(父母や祖父等)から18歳以上の子や孫等への贈与は、一般の贈与よりも税率が軽減されています。
同制度では、相続等によって財産を取得した人が被相続人の死亡の日からさかのぼって3年の間に取得した財産について、相続税の課税価格に加算されます(相続前贈与の加算)。
令和6年1月1日以後の贈与から、この加算期間が3年から7年に延長されます。加算期間の延長によって相続時に課税される相続財産が増加するため、相続時の税負担が大きくなることが見込まれます。同制度の活用は早めに検討しましょう。
売上代金の決済時に、取引先(買手)が振込手数料相当額を差し引いた金額を振り込むことがあります。この場合の振込手数料相当額について、売手は「雑費」か「売上値引き」として処理することが一般的です。
しかし、インボイス制度開始後に「雑費」として処理すると、原則として金融機関等からインボイスを受け取る必要があり、事務負担が増えることになります。
一方、「売上値引き」として処理すると、税込金額1万円未満の売上に係る対価の返還等については返還インボイスの発行が免除されるため、事務負担が軽減されます。
また、会計上は「雑費」として処理し、消費税法上は「売上値引き」として処理することも認められます。この場合、振込手数料相当額について売上のマイナス処理を行わずに返還インボイスの発行が免除されます。
令和5年12月31日、電子帳簿保存法による電子取引データの保存についての「宥恕措置」が終了します。現在は、電子メール等で送受信した請求書や見積書等の電子取引データ(PDF等)をプリントアウトして保存し、税務調査等で提示・提出できるようにしていれば問題ありませんが、令和6年1月1日からは紙による保存は認められず、電子データによる保存が義務付けられることとなります。原則として全ての法人・個人事業者が適用対象です。
この制度改正を大きな機会として、紙で受け取った書類も全てスキャンして電子で保存する体制へと大きく切り替え、「経営データの電子化」に社内全体で取り組みましょう。
TKCの自計化システム「FXシリーズ」の「証憑保存機能」を利用すれば、電子帳簿保存法の保存要件を満たして保存することができます。また、スマートフォンで紙の領収書等の証憑を撮影して、電子データとして保存することも簡単です。
売上高の増減にかかわらず、会社の維持に必要となる「固定費」をどのように管理するかは、経営者の腕の見せどころです。「人件費」や「地代家賃」、「水道光熱費」など、まずは自社の費用の中で固定費になるものを洗い出し、「何が・誰が管理可能なのか」「金額に見合った効果を得られているか」「稼働率を上げられないか」という3つの視点から、固定費の変化を確認しましょう。
固定費には、自社の努力で短期的に管理可能(削減が可能)なものと、短期的には管理不能(削減が困難)なものがあります。また、社長だからこそ管理できるものと、部下社員でも管理可能なものとがあることにも留意しましょう。
固定費は限界利益を稼ぐための支出ともいえることから、改善について考える際は、単純なコストカットではなく「かけた費用に見合う効果が得られているか」という視点も重要です。
生産性向上という観点から、自社の機械や設備等の稼働率を高めて有効活用する――という視点も、固定費の管理には有効になります。
令和5年10月1日のインボイス制度開始後、原則として、売手は買手からの求めに応じて、インボイスを発行しなければなりません。ただし、売手において課税資産の譲渡等(資産の引渡し、貸付け、役務の提供)が9月30日以前に行われた取引については、請求書等の発行日が10月1日以後であっても、現行の請求書(区分記載請求書)で問題はありません。
請求の締め日が20日など、月の末日でないケースでは、「9月分」と「10月分」に請求書を分けて発行するなどの対応が必要になります。
制度開始前からインボイスを発行しても問題はないので、準備ができた時点でインボイスに切り替えておくと良いでしょう。
経営において売上高と並んで重要な指標となるのが「限界利益」です。資源高や円安の影響で原材料や燃料等の価格が上がっている状況では、利益の確保が難しくなりがちです。「昨年より利益が出なくなった」と感じている場合、今一度限界利益がしっかり確保できているか確認する必要があります。
限界利益をアップさせるには、「販売価格を上げる」「変動費を下げる」「商品の組み合わせを考える」という3つの打ち手が挙げられます。
限界利益が増加すると、設備投資や従業員の給料、販売促進や新商品開発などに、より積極的に予算を充てることができるようになります。また、黒字経営のためには、必要となる固定費に目標とする経常利益を加えて、限界利益の目標を設定することが重要です。
自社の状況を踏まえて、打ち手を検討してみましょう。
仕入、出荷、備品購入などでお世話になる、企業の活動を支える大切なパートナーであるトラックドライバー。そのトラックドライバーに、2024年4月1日から時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されます。それにより輸送能力の不足が懸念されているのが、「物流の2024年問題」です。
物流業界では現在、輸送能力の維持・確保のために賃金水準の向上や労働時間の短縮など、トラックドライバーの労働環境改善に向けた取り組みが検討されています。その結果、輸送にかかる日数の増加や運賃の上昇など、荷主であるさまざまな事業者も影響を受けることとなります。決して、物流業界だけの問題ではありません。
荷主側では、例えば、運賃の改定分を価格転嫁できるよう取引先と交渉する、自社で届けられるものは直接届ける、といった対応策を検討する必要があるでしょう。また、①短納期または急な配達・集荷依頼など負担のかかる依頼を見直す②自社の職場を改善して荷揃えや荷おろしを効率化する――など、運送会社に対する協力体制を整えておくことも重要です。
社長が最初に意識すべき「売上高」を、変動損益計算書で毎月確認いただきましょう。そのうえで、売上高が「増えた理由」「減った理由」を社長と一緒に探り、社長のここ1か月の経営感覚と、実際の数字の変化をすり合わせることが重要です。その際、特に取引先別売上高を確認してみてください。主要な取引先について、当月と前年同月の売上高を比較し、「なぜ、この取引先からの売上高が上がっている/下がっているのか」、その背景や要因を考えてみると、売上高を伸ばす大きなヒントになります。
基本的に、売上高は「販売単価×販売数量」で決まるため、売上高を伸ばすには、販売単価を上げるか、販売数量を増やすか、そのいずれかが必要です。販売単価と販売数量、どちらを重視するのかを決めるのも大事な経営判断の1つです。社長と一緒に売上高のアップを目指しましょう。
受け取るインボイスの対応状況を確認しましょう
取引先から受け取る仕入インボイスについて、取引先の協力を得て、登録番号やインボイスの様式を確認しておきましょう。自社の経理処理に影響がある場合は、取引先と検討することも必要です。
インボイスを発行できない免税事業者等からの仕入については、仕入税額控除ができなくなる分、消費税の納税額が増えることになります。ただし、経過措置として、令和11年9月30日までは一定の割合を仕入税額控除することが可能です。
免税事業者等である取引先に対して、適格請求書発行事業者への登録を要請する際、要請に応じないことを理由に、価格引き下げや取引中止を一方的に通告する、著しく低い価格を設定する――などの行為は、独占禁止法や下請法等に抵触するおそれがあります。
「金融機関と接するのは苦手」という方もおられるのではないでしょうか。金融機関と話をするときの重要なコミュニケーションツールが、日々きちんとつけられた帳簿(仕訳)を基に作成された「決算書」です。自社の健全な経営努力と正しい経理処理の賜物である決算書こそ、金融機関と話をするための共通言語となります。
金融機関とのコミュニケーションにおいては、頻度も重要です。自社の強みや長所を知ってもらうためにも、積極的かつ定期的に自社の情報を提供・報告しましょう。自社を客観的な視点で見てくれる金融機関との対話を通じて、事業上のアイデアや気づきが得られることもあるからです。業績の良し悪しにかかわらず、経営に関するデータを企業自ら開示することは、融資の必要性等をいち早く金融機関に伝えることにもつながります。そのため、決算書に加えて、まずは四半期から試算表を提供することを目指しましょう。
見込んでいた儲けの額と、決算書や損益計算書上に表示される「売上総利益額」の数字とに差がある――と感じたことはありませんか?
このような場合、変動損益計算書を利用することで、頭の中でイメージしていた利益構造と実際の数字とを一致させることができます。変動損益計算書は、すべての費用を売上高に伴って増減するか否かで「変動費」と「固定費」とに分けて表示した損益計算書で、売上の増減で限界利益がどれくらい変わるかが把握しやすくなる、などの特長があります。また、変動損益計算書は社長の意思決定の結果が表れる「社長の成績表」ともいわれ、①自社の製品やサービスが顧客や市場に評価された結果②儲けの範囲内で経費をどのように使ったか――が表示されます。
7月号から開始の全6回連載「黒字経営への道しるべ」では、「いま、自社に何が起きているのか?」を読み取り、次の打ち手を考えるために欠かせない変動損益計算書のポイントについて解説していきます。
インボイス制度への対応はお済みでしょうか。制度開始を目前に控えたいま、自社がインボイスとして発行する請求書等に記載事項のモレがないかあらためて確認しましょう。
インボイス制度では、現在、使用している請求書等(区分記載請求書等)に、①登録番号(「T」+13桁の数字)②適用税率③税率ごとに区分した消費税額等――の記載が必要です。記載事項にモレがないかを確認しましょう。いわゆる「レシート類」の簡易インボイスには、上記①および②③のいずれかの記載が必要になります。
インボイスに記載する氏名・名称等は、屋号や省略した名称でも構いません。ただし、電話番号を記載するなど、インボイスを発行する事業者が特定できることが必要です。
なお、インボイスに記載する「税率ごとに区分した消費税額等」について生じる1円未満の端数処理の方法(切上げ、切捨て、四捨五入)は、事業者の任意で決めて構いません。ただし、端数処理は1つのインボイスにつき、税率ごとに1回のみとされています。
一定の要件を満たすことで、事業承継の際に贈与税・相続税の納税を猶予する「特例事業承継税制」。同制度を利用するには、令和6年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出して確認を受け、令和9年12月31日までに自社株式の贈与や相続等を行う必要があります。
令和6年3月31日までに特例承継計画を都道府県へ提出していない場合には、その後期限内に自社株式の贈与や相続等を行っても、特例事業承継税制を利用することはできません。そのため同税制を利用する可能性があれば、まずは特例承継計画を作成し、早めに提出しましょう。
特例承継計画の作成・変更には、税理士等の認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けることが必要です。
会社の資産と経営者個人の資産の区分が曖昧になりがちな中小企業では、外部関係者からの信頼を高めるための第一歩として、会社と経営者個人の資産を明確に区分・分離することが重要です。そのための具体策としては、①経営者個人が所有する資産が会社の業務に使われている場合、賃貸契約書を作成して会社から経営者へ適切な賃料等を支払う②事業に使っている経営者個人の資産はできる限り会社所有とする――などが挙げられます。
また、「経営の基本」である現金管理も、会社と経営者個人の資産を区分するための重要な対応策となります。次のような対応が自社で徹底できているか見直してみましょう。
〇小型の金庫やコインカウンター等を用いて、会社と個人の現金が混ざるのを防ぐ
〇現金出納帳と実際の現金の残高合わせを毎日行う
〇クレジットカードは会社用と個人のカードを分けて使う
〇立替金および経営者への仮払金や貸付金は、早めに精算する
経営者にとって、経営意思決定の大きな「拠りどころ」となるのが「変動損益計算書」です。変動損益計算書とは、売上高の増減で変化する費用を変動費に、売上高にかかわらず発生する費用を固定費に分類して表示した損益計算書のことです。通常の損益計算書に比べ、変動損益計算書は売上が変わった時のシミュレーションが簡単で、例えば「売上増に伴って新しく従業員を採用した場合、利益がいくら変わるのか?」といった経営上の判断をする時に役立ちます。
そして、変動損益計算書の大前提となるのが、正確な月次決算データです。そのためには、①適時・正確な記帳②証憑の整理や仕訳入力等を自社で行う「自計化」③請求書や経費精算の徹底管理――の3つのポイントを押さえましょう。月次決算を徹底し、変動損益計算書で自社の経営状態をタイムリーかつ正確に把握することで、問題点等に迅速に対応できるようになります。
令和6年1月1日から、贈与税と相続税のルールが大きく変わります。贈与税には2つの制度があり、1つは「暦年課税制度」、もう1つは「相続時精算課税制度」です。令和6年1月1日以降の各制度の改正内容は、次の通りです。
①暦年課税制度
〇相続開始前7年以内の贈与額を相続財産に加算して相続税を算出(納付した贈与税額は差し引く。加算期間は順次延長)。
○延長した4年間(相続開始4~7年前)に受けた贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算しない。
②相続時精算課税制度
○現行の暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除が創設。
〇贈与した土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合、相続時に評価額の再計算が可能。
損益がトントン、経常利益がゼロになる点(限界利益=固定費)を「損益分岐点」といい、そのときの売上高を「損益分岐点売上高」(固定費÷限界利益率)といいます。現状の損益分岐点を捉えておくことで、利益アップにつながるさまざまなシミュレーションが可能です。
例えば、賃金アップなど固定費が増加しても、いくら売上(販売単価×販売数量)があれば黒字にできるか、あるいは、目標利益を達成するために必要な売上高はいくらか、などを求めることができます。目標とすべき売上高がわかれば、どのように販売を伸ばすかについて、集中した検討ができるようになります。
不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や、所有者の所在が不明で連絡がつかない土地などの「所有者不明土地」の解消に向けた制度改正が本年4月より順次スタートしています。主な制度として、以下が挙げられます。
○令和5年4月1日~:相続開始から10年経過後に行う遺産分割は、原則として法定相続分か、指定相続分によって画一的に行うことになります。この措置は施行日前に開始した相続にも適用されますが、5年の猶予期間があります。
○令和5年4月27日~:相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地を手放して国庫に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」が始まりました。ただし、土地の要件として、建物がある・土壌汚染がある・危険な崖にある・他人に使用されているなどの土地は除かれるうえ、負担金等の納付が必要になります。
○令和6年4月1日~:所有者不明土地発生予防の観点から、相続登記の申請が義務化されます。
インボイス制度では、適格請求書発行事業者が値引きや返品等を行ったときには、原則として返還インボイス(適格返還請求書)を発行する必要があります。そのため、代金決済の際に差し引かれた振込手数料相当額を売り手が「売上値引き」として処理する場合に事務負担が増えるとの懸念がありました。
令和5年度税制改正において、税込金額1万円未満の値引き・返品・割戻しなどの売上に係る対価の返還等については、返還インボイスの発行が免除されることになりました。一方、振込手数料相当額を支払手数料として処理する場合は、返還インボイスの発行免除の対象外の取引となるため、金融機関や取引先が発行する支払手数料に係るインボイスの保存が必要になります。ただし、課税売上高1億円以下など一定規模以下の事業者の税込金額1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例の対象になる場合は、インボイスの保存がなくても仕入税額控除を適用することが可能です。
経理業務の電子化・ペーパーレス化に取り組んでみませんか。昨今、取引先からの請求書等を電子データで受け取ることが増えていますが、今後、その電子データはそのまま電子で保存する必要があります。一方、まだまだ紙でのやり取りも多く残っていると思います。その場合は、取引先と相談して電子データでの受け取りに切り替えることや、スキャナ保存によって電子データ化することなどを検討しましょう。
経理業務の電子化・ペーパーレス化は経理業務の省力化・効率化を実現するだけでなく、経営者がよりスピーディーに業績を把握することにつながります。
現行の消費税法では、3万円未満の取引については帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例がありますが、インボイス制度開始後は、公共交通機関の運賃や自動販売機等での商品の販売など一部の取引を除いて、原則としてインボイスの保存が必要になるため注意が必要です。例えば、クレジットカードを利用した際には、店舗等が発行する「ご利用明細」や「ご利用控」を、コインパーキングを利用した際には、発行されるレシート(簡易インボイスに該当するもの)を必ず受け取って保存することを徹底しましょう。
なお、令和5年度税制改正では、一定規模以下の事業者について税込金額1万円未満の取引であれば帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例措置が設けられました(期間は令和11年9月30日まで)。
国(経済産業省・金融庁・財務省)は、経営者の個人保証に依存しない融資慣行の実現の加速化を目的に「経営者保証改革プログラム」を策定しました。これに基づき金融庁は、金融機関に「経営者保証に関するガイドラインを浸透・定着させるための取組方針」の公表(令和5年4月以降)を求め、金融機関はこの取組方針に基づいて、融資契約を行う際に「経営者保証ガイドライン」の要件の充足状況等を説明し、経営者の個人保証の有無を伝えることになります。
経営者は「経営者保証ガイドライン」が求める①法人と経営者との関係の明確な区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保――に取り組むことで、経営者の個人保証のない融資を受けられる可能性が高まるほか、財務経営力の強化につながります。
インボイス(適格請求書)を発行するには、適格請求書発行事業者の登録が必要です。制度が開始される令和5年10月1日から登録を受けるためには、原則として3月31日までの登録申請を行わなければなりません。しかし、令和5年度税制改正において、4月1日以後の申請であっても、10月1日を登録開始日として登録されることになるなど、柔軟に対応する方針が示されました。
ただし、「登録通知書」が届くまでには、e-Tax提出で約3週間、書面提出で約1か月半を要するとされています。登録申請の意思がある方は早めに申請し、対応準備を進めましょう。
なお、登録を受けると、登録番号や公表情報等が記載された「登録通知書」が送付されるとともに、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」にも掲載されます。
売上から変動費を引くと限界利益になり、限界利益が固定費より多いと黒字になります。変動費と固定費を分けることで、利益を出すためには売上がどれぐらい必要なのかを把握できます。しかし、通常の損益計算書は、支出部分を「売上原価」と「販売費及び一般管理費」に分けるため、変動費と固定費を迅速に確認することができません。ここで役立つのが支出部分を変動費と固定費に分類し直した変動損益計算書です。
この変動損益計算書を経営により活用するためには、その費用が固定費なのか変動費なのかを実情に合わせて見極めることです。業種・業態によっては売上にともなって変動する要素が固定費に含まれていることもあります。この部分を変動費として管理することで、より正しい限界利益が把握できることになります。
固定費と変動費が自社の実情に合っているかどうかを確認してみましょう。
令和5年4月1日より、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。なお、月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日における労働時間は含まれません(法定休日での労働は割増賃金率が35%になります)。
この機会に自社の残業のあり方を見直してみましょう。非効率な残業を減らすために残業申請書を整備することや、変形労働時間制を採用するなどの方法があります。
また、明らかに所定労働時間内に終了しない業務量を与えている場合や、残業の慢性化を使用者が黙認している場合は、この機会に見直しましょう。
原材料費や仕入価格の上昇が利益に影響を及ぼしています。変動損益計算書を活用して黒字化にする方策を考えてみましょう。
自社商品の限界利益率を商品ごとに調べてみましょう。売上単価の高い「主力商品」が必ずしも限界利益率の高い儲かる商品とは限りません。売上単価よりも、限界利益率の高い商品の販売を伸ばすことで、利益の拡大につながります。
売上高を「単価×数量」の式に分解すれば、いくら売ればよいのか(金額ベース)、いくつ売ればよいのか(数量ベース)で検討することができます。変動損益計算書を商品グループ別、部門別などに分解することで、自社の利益構造もわかるようになります。
インボイス制度では、一定の事項が記載された帳簿と仕入先から受け取ったインボイスの保存がなければ、原則として仕入税額控除を適用することができません。
自社が受け取るインボイスへの対応として、仕入先が適格請求書発行事業者であるかどうかの有無、インボイスの様式や受取方法(電子か紙)についての確認などが必要です。
また、公共交通機関の運賃や自動販売機での購入のように、売手からインボイスを受け取ることが困難な取引については、一定の条件のもと帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合があります。
所得税の確定申告に向けて、申告が必要な収入や支出を確認しましょう。
①補助金や協力金は、一部を除いて収入として計上します。
②台風や地震などの災害により自宅や家財が受けた損害は、雑損控除が利用できる場合があります。
③店舗兼自宅の家賃や水道光熱費などの家事関連費は、業務上必要な部分を明らかにして、按分して経費に計上します。
④従業員や役員などサラリーマンなどの給与所得者でも確定申告が必要な場合があります。
○給与収入が2,000万円を超える
○副業収入、不動産売却収入、保険の一時金や満期返戻金などの収入
〇同族会社の役員が受け取る会社への貸付金の利子・貸付不動産の賃貸料
京セラ創業者・稲盛和夫氏は、企業は製品や技術力、生産技術、資金力などの「見える資源」だけでなく、社員の能力ややる気、知恵、逆境を乗り越える力などの「見えない資源」もあって初めて発展、成長できるといいます。
稲盛氏は人生で成功するための方程式として「人生・仕事の結果=考え×熱意×能力」を提唱しています。多少能力は劣っていたとしても、強い情熱があれば素晴らしい成果を上げられることを、過去に実感しています。さらに重要なのは考え方で、考え方がマイナスだと結果はマイナスになります。創業間もない京セラが大企業に伍して戦うことができ、急成長できたのは熱意や考え方がプラスだったからですが、そのベースとなったのが、稲盛氏自身の強い情熱と経営理念でした。変化の激しい時代だからこそ経営理念という見えない資源の価値を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
令和5年は、消費税インボイス制度と電子取引データの電子保存への対応の年です。
(1)10月1日からのインボイス制度への対応
①10月1日からインボイスを発行するためには、3月31日までに適格請求書発行事業者への登録申請を済ませましょう。
②自社が発行するインボイスを確定し、取引先に通知します。利用しているシステムのインボイス対応の確認や写しの保存方法を決めましょう。
③取引先の適格請求書発行事業者への登録の意向や登録状況を確認します。取引先が発行するインボイスを事前に確認します。インボイス受取後の仕訳計上のタイミングや保存方法についての検討が必要です。
(2)電子取引データの電子保存への対応
電子取引データの保存については、現在、宥恕措置として令和5年12月31日まで紙による保存が認められていますが、令和6年1月1日から電子取引データは電子データの保存が必要になります。自社の電子取引を洗い出し、その保存方法を決めましょう。保存には、専用のソフトウェアを利用して事務負担の軽減を図りましょう。
※対応が遅れている中小企業などに配慮して、宥恕措置終了後も、引き続き紙による保存を認める措置が検討されています。今後の法改正にご注意ください。
補助金や助成金の中には、令和5年の1~2月頃に申請期限を迎えるものがあります。活用を検討中の補助金等があれば、期限を再確認して対応しましょう。
①事業再構築補助金:第8回公募申請期限/令和5年1月13日
②IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠):申請期限/令和5年1月19日(予定)
③IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠):申請期限/令和5年2月16日(予定)
④小規模事業者持続化補助金:第11回公募申請期限/令和5年2月下旬(予定)
⑤業務改善助成金:申請期限/令和5年1月31日
※上記の情報は令和4年11月10日現在のものです。補助金等は延長、再募集されることがありますので、最新情報に注意しましょう。
ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の利子免除期間(3年)を経過すると利子を返済していかなければなりません。また、元本返済の据置を受けている場合は、その期限に応じて返済が始まることになります。
現在、資金繰りが安定していても、借入返済の原資を確保していかなければなりません。借入返済の原資は「利益」です。その確保には、①付加価値(限界利益)を引き上げる、②固定費を極力抑える、この2つの組み合わせによって黒字決算を実現させることが必要です。借入返済について、漠然と考えるのではなく、具体的な数字に落とし込み、返済に必要な目標利益を計算し、それを目標として取り組みましょう。
年末調整業務をスムーズに進めるには、事前の準備が大切です。年末調整の主な申告書として、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、所得金額調整控除申告書、扶養控除等申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書があります。
基礎控除申告書は、年末調整の対象者が必ず記入します。また、給与収入850万円超で、納税者本人や同一生計配偶者、扶養親族が特別障害者である、扶養親族が23歳未満であるなどの条件に該当する場合は、所得金額調整控除申告書への記入が必要です。
扶養控除等申告書は、扶養親族の異動がないかを確認し、収入がある場合は所得の見積額を記入するほか、障害者、ひとり親、寡婦等の該当も記入します。
年末調整は電子化することで、申告書の記入や計算が自動化され、手間やミスの削減につながる、控除額の検算や控除証明書との突き合わせなどの経理担当者の確認作業が不要になる、など事務負担の軽減を図ることができます。
インボイス制度では、書類の名称(請求書、納品書、領収書等)に関係なく、登録番号や適用税率、消費税額等などの一定の事項が記載されたものがインボイスになります。
事業者間取引を行う事業者の場合、通常は、請求書がインボイスになるでしょう。また、取引の都度、取引先に納品書を発行し、請求書は1か月分をまとめて発行するような場合には、納品書に一定の事項を記載することでインボイスにすることも可能です。どちらをインボイスにするかによって、消費税額の計上時期が異なります。
インボイスは、レシートや手書きの領収書でも構いません。小売業など不特定多数の者と取引する事業者は、インボイスに代えて、記載事項を簡易にした簡易インボイスを発行することも可能です。
インボイス制度が始まると、買手は売手から受け取ったインボイスと一定の事項を記載した帳簿書類の保存がないと、原則として仕入税額控除ができなくなります。
インボイスは、売手が買手(得意先)に、適用税率や消費税額等を正しく伝えるための手段となるもので、きちんと対応しないと得意先に迷惑をかけることになります。
インボイスを発行するには、適格請求書発行事業者の登録を受けなければなりません。買手が、仕入税額控除を必要としない消費者や免税事業者のみの場合は、インボイスを発行する必要がないため、あえて適格請求書発行事業者の登録をしないという選択肢が考えられます。
例えば、コロナ禍で売上高がゼロになるような店舗もあり、補助金等を申請してもなかなか給付されず、困った方もおられたでしょう。そんなとき自己資本が潤沢であれば、社員の給与や店舗の家賃を払い続けることができます。このようなことから、今、自己資本に関心が高まっています。自己資本は、経済情勢が悪化したときに企業を守る防波堤となるのものといえます。
自己資本比率を高めるには、付加価値(限界利益)を高めることが前提となります。大事なことは、絶え間なく商品の品質向上やサービス提供の工夫を行うとともに、月次決算の精度を高めて、業績管理をより確実なものとし、コスト削減に努めて利益を出し、適正に税金を納めて内部留保をすることを地道に進める必要があります。
(注)本稿では「付加価値」を「限界利益」の意味で解説しています。
仮に夫婦共働きで妻がパートで働いているようなとき、夫の扶養範囲に収まるかどうかの収入の基準として、103万円・106万円・130万円などの年収の壁があります。
妻の収入が給与のみで年収103万円以下のとき、妻に所得税は課税されず、夫も自身の収入から配偶者控除を受けることができます。妻の収入が103万円超201万円以下であっても夫の合計所得金額が1,000万円以下であれば、配偶者特別控除を受けることができます。
給与以外の収入として、株や為替、暗号資産等の取引による利益、物品等の転売益、生命保険の一時金、損害保険の払戻金等は、雑所得や一時所得として所得税の課税対象となる場合があります。これらを正しく把握しておかなければ、意図せずに「壁」を超えることなどが起きてしまいます。
106万円・130万円の壁は社会保険への加入の必要性にかかわるものです。保険や年金は、将来のお金の問題にもかかわります。働き方についても十分に検討しましょう。
材料費をはじめさまざまなコストが高騰する中にあっても、付加価値を高めて、給与を増やし、社員に夢や希望を与える企業を目指しましょう。付加価値とは、会社が創造した価値といえるもので、簡単にいえば「売上高」から「変動費」を引いた「限界利益(粗利)」のことです。
変動損益計算書を活用し、付加価値の増加を目指し、その結果として付加価値の増加の範囲内で人件費を増やせば、労働分配率の上昇を抑えられます。
企業は、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)等の返済の本格化や、原材料・仕入価格(変動費)、燃料費・光熱費(固定費)などのコスト上昇という厳しい状況の中にあり、付加価値を増やす対策が必要となっています。
利益確保のための方策を検討して、アクションプランに落とし込み、資金計画を作成しましょう。このような収益力改善の取り組みに対して、国も「ポストコロナ持続的発展計画事業」(ポスコロ事業)などで支援しています。
ポスコロ事業は、経営改善に取り組む企業が、税理士などの認定支援機関の支援を受けて、資金計画、損益計画、アクションプラン等による早期経営改善計画を策定する場合に、費用の一部を国が補助する制度です。4月に制度が改正され、過去にこの制度を利用した企業でも、一定の場合は2回目の利用が可能になりました。
令和4年10月から従業員101人以上の企業を対象にパートタイマー等への社会保険の適用が拡大されます(令和6年10月からは従業員51人以上まで引き下げ)。これは、社会保障費の支出の増加に伴い、1人でも多くの人に加入してもらうことが立法趣旨です。さらに、コロナ禍で雇用調整助成金の支出が激増し、雇用保険料の年2回(4月・10月)という異例の引き上げが行われます。
これら法定福利費の上昇が見込まれる今、機械化、IT化、DXの推進によって従業員の労働生産性を高めて実質的な負担を軽減することや、業績を伸ばして、限界利益(粗利)を増加させるなどの対応が必要になります。
登記簿上の所有者がわからない「所有者不明土地」の解消のため、相続登記や住所等変更登記が罰則付きで義務化されるなど民法等が改正されました。また、土地利用の円滑化の観点から、遺産分割の長期未了状態を解消するための新たなルールも導入されます。
登記の義務化については、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません(令和6年4月1日施行)。また、登記簿上の所有者は、住所や氏名を変更したときから2年以内に変更登記が必要です(令和8年4月27日までの政令で定める日から施行)。この改正は、施行日前に発生した相続も対象となるため、注意が必要です。
また、遺産分割の新たなルールとして、相続開始から10年経過後に行う遺産分割については、原則として、法定相続分または指定相続分によって画一的に行うことになりました(令和5年4月1日施行)。
エネルギー・原材料価格の高騰、急速な円安などから原価の上昇を招いていますが、単に原価上昇分を反映させるだけの値上げは難しいと考えている人も多いのではありませんか。「価値」を高めて「価格」を上げるなど、「上手な値上げ」を考えてみましょう。
①値上げしやすい商品や取引先から値上げする。
②商品の機能・品質を基本形のみに絞った「基本形」の部分を値下げして、無償提供していた付属品やサービスなどをオプションとして有料化する。
③価格帯を増やす(例えば、2つの価格帯のある商材について、中間にもう1つ価格帯を設けるなど)。
④直販を増やして、粗利益の増加を図り実質的な値上げ効果を得る。
⑤独自化や差別化によって、高い価格で販売できるブランドをつくる。
金融機関や取引先に対して、自社の概要を伝える機会が増えています。そのようなときは「ビジネスモデル俯瞰図」を作成して、自社の商流や事業内容をわかりやすく伝えましょう。
「ビジネスモデル俯瞰図」は、自社の業務の見直しや、課題の解決にも役立てることができます。売上高や構成比、限界利益などの数値を書き入れることで全体の流れがより具体的に見えてきます。
近年の金融機関においては、財務情報のみに依存せず、事業内容や成長性を適切に評価(事業性評価)して融資や経営助言を行うことを推進しており、その際にも「ビジネスモデル俯瞰図」は役立ちます。また、早期経営改善計画策定支援事業(ポスコロ事業)においても提出が求められます。
金融機関に融資申込みや業績の報告を行うときには、月次試算表などの根拠資料を一緒に提供しましょう。それらの資料により、金融機関は業況変化や業績見通しを確認できるため、融資手続きなどがスムーズになるでしょう。
コロナ禍などさまざまな理由で、企業と金融機関との面談の機会が減る中で、金融機関との信頼関係を維持していくには、これまで以上に、正確でタイムリーな情報提供が重要になっています。
また、「TKCモニタリング情報サービス」を利用すれば、決算書や月次試算表データを金融機関に自動的に開示することができます。
電子取引データを電子で保存するには、改ざん防止のための措置(真実性)や可視性・検索性、保存期間などの法令の要件を満たさなければなりません。保存方法には、専用の保存システムを「利用する」「利用しない」の2つの方法がありますが、法令の要件を満たした上で、経理業務の負担軽減とデジタル化を図るには、専用の保存システムを利用するほうがメリットは大きいといえるでしょう。
電子取引データの保存は、法令対応というだけでなく、これからのデジタル化社会の進展を考えると、経理業務を大きく変える可能性があります。取引先がペーパレス化・デジタル化に積極的であれば、自社もその対応が求められるでしょう。
今後のデジタル化を見据えた対応を進めましょう。
役員と会社の関係は、同族会社やオーナー企業であっても、法律上は別人格です。役員と会社との間で、金銭や不動産の貸し借り、資産の売買などを行う際には、外部との取引と同様の手続きを踏まないと、会社法上や法人税法上の問題が生じるおそれがあります。
例えば、金銭や不動産の貸し借りを行うときは、「金銭消費貸借契約書」や「不動産賃貸契約書」を作成します。会社への損害を防止するため、取引の内容によっては株主総会や取締役会の承認決議を受けて、議事録を作成します。
役員が会社から受け取る、または支払う利息や家賃が適正でない場合に、法人税法上、役員給与とされる場合があるため注意が必要です。
たとえば、電子メールに添付された請求書等をはじめ、ネット通販サイトからダウンロードした領収書等、クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードの支払データ、ペーパレス機能のあるファクス複合機での取引情報の受信などは、電子取引に関する情報(電子取引データ)になります。これらの電子取引データは、令和6年1月1日から、電子帳簿保存法上、紙による保存ではなく、電子取引データでの保存が義務化されます。
電子取引データの保存への対応の第一歩は、取引状況の実態把握です。まずは、経理部門をはじめとする全部門、全役員・従業員を対象にすべての取引を洗い出します。税法上保存すべき紙の書類と電子取引データについて、取引先、種類(請求書、領収書など)、受取・保管部門、受取方法、枚数などをリストアップすることから始めましょう。
日本電産の創業者・永守重信氏は、①井戸掘り経営、②家計簿経営、③千切り経営という3つの経営手法を駆使して、何度も危機を乗り越え、会社を成長させたと言います。
①井戸掘り経営は、井戸水を汲むように、考えれば考えるほど知恵やアイデアは湧いてくるという考え方、②家計簿経営は、小さな節約を積み重ねてやり繰りする家計にならって、会社も支出の一つひとつを見直して、経営改善を図るという考え方、③千切り経営は、大きな課題や難しい課題は、いくつもの小さな課題に分解すれば、解決策が見つかるという考え方です。
このような経営手法を参考に、社長と従業員が一緒に考える機会をつくり、黒字化に向けて頑張りましょう。
役員給与は、会社法上、株主総会において総額を決議し、各役員の給与額は、取締役会や取締役間の協議等で決定します。
実際の支給にあたっては、1か月以下の一定期間ごとに同額で支給する定期同額給与であれば、全額損金算入が認められます。ただし、期首から3か月以内の改定など一定の場合を除いて、原則として、事業年度の途中での支給額改定は認められません。
役員賞与を支給したいときは、予め支給時期や支給額を決め、所定の期日までに税務署へ事前確定届出給与として届け出て、届出どおりに支給すれば損金算入が認められます。
オーナー企業の場合、経営者自らが自身の役員給与を決めることになりがちです。自分の会社という意識から主観的に決めるのではなく、前年実績、当期の利益計画や業績見込みなどを基礎に、経営の現状と1年以内に返済する借入元本額を含めたキャッシュ・フローを確認して、よく検討した上で給与額を決定しましょう。
取引先との間で取引情報を電子でやり取りする「電子取引」は、電子メールでの見積もりや発注、インターネットによる請求書や領収書の受け渡しなどが該当します。
このような電子取引に関する情報(電子取引データ)について、令和4年1月1日から、電子帳簿保存法において電子データによる保存が義務化されました。
ただし、宥恕措置として、令和5年12月31日までは、紙に印刷して保存することも認められます。
令和5年10月からは消費税のインボイス制度も始まります。その対応と合わせて、今のうちから、電子データでの保存に取り組むようにしましょう。本年は、電子取引の洗い出し等を行い、来年は業務フローの改善・デジタル化を進めるなど、段階を踏んで令和6年1月1日に備えましょう。
新型コロナ貸付の据置期間が終わって、返済が始まる企業も少なくありません。現在の利益からどれだけ返済原資を確保できるか確認しましょう。
複数の借入で返済額が多くなる場合は、借入を一本化し、借入期間を延長して、月々の返済額を軽減することも検討しましょう。もちろん業績の改善も行わなければなりません。特に利益の確保は不可欠です。
どのような時代であっても利益を出し続け、資金繰りが好転するような体質にすることが企業には求められます。
さらに、新たな融資が必要な場合は、新規借入を織り込んでも返済原資を確保できることがわかる資料を添えて金融機関に説明しましょう。返済の根拠が明らかであれば金融機関も融資判断をしやすくなります。
コロナ禍において、売上減少や借入の増大に直面している中小企業を対象に、経済産業省では、金融庁、財務省等と連携し、「収益力改善」「事業再生」「再チャレンジ」というフェーズに合わせた支援策(中小企業活性化パッケージ)を実施しています。
「収益力改善」フェーズでは、税理士などの認定経営革新等支援機関による「早期経営改善策定支援事業」(ポスコロ事業)を見直し、ウクライナ情勢や原油価格高騰等に起因した影響を受けている事業者については、過去にポスコロ事業や「経営改善計画策定支援事業」を利用していても、再度利用することを可能としました。
「事業再生」「再チャレンジ」フェーズでは、中小企業活性化協議会による「プレ再生支援」「再生支援」「再チャレンジ支援」などが強化されました。
〇プレ再生支援:将来の本格的な再生計画策定を前提とした経営改善支援
〇再生支援:事業に収益性はあるものの財務上の問題を抱える事業者に対して、専門家を交えた抜本的な再生支援を実施
〇再チャレンジ支援:事業継続が困難な中小企業、保証債務に悩む経営者等を対象に、外部専門家が円滑な再スタート等を支援
会計帳簿の本質的な役割は、「経営者への自己報告機能」と「証拠力の確保」です。
自己報告機能とは、財産や借入の現況、売上や利益、資金繰りといった経営成績がわかることです。経営者の正しい経営判断のためにも、日々の記帳によって、常に最新の状況を把握できる状態にしておく必要があります。
証拠力の確保とは、企業自らが適時・正確に記帳した帳簿には、証拠力があり、信頼性も高いということです。例えば、月次の締め後はさかのぼって訂正できない、訂正したときはその痕跡が残る会計システムで作成された帳簿の証拠力は高くなります。証拠力のある帳簿は、いざというときに会社を守るだけでなく、税務当局や金融機関からの信頼性を高めます。
コロナ禍によって大きく変わった人々の消費行動や認識などは、コロナ収束後も以前と同じに戻ることはないでしょう。そういう中で企業は、経営環境の変化に適合していかなければなりません。将来が明確でないのであれば、自社が望む新しい状況を創り出すことが可能です。将来なりたい会社像を描いて、それを実現するための戦略を考えてみましょう。戦略には「他社がマネのできない」「他社がマネをしたくない」自社の強みが必要であり、それを見つけることから始まります。
そしてその強みを活かすために、商圏、事業、顧客、商品・サービスの機能、品質、価格、納期、販売方法・ルート、設備・施設などに分けて、力を入れるもの、削減するものなどを検討しましょう。
令和4年度は、パートタイマー等への社会保険の適用拡大、在職しながら年金を受給する人についての年金受給の見直しなどが行われます。
○現在、従業員500人超の企業では、月額賃金が8万8千円以上(年収約106万円)など一定の条件を満たすパートタイマー等は社会保険への加入義務がありますが、対象となる従業員数が、本年10月から100人超に、令和6年10月から50人超にまで引き下げられます。
○特別支給の老齢厚生年金の支給停止基準が、報酬と年金の月額合計28万円超から47万円超に緩和されます。
○65歳以降も厚生年金に加入しながら働く人について、働いた分の年金額への反映を毎年(年1回、10月分から)行う在職定時改定制度が導入されます。
○年金の受給開始年齢は、従来70歳までの繰り下げが可能でしたが、4月から75歳まで可能になりました。
以上の改正は働く人たちの働き方にも影響を及ぼすものです。会社としても雇用について見直すきっかけにしましょう。
企業の積極的な賃上げを促すため、中小企業の賃上げ税制が強化され、賃上げの要件が、雇用者全体の給与総額の増加割合に応じて、次のようになります。
①前年度比で1.5%以上の増加:給与増加額の15%を税額控除(従前のまま)
②前年度比で2.5%以上の増加:給与増加額の30%を税額控除
上記①②のいずれかの賃上げを実施し、さらに教育訓練費を前年度比で10%以上増加させた場合は、税額控除率が10%上乗せされます。例えば、給与総額を2.5%以上増加させ、さらに教育訓練費を10%以上増加させると、税額控除率は最大の40%になります(法人税額の20%が上限)。
また、赤字など業況が厳しい中でも賃上げ等に取り組む企業向けとして、ものづくり補助金や持続化補助金において賃上げを要件とした特別枠が設けられます。
長期間未回収の売掛金は、消滅時効(5年)に注意しつつ、取引先への訪問や電話によって粘り強く交渉を重ねます。取引先に買掛金がある場合は、売掛金と相殺する対応が考えられます。相殺でも完済できなければ、残金の支払いについての協議が必要となります。協議では確実に支払うことの確約を得て、その内容は文書にしておきましょう。
また、催告書を配達証明付きの内容証明郵便で送付すれば、取引先への強い意思表示になるため、事態が進展する可能性があります。
法的手段としては、通常の訴訟に比べて手続が簡易な「支払督促」(申立てに基づいて簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる)や、「少額訴訟」(60万円以下の請求に限って利用できる)などがあります。
減価償却資産は、原則として、取得価額をその耐用年数に従って按分し、減価償却費として費用計上します。ただし、取得価額が少額のものは、即時償却によって一時の費用として計上する方法などが認められています。
取得価額が10万円未満の減価償却資産や、中小企業者等が取得する30万円未満の減価償却資産は、一定の要件のもと即時償却が可能です。20万円未満の減価償却資産であれば、その資産の全部または一部を一括りにして取得価額の合計額を3年間で均等償却する方法(一括償却資産)も認められます。
令和4年度税制改正では、中小企業者等の少額減価償却資産の特例について、適用期限の2年延長の他、対象資産から「貸付けの用に供した資産」を除外する改正が行われます。
※10万円未満の減価償却資産や一括償却資産の対象資産についても同様の見直しが行われます。
インボイス制度による経理業務への影響を確認しておきましょう。
①請求書等(請求書、納品書、領収書など)のどれをインボイス(適格請求書)にするかを決めます。また記載項目が追加されるため、請求書等の様式変更、販売管理・請求書発行システムの設定変更などが必要になります。
②インボイス制度では、消費税額の計算方法の見直しが必要なケースもあります。当事務所にご相談ください。
③制度の実施後は、受領したインボイスの記載項目を確認し、10%と8%の税率、免税事業者等からの仕入を分けて入力する必要があります。
④従業員に対し、インボイス制度の周知とともに、免税事業者等からの仕入の注意点も踏まえた経費精算ルールの見直しが必要です。
売掛金の回収には、日頃の管理が大切です。
まずは、請求の締切日と支払日、支払方法(振込、手形等)など、約定をきちんと把握しておきます。入金があれば、どの取引先か、請求金額と合っているか、約定どおりか、などを売掛金台帳で管理します。
売掛金が未回収の場合、その原因の確認が解決の決め手になります。自社の請求もれやミス、商品・サービスへの不満・クレームなど、売掛金が支払われない原因が自社にあるときは、顧客への早急な対応や再発防止策をとるなど、信用回復に努めましょう。
取引先において、納品後の検収が未実施、経理ミスなどの理由で支払いが遅れていることもあります。日頃から取引先とのコミュニケーションを図っておくことが大切です。
令和4年度は、成年年齢の引き下げ、年金制度、育児休業などの改正が行われます。
○4月から成年年齢を18歳に引き下げ:18歳から親の承諾なしに契約が可能になります。
○在職老齢年金の見直し:4月から「60~64歳の在職老齢厚生年金」の支給停止基準が28万円から47万円に緩和されます。在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額について毎年10月に定時改定が行われます(在職定時改定)。
○パート等への社会保険の適用拡大:10月から、従業員101人以上の企業で働くパートタイマー・アルバイト(学生は除く)は、月額賃金8.8万円以上や週の所定労働時間が20時間以上などの一定条件を満たすと社会保険への加入が義務化されます。
○介護・育児休業法の改正:4月から、育休取得等について個別の周知・意向確認などが義務化されます。10月からは子の出生後8週間以内に4週間まで出生時育児休業取得が可能となり、さらに育児休業の分割取得(2回まで)も可能になります。
(1)個人事業者は、収入と必要経費を確認しましょう。
新型コロナ関連の支援金等をはじめ事業に関連して受け取った補助金等は収入になります。仕入、従業員給与、広告宣伝費など事業に必要な費用は必要経費になりますが、事業主のプライベートな支出など事業と関係のない費用は必要経費になりません。
店舗併用住宅の家賃や水道光熱費などは、事業用の部分を面積、使用時間など合理的な方法で按分できれば、事業に使用した分は必要経費になります。
(2)給与所得者でも給与以外の収入があると確定申告が必要な場合があります。
給与収入が年間2,000万円以下の給与所得者は、年末調整をすれば確定申告の必要はありません。ただし、同族会社の役員が会社から受け取った不動産賃貸料や貸付金利息、満期保険金、副業、資産の売却、海外資産の運用などによって収入を得た場合、金額等によっては確定申告が必要な場合があります。
令和5年10月からスタートするインボイス制度は、消費税の免税事業者にも影響があります。インボイス制度では、買手側が仕入税額控除を適用する要件として、売手が発行するインボイス等の保存が必要になります。インボイス等を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」に登録した課税事業者に限られ、免税事業者はインボイスを発行することができません。
取引先が課税事業者の場合、取引自体の見直しなどを検討される可能性があります。まずは、事業の業況とともに取引先の意向を確認し、適格請求書発行事業者(課税事業者)になった場合の消費税の納税負担などの影響についても考慮して検討しましょう。
ただし、慌てて適格請求書発行事業者の登録を申請する必要はありません。令和4年中は、その影響を検証する時間に充てても、対応は十分に間に合います。
政府の新たな経済対策(令和3年11月19日閣議決定)では、新型コロナウイルスで減収となった事業者向けの支援などが盛り込まれました。
〇新型コロナの影響で売上が減少した法人・個人事業者(フリーランスを含む)を対象に、売上高の減少幅に応じて、最大250万円の「事業復活支援金」(仮称)が給付されます。
〇政府系金融機関(日本政策金融公庫等)による実質無利子・無担保融資の申請期限が、「令和4年3月末まで」に延長されました。
〇新型コロナの影響で休業した企業に対する雇用調整助成金(特例措置)の申請期限が、「令和4年3月末まで」に延長されました。
大きな環境変化を経験してきた中で、さまざまな危機を力強く乗り越えてきた企業に共通するのは、経営理念に基づくブレない経営を実践していることです。
松下幸之助氏(旧・松下電器産業創業者)は、経営理念が根底にあって、人も技術も資金もはじめて真に生かされてくると話しています。稲盛和夫氏(京セラ創業者)は、経営理念によって経営者も躊躇なく経営に全力で打ち込めると説いています。他方、大企業だけでなく中小企業においても経営理念を追求し、安定経営を実現しているところはたくさんあります。
先行きの見えない今だからこそ自社の経営理念を見つめ直すことが大切です。また、経営理念を明確にしていない企業においては、創業の原点や自社の存在意義に立ち返ってみましょう。
改正電子帳簿保存法において、令和4年1月1日から電子取引にともなう請求書等の取引情報は電子データで保存することが義務づけられました。中小企業においても、電子メールでの請求書、領収書等の受け取り、インターネットサイトでの会社物品の購入、電子決済サービスの利用など、さまざまな電子取引が行われていることでしょう。自社の取引の中で電子取引に該当するものがないか、しっかり確認して対応しなければなりません。
電子取引データを保存する際は、定められた保存要件に準拠しなければなりませんので注意が必要です。また、保存媒体としては、ハードディスクやコンパクトディスク、DVD、クラウド(ストレージ)サービス等があります。
消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートすると、買手側は原則、売手側から受領したインボイス(適格請求書)等や、一定の事項が記載された帳簿を保存しなければ仕入税額控除を適用することができなくなります。つまり、インボイスを発行できない免税事業者等からの仕入は仕入税額控除の対象外となるので注意しましょう(令和11年9月30日までは経過措置あり)。
ただし、中古車販売業、質屋、宅地建物取引事業者など、個人(消費者)から販売用の商品を買い取る場合や、鉄道やバス等の利用料、自動販売機での購入(いずれも3万円未満に限る)などにおいては、一定の事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
インボイス制度の導入により、売手側は、買手側から求められたときはインボイス(適格請求書)を発行しなければなりません。しかし、小売業、飲食店業、タクシー業など不特定多数の者と取引する事業者は、インボイス(適格請求書)の記載事項の一部を省略した簡易インボイス(適格簡易請求書)の発行が認められます。レシートや手書きの領収書も記載事項を満たしていれば簡易インボイスとして発行することが可能です。
また、コインランドリーや自動販売機、コインロッカーなど、代金の受領やサービスの提供を機械装置だけで行う場合、金額が3万円未満であればインボイスの発行が免除されます。ただし、セルフレジや食券類の自動販売機等ではインボイスの発行が必要です。
年末調整の業務をスムーズに進めるためには、従業員に正しく漏れなく年末調整申告書を記入(作成)し、提出してもらうことが重要です。特に以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
(1)「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」には、本人や配偶者の給与の収入金額、所得の見積額を計算して記入します。収入金額は1月~11月の給与支払明細書の課税支給額(賞与を含む)の合計に、12月の給与と賞与の支給見積額を合計して計算します。収入金額を申告書(裏面)の【給与所得の金額の計算方法】の表に当てはめて所得の見積額を計算します。
(2)年収850万円を超える人で、23歳未満の扶養親族がいるなどの要件に該当する場合は、所得金額調整控除申告書の提出が必要になります。
(3)年初に提出された扶養控除等申告書の内容に変更がないか従業員に再確認します。
給与計算業務には、勤怠管理、給与・賞与の支給額の計算と振込、源泉所得税・社会保険料の徴収と納付、給与支払明細書の作成・配付、さらに年末調整などその内容は多岐にわたります。しかし、標準・定型化した業務も多いため、給与計算ソフトの導入や、インターネットバンキングやダイレクト納付の活用、年末調整の電子化(自動転記・計算)など、デジタル化を図ることで業務の省力化・効率化が進み、経理担当者の業務負担を軽減することができます。
さらにデジタル化によって蓄積されたデータを活用すれば、人件費の管理(推移、労働分配率、残業手当など)や、働き方の見直し(残業時間の削減、有給休暇の取得促進)などにつなげることもできます。
令和5年10月から消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。適格請求書とは、一定の事項が記載された請求書、納品書、領収書、レシートなどの書類や電子データなどのことでインボイスともいいます。
売手(適格請求書発行事業者であること)は、買手から求められたときは、一定の事項を記載したインボイスを発行し、その写しを保存する必要があります。インボイスの発行にあたっては、消費税額計算の端数処理や、納品書と請求書の記載事項などに注意が必要です。
買手は、仕入税額控除の適用を受けるために、自ら作成する帳簿に一定事項を記載して保存するとともに、原則としてインボイスの保存が必要になります。
月次決算には、いち早い業績把握、資金繰りの見通しを立てる、着地点を早く見定め、効果的な決算対策を打てるようにするなどのメリットがあります。経営の先行きが見えない今だからこそ月次決算が重要になっています。
月次決算のデータから、売上や利益、経費の詳細を確認してみましょう。利益は本来業務から得たものか、軽費の増減はどのように変化しているのか、それぞれの内容を把握して、適切な対応策につなげていくことが重要です。
コロナ禍にあって先行きが見通せない状況のなかでは、手元資金を厚くしておくような対策を検討しましょう。
夫の扶養の範囲内で働きたい妻が、特に注意すべき自身の給与収入は、次の金額です。
○103万円以下:妻自身に所得税は課税されないが、93万円~100万円を超えると住民税が課税される(自治体によって異なる)。夫は、所得税の配偶者控除を受けることができる(所得制限あり)。
○103万円超:妻自身に所得税が課税される。夫は、配偶者控除に代わり配偶者特別控除を受けることができる(所得制限あり)。配偶者特別控除は、150万円までは、配偶者控除と同額の控除が受けられ、150万円を超えると段階的に控除額が減少していき、201.6万円以上で控除が受けられなくなる。
○130万円以上:社会保険の扶養から外れ、一定の条件のもと妻に社会保険料の支払いが発生する。ただし、従業員が501人以上の企業に勤務しているなど一定の条件に該当すると、年間105.6万円以上で社会保険の扶養範囲から外れることに注意が必要。
給与の支給額の計算と振込、源泉所得税・社会保険料の計算と納付などの毎月の給与計算業務を電子化することで、業務の負担を軽減しましょう。
給与、源泉所得税・社会保険料は、「PXシリーズ」などの給与計算ソフトの利用によって、支給額や控除額を自動計算することができます。
給与・賞与の振込、源泉所得税・住民税・社会保険料の納付は、インターネットバンキングやダイレクト納付を利用して、社内やテレワーク先から振込、納付を行うことで、自社のパソコンが金融機関の窓口のようになります。
ルーティン業務だからこそ、電子化による業務負担の軽減効果は大きくなります。
高年齢者雇用安定法では、60歳未満の定年を禁止し、さらに雇用確保措置として「65歳までの定年引上げ」「定年の廃止」「65歳までの継続雇用制度の導入」のいずれかを義務づけています。さらに、今年4月からは、雇用確保措置に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保する努力義務が課せられています。
自社に定年制度を設けていますか。その定年年齢は、就業規則上、明確になっていますか。定年を定めていない場合は、トラブル発生の要因ともなります。高齢により十分に働けなくなった従業員であっても、合意なく労働契約を終了することはできません。
定年を明確に定めたうえで、定年後は有期契約による雇用にするなどの対応が必要です。
新型コロナによって一変した環境のなかで、自社が生き残るヒントを、「アンゾフの成長マトリクス」の4つの基本戦略をもとに考えてみましょう。この成長マトリクスは、数値計画を策定し、行動へ移すための重要な手掛かりとなります。
(1)市場浸透戦略:
今ある製品・サービスを、今のお客様にもっと販売する戦略です。現在の得意先への営業活動を強化してみましょう。
(2)新製品開発戦略:
新製品・新サービスを開発し、今のお客様に販売する戦略です。現製品・現サービスへの顧客の不満を改善して、新たな価値観を提供する新製品・新サービスを生み出しましょう。
(3)新市場開拓戦略:
今ある製品・サービスを新しいお客様に販売する戦略です。現製品・現サービスの対象、用途、色彩や形などを変えることで新たな顧客層を掘り起こしましょう。
(4)多角化戦略:
新製品・新サービスを開発し、新しいお客様に販売する戦略です。成長が期待できる業種・業態への転換を含め、市場、顧客、製品・サービスとも新規に進出するため、難易度、リスクが高くなります。
借入金の返済は、長期的な見通しを立てておき、「返済が難しいかもしれない」とわかったときには、いち早く会計事務所に相談しましょう。相談が遅くなると対応策が限られてしまいます。約定返済日に慌てて、金融機関に条件変更を申し込んでも、すぐに手続きはできないことを理解しておきましょう。
債務条件の変更では、元金返済の猶予、返済期日の延長が一般的です。いずれも毎月の返済金額が減少し、負担を軽減することができます。しかし、返済金額によっては債務の一本化などもあるので、財務の現状を会計事務所と相談することが大事です。
コロナ禍にあって受注減少などの影響を受けた状況から、新たな製品開発や新規顧客の獲得などによる業績回復が必要となっている会社も多くあります。新たな事業展開を考える際には、業務フローと商流を図式化してみましょう。図式化することで、事業全体の流れや細部が把握でき、その特徴や損益構造がよりわかりやすくなります。そのことによって解決すべき課題も明確になります。また、社内だけでなく金融機関などの外部に対しての説明もしやすくなります。
政府は「ポストコロナ持続的発展計画事業」として、税理士等の認定支援機関の支援を受けて作成する経営改善計画書の費用を補助しています。この計画書は金融機関への融資申し込みにも活用できるものです。新規事業を立ち上げる際には、ぜひ経営改善計画書を作成しましょう。
ふるさと納税は、応援したい任意の自治体へ寄附した金額のうち2,000円(自己負担分)を超える部分の全額が所得税や住民税から税額控除される制度です(上限額あり)。
例えば、昨年(令和2年)にふるさと納税を行い、今年、確定申告をした場合の控除は、令和2年分の所得税と、令和3年度の住民税から控除されます。
このようなことから、きちんと控除されているのか、どこを見ればそれがわかるのかといった疑問を持つ人も増えています。
また、確定申告不要のワンストップ特例では、所得税からの控除は発生せず、令和3年度の住民税からの減額という形で控除され、確定申告の場合と税額控除の方法に違いがあります。どちらも控除される税額は同じです。
日常の経済取引において作成する領収書や契約書には印紙税が課税されますが、PDFなど電子化された領収書や契約書を電子メールで送信する場合、印紙税は課税されるのでしょうか。
電子メールで送信後、改めて紙に印刷して取引先に渡した場合はどうなのでしょうか。あるいは保管のために、印刷するとどうなるのでしょうか。
実務上、気になる印紙税の取り扱いについて解説しています。
利益アップには、売上拡大の他に、限界利益率の改善や固定費削減などがあります。
限界利益率の改善には、売上単価アップや変動費率ダウンがありますが、取引先との関係もあるため、すぐには実行できないこともあります。得意先や仕入先の実績をもとに、よりよい取引条件が実現できないか検討してみましょう。
また、仕入量の調整による余剰在庫の削減や、限界利益率の高い商品グループの売上を伸ばすことなど、自社でできることを考えてみましょう。
固定費についても今一度見直すとともに、業績に応じた役員報酬なども検討してみましょう。
売上(売掛金)と仕入(買掛金)を月次で計上し、財産管理と資金繰りの見える化ができたら、より的確な経営判断ができるように、月次決算の精度をさらに高めましょう。
①月ごとに仕入高や在庫に大きな変動がある場合は、原価率をもとに月末在庫を概算計上すれば、月次の利益への影響を小さくすることができます。
②労働保険料、損害保険料や固定資産税、賞与など年払いや特定月にまとめて支払う経費や減価償却費は、年間の支払額や見積額を月割りして毎月計上することで、経費の発生を平準化することができます。
請求書の発行時や受領時に売掛金と買掛金を月次で計上することで、売掛金の回収予定や仕入代金の支払予定を把握できるようになります。
売掛金は、毎月、得意先への売上請求書を発行する際に、売上とともに仕訳計上します。買掛金については、仕入先からの仕入代金の請求書を受領したときに、仕入と買掛金を仕訳計上します。仕訳を得意先別、取引先別に計上すれば、月次での売掛金・買掛金管理ができるようになります。
売掛金と買掛金を月次で計上することは、発生主義による月次決算への第一歩です。
新型コロナによる経営への影響はさまざまで、業績が悪化した企業もあれば、特需によって業績を伸ばした企業もあります。コロナ禍での売上、経費、労働環境について、良い傾向や変化がないか探してみましょう。
売上の変化のなかに業績向上につながる変化があれば、いかに事業展開を図るか、販売方法や業態を変えるかなど、顧客意識の変化を捉えて、戦略を検討しましょう。
仕事量や従業員の行動の変化によって、経費、コストも変化が生じていることでしょう。売上との関連に注意しながら分析し、見極めることが大切です。経費やコストの増減が売上実績に見合っているか検討しましょう。
また、新型コロナ関連の給付金等の終了や、制度融資の特例の縮小などがありますので、今後の資金繰りの見通しをしっかり立てておきましょう。
経常利益がゼロ(限界利益=固定費)、つまり損益がトントンになる状態を損益分岐点といい、「売上高×限界利益率=固定費」の算式で表すことができます。
この算式をもとに、売上高、限界利益率、固定費の数値を入れ替えてシミュレーションすれば、固定費が増加したときや限界利益を伸ばしたいときの必要売上高などを求めることができます。
また、利益面だけでなく資金との関連を考え、借入返済額や減価償却費を見込んでシミュレーションすることで、借入返済に必要な売上高はいくらかを求めることができます。損益分岐点分析を活用してみましょう。
変動損益計算書は、費用(経費)を、売上の増減に伴って変動する変動費(材料費、外注費など)と、売上が増減しても変動しない固定費(賃金・給与や地代家賃など)に分類し、売上高から変動費を差し引いた限界利益、そこから固定費を差し引いた経常利益を算出しています。
限界利益は、粗利益とほぼ同じもので、企業の純粋な稼ぎ高であり、これが固定費を上回ることで固定費が賄えるのです。
固定費を限界利益率(限界利益÷売上高)で割れば、赤字でも黒字でもない損益トントンの売上高である損益分岐点売上高を簡単に求めることができます。変動損益計算書をもとに、売上高、変動費、固定費、限界利益の数値をシミュレーションすれば、数値にもとづいた的確な経営判断ができるようになります。
新型コロナの影響が長期化するなか、追加融資が必要となるケースも出てきます。
昨年来の新型コロナ関連融資では、財務内容よりも迅速さが優先され、融資が受けやすい状況にありましたが、追加融資は審査が厳しくなることが予想されます。
追加借り入れの際には、直近の試算表、前年同月の売上高、資金繰り表などの資料をもとに、資金使途、必要資金額、返済可能性について金融機関に説明しましょう。
また、既存借入金の返済開始も始まります。返済原資を確認し、借換えや返済条件の変更(リスケジュール)についても検討しましょう。
政府系金融機関の新型コロナ関連の融資・保証についても、期限や対象要件等が見直されることがあるため、最新情報に注意しましょう。
官民において押印廃止が進められるなか、押印の法的効果や押印のない文書の責任の所在や意思確認について、さまざまな疑問もあるでしょう。
①押印の法的効果は、本人の印章(はんこ)によって押印された印影は、本人の意思に基づく押印と推定され、その本人が作成したものであると推定されることにあります。
②契約書、請求書、領収書などへの押印を廃止しても、法的には有効ですが、文書の真正な成立の過程を裏付ける資料などを残しておく必要があります。
③民間同士の取引において、責任の所在や意思を明確にしておきたい場合には、従来どおり書面に押印することも必要です。しかし、押印廃止の先には文書のデジタル化があり、今後は、電子署名や電子認証サービスを活用した文書のデジタル化が進むでしょう。
令和2年度第3次補正予算等では、新型コロナ対策として、中小企業向けの補助金、公的融資などの新設・拡充が盛り込まれました。
①新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編等の思い切った事業再構築を図る中小企業等に最大1億円(通常枠は6,000万円)を補助する「事業再構築補助金」が創設されました。税理士等の認定経営革新等支援機関との事業再構築計画の策定が必要です。
②ものづくり・持続化・IT補助金について、感染対策と経済活動の両立のための設備の導入、販路開拓、テレワーク等のためのITツールの導入を対象とした特別枠が、補助率等を拡充し、「低感染リスク型ビジネス枠」(新特別枠)として改編されました。
③事業転換・イノベーション・経営改善を支援するため、当初2年間の金利を0.5%引き下げた「設備資金貸付利率特例制度」や、金融機関の継続的な伴走支援を受けて経営改善に取り組む中小企業への「伴走型特別保証」が創設されました。
①新型コロナ税特法により創設された「納税の猶予制度の特例」は、令和3年2月1日をもって終了しました。今後は、通常の猶予制度(換価の猶予、納税の猶予)を適用することになります。
②テレワーク(在宅勤務)する従業員に対して、会社が在宅勤務手当として一定額を渡切りで支給する場合は、給与として課税されます。テレワークに必要な事務用品等の支給や通信費・電気料金について、実費相当額を精算する場合は、課税されません。
③助成金等を受給した場合は、法人税や所得税の課税対象になるため注意が必要です。雇用調整助成金の特例措置によって助成金を受給した場合は、支給決定を受けた事業年度に収益を計上することが認められます。
帳簿書類の整理・保存は、現金管理とともに正しい経理処理の基本であり、経営の意思決定と経営管理のうえで、欠かすことのできない業務です。
帳簿書類が、秩序正しく整理され、いつでも容易に見られる状態に保管してあれば、経理業務においても、書類の紛失、誤記、転記や請求のミスなどが起こりにくくなります。社長が経営判断に必要な情報を迅速に確認することができます。
帳簿書類は、商法、会社法、税法において保存期間が定められており、税務では、帳簿書類の保存が青色申告控除や消費税の仕入税額控除の要件になっています。
電子への移行においても、紙ベースでの帳簿書類の整理・保存がきちんとできていれば、移行がスムーズに進みます。
日々の現金取引は、その日のうちに遅れずに起票し、正確な現金残高表(または現金出納帳)を作成するとともに、金庫内の現金を数えて、実際有高と帳簿残高が一致するかを確かめます。これが現金管理の基本です。
現金は預金と異なり取引記録が残らないため、あとからその動きを追うのは困難です。毎日、現金残高を合わせていれば、売上や経費、精算のもれがなくなります。この現金管理ができていれば、現金に対する会計上の仕組みが構築されていることになり、誤りや不正を発見・防止する体制が整備されているといえるでしょう。
貸借対照表の「負債・純資産の部」は、企業活動を支える資金の調達先を表します。
営業活動を支える運転資金は、「たな卸資産回転期間+売上債権回転期間」と「買入債務回転期間」との差を見ることで、資金調達が必要な期間がわかります。この差のバランスを図ることで、資金繰りが安定します。
また、中小企業の多くは金融機関からの融資によって資金を確保しますが、「当期利益額+減価償却費」の金額が、1年以内返済額を上回っていれば、資金繰りは安定した状態といえます。
中小企業の税負担率は利益の30%以内であることから、70%は内部留保することができます。黒字化をはかり、利益を内部留保して純資産(自己資本)の蓄積をめざしましょう。
資金調達というと、金融機関や経営者からの借り入れなどが一般的です。
しかし、代金前払いなどは、事前に資金を調達できるという点で、一種の資金調達の手法といえます。前金、前売り券、手付金などはその一例でしょう。
それ以外にも、保守・点検サービスの月額料金や、サブスクリプションと呼ばれる定額制動画配信サービスなどは、毎月一定額を受け取ることができ、資金繰りの安定に貢献します。中小企業の利用が増えているクラウドファンディングや、農作物のオーナー制度なども、商品・サービスの提供前に収入を得る仕組みといえます。
新商品・新サービス開発の際には、資金調達のことも考えたビジネスモデルを検討してみてはいかがでしょうか。
実務において会計伝票に誤りを発見することがあります。この場合、誤りをさかのぼって訂正するのではなく、「発見した日の日付」で、取り消しと訂正の伝票を起票します。これが正規の簿記の原則に従った正しい訂正方法です。
「訂正の履歴をきちんと残す」ことで証拠能力として認められます。このことは紙の伝票においても、電子の伝票においても変わることはありません。
このような、日々の正しい会計処理の積み重ねが、正しい月次試算表や、適正な決算書、税務申告書の作成につながり、税務署や金融機関から高い評価が得られます。
営業活動における「たな卸資産(在庫)→売上→売掛金(売上債権)回収」という回転が速いほど、資金効率がよくなります。これを水泳選手の身体にたとえると、右腕(たな卸資産)と左腕(売掛金)が効率よく回って、胸筋(現金預金)を強くしている状態です。その一方で、上半身の動きを支える下半身(固定負債)が過大になりすぎる(脂肪過多)と、資金不足になるおそれがあります。
売掛金と在庫の管理をきちんと行って、たな卸資産や売掛金を効率よく回転させ、筋肉質で効率がよい会社をめざしましょう。
先行きの不透明なこんなときだからこそ、月次の業績だけでなく、3か月ごとに業績を確認することが必要です。月次で見ると小さな変化であっても、3か月で見ると大きな変化になっているかもしれません。3か月ごとに業績を総括し、課題や強化すべき点を確認し、目標とのズレを改善する方法を考え、目標との差異を小さくしていくことが大切です。状況によっては決算に向けての方針を変更しなければならないこともあります。
いま、金融機関は、融資先の事業、財務、資金繰りの状況を確認するモニタリングを重視する方向へ動いています。業績管理を行い、自社から積極的に業績などを報告することが必須になってきています。
また、決算書や毎月の試算表を電子的に自動で金融機関へ提供することも可能です。
令和2年分の確定申告では、国からの給付金等や特例税制などに注意が必要です。
全体の売上数字を見るだけではなく、その内容を得意先別や商品(製品)別など、詳細に分析してみましょう。全体の売上は下がっていても、得意先や商品によっては、「新型コロナの影響を受けなかった」「令和2年後半の売上が伸びている」という例があるはずです。そのような分析をもとに、今後、力を入れていく得意先や商品を検討します。検討結果を、経営戦略や具体的な目標設定(短期計画、中期計画など)に活かすことで、事業継続につながります。
新型コロナによって、雇用の維持と事業の継続が課題になっています。
今後も、休業や時短営業を余儀なくされる場合には、雇用調整助成金の活用を検討します。受給には、事前に立てた休業予定(計画)に基づいて、従業員を休業(1日又は一定の時間)させ、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが必要です。
コロナ禍において、今後、労働時間や従業員の働き方を変えるなかで、給与の見直しなど、労働条件の不利益変更をせざるを得ないときもでてくるでしょう。その際には、まずは経費の削減、役員給与の減額、公的助成金の活用など、会社としてできる限りの手を尽くす必要があります。そのうえで、従業員へ丁寧に説明し、その妥協点を探り、個別合意を得るという手順を踏まなければなりません。
「会社はだれのものか?」と聞かれたときにあなたはどう答えますか。もちろん懸命に働いて会社を維持してきた経営者にとっては「自分のもの」ですが、「一緒にがんばってきた社員のものでもある」「顧客が支えてくれて今がある」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
企業は「顧客の求めるものは何か」を常に考えて、そのニーズに応じた商品やサービスを提供するとともに、「社会」、つまり企業を取り巻く、顧客、社員、経営者(家族含)、取引先、地域社会、環境・資源、行政機関等のステークホルダーにも貢献する活動を行うことで、社会で存続できるのではないでしょうか。
コロナ禍で厳しい環境が続きますが、年初にあたり、自社の存在意義を考える機会を持ってみてはいかがでしょうか。
新型コロナによって企業を取り巻く経営環境が大きく変化しても、企業は売上回復を図らなければなりません。SWOT分析の手法を活用し、外部環境を、自社にとって追い風やチャンスとなる「機会」と、反対に逆風やピンチとなる「脅威」に分けて、市場の変化を分析してみましょう。次に、内部環境として、自社が他社に勝てる、得意な点である「強み」と、反対に他社に負ける、不得意な点である「弱み」を再確認します。
機会、脅威、強み、弱みの現状分析をもとに、追い風やチャンスを活かせる自社の強みを見つけて、そこから今できる戦略を考えて、まずは一歩を踏み出してみましょう。
政府は、デジタル庁の新設、デジタル化促進のための規制改革、行政手続における「書面・押印・対面」廃止の法改正を令和3年の通常国会で予定しています。また、すでに実施・予定されている行政サービスのデジタル化もあります。
令和2年分の年末調整では、税制改正に伴い、「基礎控除申告書」「所得金額調整控除申告書」が新設され、「配偶者控除等申告書」と様式が兼用となった「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」になります。
新しい申告書は、従業員の給与収入、配偶者や扶養親族の有無などによって記入すべき申告書がそれぞれ異なります。記入もれや記載ミスがないよう、経理担当者は、記入上の注意事項などを早めに伝えるようにしましょう。
年々、年末調整手続が煩雑化し、従業員の手間や経理担当者の負担も大きくなっています。給与計算事務と合わせて年末調整手続を電子化することで、経理業務の省力化が可能になります。当事務所にご相談ください。
新型コロナに関連した給付金、支援措置の申請期限や適用期間の終了が迫っています。これまで要件を満たさなかった法人、個人事業者でも、年末にかけて新型コロナの影響を受けて、売上減少要件などを満たせば、給付金等の支援策を活用することができます。申請期限等に注意しましょう。
〇雇用調整助成金の特例(緊急対応期間)の適用期間……令和2年12月31日まで
〇家賃支援給付金・持続化給付金の申請期限………………令和3年1月15日まで
〇令和3年分固定資産税の減免措置の申請期限……………令和3年1月31日まで
〇納税猶予の特例…………令和3年2月1日までに納期限が到来する国税等が対象
新型コロナの影響によって売上減少や事業縮小を余儀なくされた一方で、業務上の無駄や非効率な点が浮き彫りになったという側面もありました。このような変化を改善点ととらえ、業務内容や営業方法、従業員の働き方を変えたり、労働時間を減らしたりして、雇用を守りつつ人件費を抑えたりして、固定費や変動費の削減を図りましょう。
売上回復に目を向けるだけでなく、生産性向上や経営効率化など、経営の「質」を高める行動にトライしましょう。
政府の新型コロナ関連融資は、多くの企業において直面する支払いや手元資金の確保に活用されました。しかし、借入金は、いずれは返済しなければなりません。
まずは、借入契約ごとに元本、利率、返済条件、据置期間、返済期限などの借入情報を整理し、返済のシミュレーションを行い、返済原資確保のための経営改善について今のうちから考えておく必要があります。
経営改善にあたっては、新型コロナが経済全体に大きな影響を与えている状況から、得意先や消費者向けの売上改善だけでなく、固定費・変動費、不採算事業の見直しなど社内で実践できることから始めましょう。
一般に、パートで働く主婦は、収入が夫の扶養範囲である103万円(税金)や130万円(社会保険)を超えないように就業調整をするケースが多くあります。
しかし、現在は、配偶者特別控除が拡大され、夫の給与収入が1,095万円以下の場合、妻のパート収入が103万円を超えても150万円以下であれば、夫は配偶者控除(38万円)と同額の配偶者特別控除を受けることができるため、夫の税負担は変わりません。ただし、妻には所得税が課税されます。収入が130万円以上であれば、妻に社会保険料の負担が発生します。
また、FX・暗号資産の取引や転売による収入、生命保険の一時金など、パート収入以外の収入があると、収入が103万円を超えて、扶養の範囲から外れる可能性があります。
土地の価格には、実際の取引価格(実勢価格)のほかに、国土交通省や都道府県、国税庁などが調査・公表する「公示地価(公示価格)」「基準地価」「路線価」「固定資産税評価額」があります。「公示地価」や「基準地価」は、土地取引における価格の目安や、公共用地の取得価格の算定の基準とされます。「路線価」は相続や贈与における宅地等の評価額を求める際の基準に、「固定資産税評価額」は固定資産税算定の基準になるものです。
公示地価や路線価は、1月1日時点における土地価格が基準のため、新型コロナの影響が反映されていませんが、基準地価(9月公表)は、7月1日時点の土地価格が基準とされます。基準地価の状況によっては、路線価のほうが高くなる逆転現象が起きた場合、路線価を減額修正する措置が実施される予定です。国税庁からの情報に注意しましょう。
今、手元にどれぐらいの資金がありますか。新型コロナの影響によって売上減少が続く状況においては、最低でも6か月分の給料・家賃が支払えるだけの手元資金を確保しておきたいところです。
今後、事業を継続していく上で検討しておきたいことは、仕事量や顧客の減少に合わせた労働時間の削減、雇用調整助成金の活用などです。売上・利益の側面では、これまでのコロナ禍での事業の成果を検証し、費用対効果、限界利益の確保の視点から、事業の見直しや収益の確保策を検討しましょう。
近年は地震・風水害など災害が頻繁に起きています。また、新型コロナ危機のような想定外の事態においても、月次決算によって最新の業績が把握できていれば、影響の予測や資金繰り対策、給付金等の申請への素早い対応が可能です。月次決算の重要性が一層高まっています。それとともに被災したときの業務の早期復旧への備えとして、財務データの安全な場所への保管についても検討しましょう。
令和2年10月1日から電子取引の取引情報についての保存要件が緩和されます。これによって、経理業務のペーパーレス化がより一層進むことになるでしょう自社の体制も再確認しておきましょう。
例えば、夫の相続時に子が自宅を相続しても、配偶者居住権を設定することで、妻はそのまま自宅で暮らすことができます。配偶者居住権には財産価値が認められており、自宅の相続税評価額が高額なときや、配偶者の年齢が若いときには、相続時にこれを設定することで、将来の相続税負担を軽減できる可能性があります。
わが国は創業100年超の老舗企業が3万社にのぼる長寿企業大国であり、それらの企業は恐慌や大戦、震災などの苦難を乗り越えてきました。江戸時代のデフレ政策とされる享保の改革では、商人の7、8割が潰れたといわれます。商人は、自己の責任で決断し、己を律し、行動しなければ生き残れないことを痛感し、困難に遭っても心が折れないために、商家のあるべき姿を家訓として残しました。商人が倒産した真の要因は目的意識が希薄であったことを知ったのでした。
歴史は繰り返します。今、コロナ禍で多くの企業が厳しい状況にある中で、今一度原点に戻り、会社の存在意義の再構築をすることの重要性を伝えています。
第2次補正予算では、家賃支援給付金の創設、雇用調整助成金の拡充などの追加支援策が盛り込まれました。
①家賃支援給付金は、支払賃料(月額)に基づいて算定した額の6倍が一括支給されます。ただし、法人は600万円・個人事業者は300万円が上限です。対象は、令和2年5月~12月における売上の減少が、1か月で50%又は連続する3か月の売上の合計が30%のいずれかに該当するテナント事業者です。
②雇用調整助成金は、助成額の上限を1人1日8,330円から15,000円に引き上げるなどの拡充が行われました。なお、引き上げは、4月1日まで遡って適用されます。
③新型コロナ感染拡大の防止措置による休業中に、賃金(休業手当)を受けられなかった人に対して「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」が支給されます。
9月から、マイナンバーカードを活用した消費活性化策として「マイナポイント」が始まります(令和3年3月まで)。
マイナポイントは、利用者がキャッシュレス決済サービスを一つ選んで事前に登録することで、チャージや買い物時に、金額の25%(上限5,000円分)がその決済サービスのポイントとして付与されます。マイナポイント取得までの手順と注意事項を紹介します。
今後、調整手続の電子化など、行政サービスの電子化が進むと、様々な場面でマイナンバーカードが必要になります。
新型コロナウイルス感染症の影響で売上が急減しているテナント事業者に対して、「家賃支援給付金」が最大で法人に月100万円、個人に月50万円が6か月分支給されます。対象は、令和2年5月~12月における売上の減少が次のいずれかに該当する事業者です。
①1か月の売上が前年同月比で50%以上減少している
②連続する3か月の売上が前年同期比で30%以上減少している
また、新型コロナウイルス感染症の影響で家賃の支払いが困難なテナント事業者を支援するために家賃の減額に応じた不動産オーナーについては、減額分が税務上は寄附金とはなりません。
金融庁や中小企業庁は、金融機関に対して、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で資金繰りに窮する事業者への迅速かつ柔軟な対応を要請しています。
金融機関の融資判断においては、融資した資金が事業に正しく使われ、確実に返済されるかを重視します。したがって、スムーズな融資のためには、経営者が事業の状況と資金使途を説明するとともに、月次決算に基づいた直近の試算表、資金繰り表、経営計画が重要なことに変わりはありません。
国や地方自治体から助成金や給付金を受ける場合は、課税の有無や計上時期に注意しましょう。法人が受け取った助成金等は雑収入として法人税が課税されますが、消費税は課税されません。個人が受け取った助成金等は、法令によって非課税になるもの(例:特別定額給付金)以外は、所得税の課税対象(事業所得等、一時所得、雑所得のいずれか)になります。
一般に、助成金等は「申請→支給決定→入金」の流れで支給されますが、収益の計上時期は、入金時ではなく、支給決定時になります。支給決定と入金が決算期をまたぐ場合は、期末に「未収入金」として計上する必要があります。
令和3年1月31日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税などほぼすべての国税を対象に、無担保・延滞税なしで1年間、納税を猶予できる特例があります。
対象は、新型コロナウイルスの影響により令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、「売上(事業収入)が前年同期に比べて概ね20%以上減少」などの要件を満たす法人・個人事業者です。
納税猶予は、本来、税金として納付するはずの資金が手元に残ることから、強力な資金確保策になります。消費税の予定納税についても猶予の対象になるため、納税額が多額の場合は利用しましょう。利用には税務署への申請が必要です。
なお、地方税、社会保険料等についても同様の猶予の特例があります。
新型コロナウイルス感染症対策にかかる「雇用調整助成金の特例」について、4月1日から6月30日までを緊急対応期間として、全業種(全事業主)を対象に、次のような拡大措置が実施されています。6月30日までの休業の受給申請は8月31日までです。
〇売上高(生産量)の減少要件を1か月10%以上から5%以上に緩和
〇助成率を2/3から4/5に引き上げ(解雇を実施しない場合は9/10)
〇小規模事業者を対象に「実際の休業手当額×助成率」によって助成額を算出
〇対象となる休業を、一斉又は一定のまとまりで行う1時間以上の短時間休業まで拡大
〇雇用保険の被保険者でない従業員の休業も助成金の対象になる
新型コロナウイルス感染症の影響により、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、最大で法人200万円・個人事業者100万円の持続化給付金が支給されます。ただし、下記のように前年の総売上からの減少分が上限になります。
〇前年の総売上(事業収入)-(前年同月比で50%以上減少した月の売上×12か月)
「前年同月比で50%以上減少した月」は、令和2年1月~12月の中から、事業者が任意に選ぶことができるため、12月までに50%以上減少した月があれば申請が可能です(申請期限は令和3年1月31日まで)。申請方法は原則としてオンラインになります。
新型コロナウイルスの影響によって、売上が急減し、直面する毎月の支払いのための資金繰り対策が最重要課題となっていることでしょう。
直面する支払いに対して、下記のように優先順位を付け、必要な金額を明確にして、資金を集めます。融資は、申請から実行まで時間を要します。また、すべてを融資で賄えるわけではありません。その場合は、手元にある現金化しやすいもの、例えば、定期預金・積金、経営者の個人資金、小規模企業共済や生損保の貸付制度、カードローンなどの方法を検討しましょう。
【支払いの優先順位】
①支払手形の期日支払い
②従業員の給料
③仕入代金(買掛金)の支払い
④家賃・水道光熱費・保険料などの毎月の支払経費
⑤税金・社会保険料
⑥借入金の利息や元本返済
月末の支払いを乗り切ったら、今後の資金繰り対策について、融資、助成金、必要資金の用途、資金化できるまでのスピードを考えて調達しましょう。
定期同額給与の役員給与は、期首から3か月以内の通常改定を除いて、期中に改定した場合は、原則としてその一部が損金に認められません。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大といった想定外の事情によって、経営状況が著しく悪化したとき、役員給与の減額改定を行うケースがあります。このような場合、税務上は、業績悪化事由として認められます。業績悪化事由とは、経営が危機に瀕している場合、役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ、客観的な状況から今後の経営の見通しが著しく悪化することが避けられない場合などが該当します。
中小企業の融資では、経営者が個人保証を付けることが慣行になっており、それが重荷となって、新事業展開、事業承継、事業再建などが進まないといった弊害がありました。平成26年に、金融機関に個人保証を求めない融資を促す「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、すでに一部で経営者保証のない融資が行われています。
同ガイドラインでは、中小企業が ①会社と経営者の関係を明確に区分・分離する、②財務基盤を強化する、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示、に対応することで、金融機関の判断によって、経営者保証が求められない場合があります。
月次決算には、次のような役割があります。
(1)毎月の業績をいち早く把握できる。また、急激な経営環境の変化があっても、影響の予測や資金繰り対策などにも素早く対応できる。
(2)粗利益率、資産、負債の増減を確認できる。
(3)月次決算の数値を前年同月、前月、予算と比較することで、良いときは業績拡大のヒントとし、悪いときは早めの対応をとることができる。
(4)月次決算のデータを金融機関に開示・説明することで、金融機関からの評価を高めることができる。
令和2年4月1日施行の改正民法では、債権の消滅時効が改正されました。改正前は、債権の消滅時効を10年、短期消滅時効として宿泊料・飲食代金を1年、製造業・小売業の売掛債権を2年、建築請負工事代金を3年などと職業別に規定していました。
改正民法では、これらの短期消滅時効と商法における商行為の時効5年を併せて廃止し、消滅時効を次のように統一して、いずれか早いほうが経過した時に時効となります。
①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年
②債権者が行使することができる時から10年
民法の改正を機に、売掛金管理体制を再確認し、未回収のまま長期間放置することがないようにしましょう。
事業を進めるうえで、社長の経営方針を文書化し、それを数値計画にして説明することで、従業員も行動が起こしやすくなります。
「先のことはわからないので経営計画を作ってもムダ」と考えている経営者もいるかもしれませんが、今後1年間の売上がどうなるかはわからないとしても、1年間にかかる人件費などの固定費、借入金の年間返済額などは予測することができます。それらの年間支出額を限界利益率(粗利益率)で除すれば、概算の必要売上高を求めることができ、これを来期の目標売上高の目安にすることができます。
厳しい経営環境の中、自社の固定費を上回る限界利益(粗利益)を稼ぐには、経営計画によって会社全体のベクトルを合わせることが大切です。
令和2年度税制改正では、5G(第5世代移動通信システム)をインフラとして早期・集中的に整備するため、5G設備への投資について特別償却(取得価額30%)又は税額控除(取得価額の15%)ができる税制が創設されました。この税制では、地域の企業や自治体等が、地域の産業やニーズに応じて限定的なエリアで行う「ローカル5G」への設備投資も対象です。
特にローカル5Gは、人手不足や高齢化、地域経済の低迷などの課題解決の一つとして次のような活用が期待されています。
〇小売業:店舗と倉庫を瞬時に直結した在庫管理や電子決済によって人手不足を解消する。
〇建設業:遠隔からの作業指示、建機の遠隔操作・自動操縦によって現場の作業が変わる。
〇製造業:遠隔・自動制御による製造・品質管理などで人手不足でも生産性向上が図れる。
従業員に法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えての労働や法定休日に労働をさせるには、従業員との間で労働基準法第36条に基づく協定(通称36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
また4月から、中小企業にも残業の上限規制が適用となり、今後、「36協定」を締結しても、残業時間は、原則として「月45時間・年360時間」を超えることができません。「特別条項付きの36協定」を締結すれば、「月45時間・年360時間」を超えて残業させることが可能ですが、具体的な事由とともに年720時間以下などの上限があります。
業務の繁閑、季節変動等により「1日8時間、1週40時間」の原則が馴染まない企業には、変形労働時間制などを採用する方法もあります。
決算業務をスムーズに進めるには、売掛債権、たな卸資産、固定資産などについて決算日までに確認しておく事項がありますが、本年は消費税率引き上げ後はじめての決算なので、まずは消費税処理の再確認をしましょう。
〇9月30日以前に販売した商品の返品処理時の消費税率を再確認する。
〇10%と軽減税率が混在する経費取引の適用税率を再確認する。
〇滞留債権・不良在庫への対応、不良在庫の処分などを検討する。
〇今期に取得した固定資産が、実際に事業のために稼働しているかを確認する。
〇仮払金・立替金を必ず精算する。
4月1日施行の改正民法では、不動産賃貸契約における原状回復義務や敷金、債務の保証のルールが変わります。
〇通常の使用によって生じた損耗や経年変化については、借り手に原状回復義務がないことが法律上明確になります。
〇敷金については、敷金の概念やその返還についても明確になります。
〇借り手に個人の保証人を求める場合には、「極度額」を定めることが必須となります。
4月から、中小企業にも改正労働基準法における残業の上限規制が適用されます。まずは法令が定める労働時間、休日、時間外労働(残業)について正しく理解しましょう。
〇法定労働時間:原則として1日8時間・1週40時間以内を超えてはいけない。
〇法定休日:1週間に1日又は4週を通じて4日以上与えなければならない。
〇残業時間:法定労働時間を超えて働かせると法定外時間外労働(残業)となる。
〇割増賃金:法定労働時間を超える残業には一定の割増賃金の支払いが必要になる。
経営計画は、社長が経営の良否を判断する基準となるものですが、「計画通りにならない」から意味がないとお考えの社長もいると思います。
まずは「基本方針」「商品・サービス」「得意先・顧客」「販売促進」「新商品・新事業開発」「内部体制」などについて、社長の頭の中にあるプランを書き出してみましょう。
社長の想い(経営理念)を経営方針に落とし込み、数値計画とともに経営計画をつくることで「生きた経営計画」として活用できるはずです。
金融庁が金融機関を指導する際の手引書「金融検査マニュアル」が廃止されます。これによって、これまでの「担保・保証」「財務の健全性」「資産査定(格付け)」を重視した金融機関の融資姿勢から、今後、「事業内容」「将来の見通しや経営計画」「決算書に表れない非財務情報」を評価する姿勢に変わることが期待され、特に短期継続融資の増加が見込まれます。
今後、金融機関は融資先企業の事業内容、将来性などを評価するための情報収集が重要になります。中小企業においては、経営計画、決算書や毎月の試算表を金融機関に提出するとともに、社長自身が自社の状況、経営に方向性を正しく伝えることが重要になります。
個人事業者はもとより、会社経営者やサラリーマンなどの給与所得者で年末調整によって確定申告が不要な人であっても、次のような所得(収入)があれば、所得税の確定申告が必要な場合があります。
○役員が会社に賃貸している不動産の賃貸料や会社への貸付金の利息
○生命保険会社等から受け取った満期保険金や解約返戻金
○上場株式等の譲渡や配当による収益などで一定のもの
○不動産や金などの売却収入
○個人事業者の自家消費と税抜経理を採用している場合の益税
○預かった敷金と保証金の償却
経営理念は、創業者や経営者の考え方を明文化したもので、企業活動において守るべきポリシーです。そんな経営理念を変えることや、新たに作ることで、会社を大きく発展させることもあります。
事例1では、創業120年の白アリ防除会社が発想を転換し、自らの事業を「住環境を育む会社」として経営理念を変えることで、メンテナンス、リフォーム、耐震補強など幅広く事業展開した例を紹介しています。
事例2では、地元住民のいわれのない反対運動で窮地に陥った産廃業者が、「脱・産廃」を掲げ、新たに経営理念を作成し、資源再生会社となって、今や再資源化率98%を達成するリサイクル事業者へと変貌し、里山を育てるまでになった例を紹介しています。
競争条件の不利な会社は、資金や人の配分を効率的に活用することが必要です。また、社長の労働時間は大きな影響を及ぼします。
弱者の戦略⑪「軽装備に徹し、動きの速い会社を目指せ」。資金は、預金、売掛金、在庫、機械・設備、土地・建物、車両運搬具などに配分されていますが、重要性が高いものに多く、低いものは少なく配分することで、競争力が強くなります。
弱者の戦略⑫「社長は競争相手よりも多く仕事せよ」。競争相手よりも業績を良くするためには「社長の実力」(仕事時間の2乗×質)を高める必要があり、仕事時間として年間3,200時間働くこと、経営戦略の研究に力を入れて質を高めることを指摘しています。
令和2年分の所得税から、給与所得控除・基礎控除の控除額や上限額の見直しが行われ、年収850万円を超える人は税負担が増えます。一方で、個人事業者や請負など給与所得でない人のうち合計所得金額が2,400万円以下の人は、基礎控除の見直しにより税負担が軽減されます。
令和2年10月以降の年末調整から手続きが電子化され、保険料控除証明書や保険料控除申告書など年末調整関係書類の「従業員から会社へ」の流れが電子データでできるようになります。
昨年の年末調整では、配偶者控除等の改正に伴い、従来の申告書が「配偶者控除等申告書」に改められたうえ、これまで提出が不要だった配偶者控除を受ける人についても、新たに提出が必要になりました。そのため、申告書の記載にあたって「所得の見積額」の誤りや、記載すべき金額が分からないといった声がありました。
年収が給与のみであれば、年収の見込額から給与所得控除額を控除した金額が「所得の見積額」になります。年収の見込額は、例えば、既に11月までの給与(賞与を含む)を受給している場合は、1~11月までの課税支給額を合計し、さらに12月に支給される予定の給与を見積もって合計します。次に「配偶者控除等申告書」(裏面)に掲載された「給与所得金額の計算方法」の表に年収の見込額を当てはめれば、所得の見積額が分かります。
貸借対照表(B/S)から、会社の健全度を見ることができます。
B/Sを人の体にたとえると、流動資産(特に現金預金)や純資産(自己資本)が大きく、不良債権や不良在庫、不要な機械設備、含み損を抱える資産のない状態が健康体といえます。
反対に、流動負債が多く自己資本が少ない状態は肥満体といえます。このような企業は、赤字続きのため不良な資産を処分できず、肥満体から抜け出せない状態にあります。肥満状態を解消するためには、黒字経営を実践することが何よりも重要になります。
小規模1位や部分1位を目指すには、重点とする商品・サービス、営業地域を決めて、営業活動を効果的に行う必要があります。
弱者の戦略⑨「新規顧客の開拓に力を入れよ」は、新規顧客を増やすためには、見込み客を見つける必要があり、そのための「訪問、ホームページ、ダイレクトメール、広告、看板、チラシなど」の手法が効果的に行われているかを点検する必要性を指摘しています。
弱者の戦略⑩「積極的な顧客対応を欠かすな」においては、競争相手よりも「顧客から好かれ、気に入られ、忘れられない」ための方策を実行することが必要です。例えば、取引高が多い会社に頻繁に訪問できているか、小売業・飲食業では、顧客リストを作成し、案内はがきを送るなど、自分にあった営業方法ができているかを確認してみましょう。
「○○円の壁といわれる税金・社会保険の扶養家族の範囲」について、従業員の人たちが気になる時期になりました。「収入と所得の違い」を含め、早めに情報発信しましょう。
「収入」とは、給与収入(賞与含む)のみであれば、給与の手取額ではなく、源泉徴収や社会保険料等を差し引く前の支給額のことで、「所得」とは、収入から給与所得控除を差し引いた額です。
例えば、夫がサラリーマン(正社員)で、妻がパートで働く夫婦共働きの場合、次の点について伝えましょう
①103万円の壁:妻は所得税が課税されず、夫は配偶者控除を受けられる。
②130万円の壁:夫の扶養範囲からはずれ、妻に社会保険の加入義務が生じる。
消費税率10%への引上げによって、税率は2%の引上げでも、納税額は25%の増加になります。軽減税率の導入に伴い、例えば外食業のように、主に飲食の提供による売上が10%、原材料(飲食料品)の仕入時の税率が8%になる場合、25%以上の増加になるため注意が必要です。
予定納税額は、税率8%を基準としているため、税率引上げ後の確定納税額が予定納税額より大きくなると予想されるため、納税額に慌てることのないように注意しましょう。
中小企業が商品・サービスを効率的、効果的に販売するためには、重点的に販売する営業地域を決める必要があります。
弱者の戦略⑨「市場規模が小さな地域に力を入れよ」は、地方にみられる海、山、川などによって地形的に分断された独立性の強い小さな地域、都市部であれば、高速道路や鉄道、川などによって地域から分断されている地域など、地域1位になりやすい地域です。
弱者の戦略⑩「営業地域の範囲を狭くせよ」は、中小企業は営業地域を狭くして、さらにその中に重点地域を決めて、まずはそこで1位を目ざします。そこで、1位になれば、次の重点地域を決めて、そこで1位を目ざすことを繰り返すことで、営業地域全体で1位になれるとしています。
企業が滞りなく借入金を返済していても、なぜ金融機関は、毎年、決算書の提出を求めるのでしょうか。それは、金融機関の主要資産が融資先企業への貸出金だからです。
金融機関は、貸出金が企業の事業活動に正しく使われ、きちんと返済されるかを決算書によって確認することで、自行の資産保全を図っているわけです。また、融資先の財務データを常に把握できれば、追加融資や業績向上支援に即座に対応が可能になります。
企業は、積極的に金融機関へ、決算書や月次試算表を提供し、金融機関との対話を深めることで、信頼性が高まります。
取引や請求期間が10月1日をまたぐ場合、適用する消費税率に注意しましょう。
①保守サービス料金は、請求期間が10月1日以後にまたがる場合は税率10%
②10月分の家賃は9月末に支払っても税率10%
③通常のリース(所有権移転外ファイナンスリース)は、9月30日までに物件の引き渡しがあれば税率8%
④電気、ガス、水道料金などは、10月中の料金確定分までは8%
⑤出張旅費は、日当、交通費、旅費のそれぞれの消費税率に注意
中小企業が売上・利益を拡大するには、小さな市場であっても、自社の商品・サービスにおいて、市場占有率が1位になれる商品をつくることです。そして、1位の優位性を高めていくことで、売上、利益の拡大につながっていきます。
弱者の戦略⑤「市場規模が小さな商品に力を入れよ」は、市場規模が小さい商品だけでなく、特徴がある、強い競争相手がいない、同業者が見落としている、大企業が手を出さない、などの商品もあてはまります。
弱者の戦略⑥は「商品の範囲を狭くし、経営力の分散を避けよ」です。競争条件の不利な会社が、商品・業種、営業地域や、業界・客層を広げすぎると、経営力が分散して、かえって業績を悪くします。いかに、経営力を集させることができるかが大事になります。
10月からの消費税率引上げと軽減税率の導入によって、10月1日以後暫くの間は、取引や請求業務において新旧の消費税率が混在するため、誤りが起こりやすくなります。誤りをなくすため、9月末までに経理上の準備をしておきましょう。
①売上において、出荷から納品・検収までの期間が10月1日をまたぐ場合、売上計上基準の違いによって、適用する消費税率が異なります。得意先と打ち合わせをした上で、社内で情報を共有化しましょう。
②「20日締め」請求などの場合は、売上計上基準に基づき9月末までの取引を一旦集計し、8%が適用されるものを区分しておきましょう。
③仕入先に対して、9月30日までの請求分と10月1日以後の請求分とを分けて請求書の発行をお願いするなどの対応をしましょう。
小売店や飲食店が、市販や自社製作の「手書きの領収書」を発行しているときは、10月1日以後は領収書の記載事項に注意が必要です。
①売上のすべてが10%である事業者が発行する領収書については、従来どおりの記載でも問題はありません。
②売上のすべてが8%(軽減税率対象品目)となる事業者が発行する領収書については、従来通りの記載に加えて「全商品が軽減税率対象」という記載が必要になります。
③10%と軽減税率対象品目がある事業者の領収書については、但し書き欄に「品目名」を書く際、それが軽減税率対象品目であれば「品目名(軽減税率対象)」の記載とともに、軽減税率対象品目の税込合計金額の記載が必要です。
中小企業は、大企業と同じような商品・サービス、営業方法では太刀打ちできないため、大企業とは異なった考え方による差別化が必要です。
弱者の戦略③は「弱者は、強い会社とは異なった経営の差別化に力を入れよ」です。これは、商品、地域、業界と客層などのどれを差別化するかを明確にして、そこでどのように差別化するかを検討することが必要です。
弱者の戦略④には「弱者は1位づくりの目標に対し、経営力を集中投入せよ」があります。これは、商品、営業地域、客層において「小規模1位」や「部分1位」を目指すには、目標を一つに絞り、そこに経営力を集中投入しなければ、競争条件の不利な会社は、小規模1位を獲得できないことを示したものです。
10月から、「キャッシュレス・消費者還元事業」が始まります。この制度は、対象店舗でキャッシュレス決済をした消費者に購入金額の5%(フランチャイズ傘下の中小企業は2%)をポイント還元する制度です。中小企業には、ポイント発行や端末導入費用の負担はなく、期間中は手数料が引き下げられるなど参加しやすい仕組みになっています。
今後、キャッシュレス決済の対応店かどうかは、店選びの基準の一つになると予想されます。制度を契機にキャッシュレス決済のメリット・デメリットを確認し、戦略的な検討が必要になります。
軽減税率制度導入に伴い、仕入税額控除の方式として、区分記載請求書等保存方式が導入され、請求書等の記載事項として「売上に軽減税率対象の品目がある場合はその旨」「税率ごとの合計額」が追加されます。4年後には、適格請求書保存方式となり、さらに「発行事業者の登録番号」「税率ごとの対価の合計額(税込又は税抜)と適用税率」「税率ごとの消費税額(合計)」が記載事項に追加されます。2段階での対応が必要になりますが、最初から適格請求書に対応した様式も認められます。
レジや請求書発行システムのほとんどは、適格請求書に対応した改修が行われているようですが、自社の様式を確認しましょう。独自様式による請求書を使用している場合は、4年後を見越した様式変更か、最低限、区分記載請求書に対応させるかを検討しましょう。
競争条件の不利な会社は、ランチェスターの第1法則を応用して、目標を定め、運営します。大企業と同じ戦略では勝てないからです。
弱者の戦略①には「弱者の社長は1位づくりに強い願望を持て」があります。これは、商品、営業地域、顧客層において、将来1位になれそうな市場で勝負することです。どのような市場であれ、1位になることが重要なことです。
弱者の戦略②は「弱者は自社より大きな会社を攻撃しない」です。経営に競争は付き物ですが、小さな会社が自分より大きな会社を攻撃目標にすると、結果は惨憺たるものです。社長が強気だと、大きな相手を攻撃目標にしがちなので、用心しましょう。
主な改正点として「贈与税の配偶者控除の特例による居住用不動産の持戻しの免除」があります。税制上の特例を使って配偶者に生前贈与された不動産について、改正前は配偶者の特別受益として、相続時にその不動産価格が遺産に加算(持戻し)されていましたが、改正法では、持戻しを免除する規定が設けられ、税法との食い違いが解消し、配偶者の老後の生活保障という被相続人の意思が尊重されることになります。
そのほか、遺産分割前における預貯金の一定の範囲内での払戻し、被相続人の生前に無償で療養・介護に尽くした相続人以外の親族(長男の妻など)の貢献度に応じた金銭の請求権の創設、遺留分権利者の権利侵害における請求権を原則として金銭請求とする改正が行われました。
消費増税に伴い、新たな販売価格の表示が必要となります。小売業や飲食業など消費者と取引する(BtoC)事業者は、総額(税込)表示が原則ですが、値上げと誤認されたくないなど事業者の事情に配慮して、総額表示と誤解されない措置をとれば、税抜価格による表示が認められます(令和3年3月末まで)。
事業者間取引(BtoB)においては、総額表示義務はありませんが、契約書等の消費税額についての記載を見直すことが必要です。取引先に確認し、整備しましょう。
免税事業者については、仕入にかかる消費税相当額を織り込んだ価格設定をしたうえで、価格表示をしましょう。
ランチェスター法則には、競争条件の有利な企業が実践する「強者の戦略」と競争条件の不利な企業が実践する「弱者の戦略」があります。中小企業は、弱者の戦略で経営すべきですが、敵を知る意味で「強者の戦略」を知る必要があります。
強者は、まず商品や地域において総合1位になることを目ざし、さらに2位以下の企業の追随を許さないように、大きな資本力を使った戦略をとります。
商品であれば商品の種類を増やし、営業地域であれば多数の支店や営業所、販売担当者を配置して市場の範囲を広げます。弱者が新製品を出せば、直ちに同様の商品を販売します。地域市場のカバー率を高め、マス広告を利用して知名度を上げる。このような戦略を実行できるのは、わずか0.5%しか存在しません。
会社のエネルギー源である顧客を出発点として、①商品、②地域、③業界と客層、④営業、⑤顧客維持、⑥組織、⑦資金と経費という経営を構成する要素に対して、どのような戦略を立てるかが重要です。その手掛かりとなるのがランチェスター法則です。元々戦闘における力関係を表したこの法則は、刀や槍などによる接近戦・一騎討ち戦で成立する「第一法則」と、銃や戦車など射程距離が長い兵器を使い、双方が離れて戦うときに成立する「第2法則」があり、それが経営に応用され、競争条件が有利な会社だけが実行できる「強者の戦略」と競争条件が不利な会社が実行すべき「弱者の戦略」という2つの戦略へと発展しました。
中小企業が、業績を伸ばすには、強者の戦略で経営しても上手くいきません。中小企業は、弱者の戦略で戦う必要があります。
10月からの消費税率引上げにあたり、2%の増税分を販売価格に転嫁しなければ、自社が増税分を負担することになり、売上や利益が減少し、資金繰りに悪影響を及ぼします。
消費者との取引(BtoC)においては、価格転嫁にあたり、経営判断に基づいて、税率引上げ前に需要に応じて値上げするなどの価格設定は、事業者の自由であって何ら問題はありません。また、一律に転嫁する必要はなく、競合や市場動向などの事情を考慮して、個々に販売価格を見直すことにより、商品全体で増税分を転嫁してもよいとされています。
事業者間取引(BtoC)では、消費税転嫁対策特別措置法によって、仕入先への減額要求や買いたたきなどが禁止されています。
貸借対照表を前期と比較して、資産や負債に大きな増減がある場合に、その理由を金融機関から問われたとき、社長自身が説明していますか。社長は、現金預金、売上債権、買入債務、たな卸資産、固定資産、借入金などの主要項目の増減する要因についての理解を深めましょう。
社長自身が決算書をもとに、実績と資産・負債の増減理由とその対応を説明し、さらに事業計画書をもとに今後の見通しを説明できれば、金融機関からの信頼性が高まります。
環境変化の激しい時代の経営の舵取りには、社長自身が会計数値から自社の課題に気づいて、対策に取り組むことが求められています。
セールスでは、「コーヒー1杯分の料金で~ができます」といったトークがよく使われます。これは「コーヒー1杯」という身近な小さい単位に置き換えることで、相手がイメージしやすくなるためです。
例えば、来期の目標売上を今期から400万円アップして、4,000万円とする計画を立て、具体的な行動計画に落とし込む際、400万円という数字だと漠然として、一見、無理なように思えます。ところが、「コーヒー1杯」と同じように、「1か月あたりの売上をあと〇〇万円増やす」「1日あたりの売上を〇万円にできれば、目標に届く」「1日の来客数をあと〇人増やせばいい」というように考えてみると、現場レベルで実践できる行動やアイデアを具体的な行動計画に落とし込みやすくなります。
消費税の納税額は、「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入れ等に係る消費税額」を差し引いて計算します。原則的な計算方法(本則課税)では、課税、非課税、不課税のいずれかに取引を分類し、それぞれ集計して、課税売上、課税仕入れ等を求め、納税額を計算します。
本則課税では、課税仕入れを、課税売上高に対応するもの、非課税売上高に対応するもの、両方に対応するもの等、その内容によって区分する個別対応方式と、課税仕入れの区分を要しない一括比例配分方式があり、それぞれの計算方法の違いから、納税額に差異が生じます。
消費税の計算について、どちらの方法が良いかを判断するためには、課税仕入れについて、内容別に区分する必要があります。そのため、日々の会計処理において、請求書等に基づき正しく区分を記載し、月次決算を行い、早い段階で消費税の納税額の判定を行える体制を整えましょう。
個人事業者の高齢化が急速に進むなか、法人向けの特例事業承継税制に続いて、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
この制度は、後継者が一定の事業用資産(土地、建物、機械、器具備品、車両運搬具、生物など)を承継する際、それらに係る相続税や贈与税の全額を納税猶予することで、後継者の負担を軽減し、事業承継を進めやすくしようというものです。
手続きは、2024年3月末日までの5年以内に、認定経営革新支援機関の指導・助言を受けて「承継計画」を作成し、都道府県に提出し、2028年12月末日までに実際に相続又は贈与を行います。
納税猶予された税額は、後継者が亡くなるまで、承継した資産を保有し、事業を続ければ、納税が免除されます。
事業主(経営者)は、例えば、残業時間(残業代)を算定するには、必然的に従業員の労働時間の状況を正しく把握しなければなりませんが、労働基準法上は明文化されていませんでした。しかし、長時間労働の是正などを柱とする働き方改革関連法のなかで、労働安全衛生法が改正され、労働時間の状況を把握する義務が明文化されました。
罰則はありませんが、労働基準法と合わせて、経営者の責務がより明確化されました。
労働時間の状況の把握方法は、具体的には、次の方法によります。
①使用者が、自ら現認することにより確認する。
②タイムカード、ICカード、パソコン使用時間の記録等を基礎として確認し、適正に記録する。
消費税の軽減税率の実施に伴い、複数税率に対応したレジの導入や電子的受発注システムの改修が必要となる中小事業者を対象に、その費用の一部を補助する「軽減税率対策補助金」があります。
本年から制度が拡充され、新たに「区分記載請求書等保存方式」に対応したシステムの改修・機器の導入の費用が補助対象となったほか、補助率の引き上げ(3分の2から4分の3)や、対象業種の追加(旅館・ホテル等の一部)が行われました。
申請は、事業者自身が行う場合は、9月30日までに導入・改修、支払いを完了し、12月16日までに申請します(事後申請)。あるいは、改修等を指定事業者に依頼する場合は、6月28日までに交付申請を行います。
一般に、取引は掛け(掛売上、掛仕入)で行われるため、売上の増加に伴って売掛金も増加し、売上の増加に先行して仕入れも増え、買掛金も増加します。通常は、売掛金の回収と仕入れ・販管費の支払いのサイトにズレがあるため、利益と資金は一致しなくなります。帳簿上は利益が計上されていても、資金が残っているとは限りません。 売上が急激に伸びたときは、仕入も急増しますから、資金繰りが厳しくなります。
反対に、売上が急に落ち込んだときは、仕入の減少とともに買掛金が減少し、さらに売上が順調な時の売掛金が回収されることから、一時的に資金繰りが良くなることがあります。これを「業績が良い」と錯覚すると、落ち込みへの対応が遅れることがあります。
自社の財産の中には、財務体質を悪化させるものがあります。一般に、業績の悪い企業ほど、売掛金、在庫、固定資産、仮払金や会社と役員間の貸し借りが多い傾向にあります。
①未回収のまま滞留している売掛金は、再請求書や督促状を相手方に送付し、債権があれば、その回収可能性を検討しましょう。
②もう売れない商品、処分すべき商品が長期間残っていれば、セールや廃棄などで処分します。
③使用していない固定資産(機械装置など)は、除却や売却を検討しましょう。
④未精算の仮払金はすぐに精算し、貸借対照表に残高を残さないようにします。
自社の財産を洗い出し、無駄なものが決算までに整理し、スリム化をはかりましょう。
10月1日からの消費税率が10%に引き上げられますが、一定の取引については、3月31日までの契約であれば、10月1日以後の引渡しであっても、8%の税率が適用される経過措置があります。
主なものに、建設工事や大型機械の製造請負(受注生産)や家賃、リースのほか、冠婚葬祭互助会の契約、新聞、テレビ、チラシ、カタログ、インターネット等による通信販売(通信教育や電子書籍の配信等を含む)、有料老人ホームの入居一時金などがあります。適用要件を確認し、駆け込み需要を取り込みましょう。
4月から、年10日以上の有給休暇(有休)の取得の権利がある従業員に対して、会社はそのうち5日分について有給休暇を取得させることが義務化されます。
取得させる方法には、従業員ごとの有休消化日数を把握し、消化日数が5日未満であれば、会社が有休の取得日を指定する方法(個別指定方式)のほか、会社が計画的に有休取得日を指定する方法(計画的付与制度の導入)があります。
計画的付与制度は、企業の実情に合わせて、①全社一斉に特定の日を有休にする、②部署、部門、営業所単位で有休をとる、③夏季(盆)、年末年始、ゴールデンウィークなどに合わせて、従業員一人ひとりの有休取得日をあらかじめ決める、などの方法があります。
いずれの方法も、5日分の有休の義務化について、従業員自らが有休を取得した日数、計画的付与制度によって取得させた日数分は、義務化の5日分から除かれます。
AI技術の進展、人口減少、商圏の変化、取引先・競合他社の動向など外部環境が急速に変化する中、その変化を「機会」と「脅威」の視点から洗い出し、そこから抽出した外部環境を見ながら、さらに内部要因として、自社の「強み」「弱み」を洗い出しましょう。
そのための手法がSWOT分析で、次4つの視点を可視化し、検討材料を明らかにします。
「機会」…市場・消費の動向、商品の需要を整理し、様々なビジネスチャンスを検討する。
「脅威」…自社の努力ではどうにもできない外部環境のマイナス要因を整理する。
「強み」…同業他社と比較して、具体的に「機会」に活かせる強みを考える。
「弱み」…成長発展や改革のネックとなる点を整理する。
これまで成立していたビジネスが成り立たなくなる前に、外部環境をきちんと捉え、自社の経営を再確認してみましょう。
消費税の軽減税率が導入されると、取引ごとに適用される税率(10%と8%)を区分経理する必要があり、現在の請求書の記載事項に新たな事項を追加する必要があります。
①2019年10月1日からは、簡易な措置として、現行の請求書の記載事項に「軽減税率の対象品目である場合はその旨」「税率ごとに合計した対価の額(税込)」を追加した「区分記載請求書等保存方式」が導入されます。
②2023年10月1日からは、「適格請求書等保存方式」(インボイス)が導入され、請求書の記載事項に、さらに「発行事業者の登録番号」「税率ごとに合計した対価の額(税込又は税抜)及び適用税率」「税率ごとに合計した消費税額」が追加されます。
平成30年分の所得税の確定申告期間は、2月18日(月)~3月15日(金)です。
●個人事業者は、事業収入(事業上の売上、商品の自家消費や贈与、従業員への貸付利子、仕入割引、作業くずの売却代金など)と、必要経費(販売した商品の仕入代金、広告宣伝費、従業員給与、水道光熱費など事業に必要な経費)を正しく計算し、所得を算定します。
店舗併用住宅の家賃や水道光熱費など、事業上の経費と家事費が混在する費用(家事関連費)は、事業上必要な部分が明らかで、合理的に按分できる場合は、事業に必要な部分については、必要経費として認められます。
●サラリーマンなどの給与所得者の大半は、確定申告の必要はありませんが、医療費控除や雑損控除、上場株式の譲渡損の繰越しの適用を受ける場合や、ネットでの収入、生命保険の一時金など給与以外の所得がある場合には、確定申告が必要です。
経営学者のP.F.ドラッカーは、「利益」には3つの役割があるといいます。
第1は「事業の妥当性を評価する役割」であり、自分たちの仕事ぶりを表す指標の一つになります。
第2は「事業活動における様々なリスクをカバーする役割」であり、将来の不確実なリスクに備えるためには、キャッシュを増やすことが必要です。
第3は「資金調達手段としての役割」であり、利益は投資資金の源泉となり、融資の際の定量的な評価の一因になります。
会社は、目指す目標を実現するためにコストを十分に賄えるだけの利益を生み出す活動に力を入れなければなりません。
消費税率10%への引き上げと同時に、飲食料品等を対象にした8%の軽減税率制度が導入されます。軽減税率は、飲食業や小売業、食品卸や食品製造業など飲食料品を販売する事業者だけでなく、すべての事業者に影響します。
飲食料品を販売する事業者は、請求書やレシートを発行する際に、8%と10%の税率ごとに区分した記載をしなければなりません。
飲食料品の販売がない事業者は、仕入、販売には10%の税率が適用されますが、経費として飲食料品を購入する場合には、8%の税率が適用されるため、帳簿への記帳にあたっては、税率ごとに区分しなければなりません。
改正消費税への対応には、時間をかけて準備する必要があります。早めに取り掛かりましょう。
平成30年7月成立の改正民法(相続法)において、自筆証書遺言の作成要件が緩和され、1月13日から施行されます。
これまで、自筆証書遺言の作成は、全文が自書でなければならず、作成時の負担は相当のものでした。改正によって、添付する財産目録については、パソコンでの作成や通帳のコピー、登記事項証明書など、自書でないものが認められ、作成時の負担軽減が図られます(ただし、全頁に署名・押印が必要です)。
遺言書の保管時における紛失、廃棄、改ざん、隠匿や相続を巡る争いを防止するため、法務局において自筆証書遺言を保管する制度が創設されます(2020年7月10日施行)。
改正によって、自筆証書遺言の作成、保管が容易になることで、遺言書を活用した相続対策が期待されます。
2019年10月1日から、消費税率が8%から10%へ引上げられます。賃貸借、リース、請負契約などで一定の契約については、10月1日以降の引き渡し等であっても、8%の税率が適用される経過措置があります。
○店舗や工場などの賃貸借やリース契約(資産の譲渡によるものを除く)は、2019年3月31日までに契約し、9月30日までに貸付けが開始されれば、10月1日以降も8%の税率が適用されます。
○請負契約の工事代金は、原則として引渡し時の消費税率が適用されますが、3月31日までの契約であれば、10月1日以降の引渡しであっても、8%の税率が適用されます。
配偶者控除及び配偶者特別控除等の大幅な見直しによって、今年の年末調整では、次の3点に注意が必要です。
①従来の「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が、「保険料控除申告書」と配偶者控除等申告書」の2枚に分かれました。
②配偶者控除又は配偶者特別控除のいずれかの適用を受けるには、「配偶者控除等申告書」の提出が必要です。配偶者控除を受ける場合、昨年までは提出が不要だったため、提出もれに注意しましょう。
③新様式の「配偶者控除等申告書」には、給与所得者本人とその配偶者の本年中の「所得の見積額」と、「所得の区分判定」を記載します。
自社株式の中に名義株はないでしょうか。オーナー企業であっても、経営者が自社株式を100%保有しているとは限りません。会社設立時に、創業者が100%出資していても、家族、親戚、友人、従業員から株主として名義を借りたままになっていることがあります。
名義株は、税務上、実質的な所有者である経営者の相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。経営面では、名義株主から株式配当金の支払いや買取りを請求される可能性もあります。
事業承継に取り組む前に、名義株の有無を確認し、本来の株主の状態にすることが事業承継のスタートラインです。それから、具体的な事業承継計画を立てて、その過程で特例事業承継税制の適用の可否を検討しましょう。
機械や建物の外装塗装、壁紙・床材の張り替え、車両の修理、ソフトのバーションアップなどの費用は、「修繕費」として支出した年度の経費にできるか、あるいは「資本的支出」として資産計上しなければならないか、税務上の判断が必要になります。その修理の内容が、固定資産の通常の維持管理、原状回復であれば、その費用の金額の大きさにかかわらず「修繕費」になります。
建物の修繕工事の内容、機械設備の高性能化などによって、耐用年数が延びるなど、固定資産の価値や性能・耐久性を向上させる修理・改良であれば「資本的支出」として固定資産に計上します。
事業年度の上半期の終了点は、期末の決算に向けての折り返し点になります。半期の実績数値をもとに業績比較を行いましょう。
損益計算書は、売上や利益、仕入、販管費の前期比較を行い、増減の要因について、例えば、得意先・製品・担当者別に売上を見る、仕入や製造原価は、単価の上昇、材料使用量、不良・ロスの増加の有無を確認する、など具体的に調べてみましょう。接待交際費や販売促進費、広告費の増加は、本当に必要な支出なのかを検討することも必要です。
貸借対照表は期首比較を行い、損益計算書の利益の増加に見合う現金預金の増加がない場合、その要因は、売掛金や在庫の増加、固定資産の購入や借入金の返済なのかを確認します。損失の場合は、どのように資金調達が行われたのか、短期借入金や仕入債務の増加を確認しましょう。
高齢社会の進展を踏まえ、残された配偶者の生活基盤の安定を図ることを主とした民法(相続法)の大幅な改正が行われました(平成30年7月13日公布)。
改正では「配偶者居住権」が創設され、夫婦で住んでいた住居を配偶者以外の相続人が相続しても、残された配偶者がそのまま住み続けることができるようになりました。また、従来、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、配偶者へ住居を生前贈与した場合には、遺産の先渡しとみなされ、遺産分割の際に、特別受益の持ち戻しが行われ、配偶者の取得財産が少なくなっていました。改正では、遺産の先渡しを受けたという取扱いをなくし、配偶者により多くの財産を残せるようになりました。
自然災害によって法人や個人が被害を受けた場合、税制上の支援があります。法人の場合、復旧費用を修繕費として損金処理することが認められるほか、災害によって生じた損失による欠損金額の繰越控除や繰戻し還付が受けられます。個人の場合は、住宅や家財の損害について、所得税の雑損控除などが受けられます。
被災した取引先や被災地を支援する場合にも優遇措置があります。法人が贈った取引先への災害見舞金や救援物資などは全額を損金(経費)にすることができます。
個人で義援金などを贈る場合には、その自治体へ直接寄附するか、ふるさと納税を活用すれば、寄附金控除が受けられます。
平成30年6月に、長時間労働の是正を柱とする改正労働基準法等(働き方改革関連法)が成立し、中小企業は2020年4月から施行されます。改正を前に、労働時間と時間外労働(残業)についてのルールを再確認しましょう。
会社が法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて従業員に残業をさせるためには、会社と従業員との間で「時間外労働に関する協定」(通称36協定)を締結し、労基署へ届け出なければなりません。この36協定を締結すれば、原則として年360時間までの残業が認められます。また、繁忙期など、この限度を超えて残業をさせなければならない「特別な事情」がある場合には、「特別条項付の36協定」を締結することで、この限度時間を超えることが認められています。自社の36協定に不備がないか、確認しましょう。
経営には不安がつきものですが、企業が将来に向かって、経営ビジョンや目標を達成する経営計画があれば、そこへ向かって事業に取り組む意欲が湧いてきます。経営計画は、経営者マインドを維持するうえでも大切なものです。
このような、将来の夢や目標を描いた計画のほか、会社が確保すべき利益を積み上げた計画、融資を受けるために自社の現状や将来性をディスクローズした計画、特例事業承継税制や早期経営改善計画などの申請に必要な計画など、経営計画は一つではなく、目的ごとに数種類の計画があっても良いものです。
税務行政のデジタル化に向けた仕組み作り進んでおり、今後10年で、税務申告手続きなどにおいて紙からデジタルへの動きが見通されています。
個人の所得税関係では、年末調整での保険料控除や住宅ローン控除において、控除証明書が電子化され、従業員がネット環境を通じて会社へ提出可能になり、会社の事務負担が軽減されます。医療費控除やふるさと納税などの還付申告を、スマートフォン等からできるようになります。
企業関係では、電子申告が大企業は100%化され、中小企業も将来の100%化に向け、当面は85%化(現行75%)を目指すとしています。消費税税率アップや軽減税率の導入に向け、電子帳簿化が推進されます。
定期同額給与や事前確定届出給与は、原則として、期中に減額した場合、全額又は一部が損金算入を認められません。ただし、役員の地位・役位の変更があった、経営状況が著しく悪化した、役員給与の支給額を決める際に予測できなかった事由があれば、役員給与の減額後も損金算入が認められる場合があります。この場合は、その事由が「やむを得ない事情」かどうかによって判断されます。
役員給与の支給額を決める際には、前年実績、利益計画、借入元本返済を踏まえ、よく検討したうえで、役員給与の額を決めなければなりません。
利用しやすくなり関心の高い特例事業承継税制(特例税制)ですが、適用には、先代経営者、後継者、会社に一定の要件があるため注意が必要です。
先代経営者は、相続等の開始前までに、代表者であったこと、被相続人と同族関係者で議決権株式総数の50%超を保有し、かつ筆頭株主であったことなどが要件で、後継者は、株式の贈与までに代表者であること、役員就任後3年を経過していること、同族関係者のなかで、議決権数の最上位者であること、などが必要です。
会社は、資産管理会社(一定のものを除く)、医療法人、社会福祉法人、風俗営業会社などは適用対象外になるため注意が必要です。
月次決算は、毎月の業績をいち早く掴み、経営に役立てるものですが、月次決算データを経営者だけが利用するのではなく、経営者と社員、金融機関、会計事務所と間で業績を見るための共通語として経営に活かしましょう。
月次決算データを共有化することで、経営者と社員が同じ方向を向いて営業活動に取り組むことができます。金融機関に対しては、経営状況を経営者が説明することで、金融機関からの信頼が高まります。会計事務所との間で、月次決算データを対話ツールとして活用し、的確なアドバイスを受けましょう。
月次決算データを共通語として経営に生かすには、月次決算の早期化と精度の向上が必要になります。そのためには、売上、仕入れを早期に掴む仕組みづくりや経費の月割計上、概算計上などについて、自社に合った経理処理を当事務所とともに検討しましょう。
「働き方改革関連法」は、経営者にとってみれば、労働規制の強化といえます。しかし、中小企業では、労働法規の理解が不十分のまま、雇用についての最低限のルールすら守られていない例が多くあります。
近年、従業員の労働法への意識が高まっており、在職中は何事もなくても、退職後に訴えを起こされる例も決して少なくありません。まずは、会社のルールブックとして、作成義務の有無に関わらず、就業規則を整備しましょう。就業規則は、労務トラブル防止に役立つほか、社員が安心して働けるという効果があります。
要件等が大幅に緩和され、特例事業承継税制(特例税制)が大変利用しやすくなりました。特に、対象株式数の上限が撤廃され、猶予対象の評価割合が贈与、相続ともに100%となったことで、後継者の税負担がゼロになりました。また、雇用確保要件も実質的に撤廃され、要件を満たさなくなっても、認定経営革新等支援機関の意見等があれば猶予が継続されます。
この特例税制の適用を受けるには、平成35年3月末までに、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて「特例承継計画」を作成し、都道府県に提出する必要があります。
中小企業経営者は、融資その他の取引において、保証(連帯保証)を行っている例が少なくありません。経営者の保証(保証債務)は、経営者の死亡によって残された家族(相続人)に承継されます。生前に、家族に知らせないまま保証人になっていたことから、突然、家族に多額の債務の弁済が求められ、財産を失ってしまう例が少なからずあります。
他社や知人・友人の債務を保証している事実があるなら、家族がその事実を確認できるようにしておきましょう。
また、2020年4月施行の改正民法では、安易に知人の保証人になることがないよう公正証書の作成が義務付けられるなど、保証人保護の規定が設けれています。
経営者が、業績をいち早くつかみ、正しい経営判断をするためには、月次決算が不可欠ですが、日々の取引の会計帳簿への記入や仕訳データを入力する目的は、まず、毎日のお金や取引の流れを、もれなく、ありのままに記録することにあります。そして、複式簿記のルールに則って、正しく計算された月次決算資料や決算書は、的確な経営判断の基礎になります。
月次決算の基本は、日々の正しい記帳(記録と計算)と、現金管理、証憑書類の整理保存、発生主義による会計処理にあります。
税務上、損金にできる役員給与の改定は、基本的に、事業年度開始から3か月以内です。
経営者は、自身の役員給与の額を決める際、主観ではなく、あくまでも前年実績、当期の利益計画や業績見込み、1年以内の借入金の返済額などを基礎にして、経営の現状を客観的に捉えて決めましょう。
事前確定届出給与を届けた場合は、実際の支給時期と支給額が、事前の届出内容と完全に一致していなければ、損金算入が認められませんので、注意しましょう。
従業員の業務中や通勤途中における労働災害(労災)については、労災保険から療養費や休業補償が行われます。労災保険か健康保険のどちらが適用されるかが問題となるのは、通勤途中に、本来のルートを外れて、どこかに立ち寄った際に、けが等をした場合です。保育所への送迎や道路工事・渋滞による迂回、日用品の購入、通院、親族の介護などは、通勤途中として労災が適用されます。
本来、経営者は労災に加入できませんが、一定の企業規模以下の中小企業の経営者(その家族従業員・役員を含む)であれば、労災保険へ加入できる特別加入制度があります。
平成30年度は、3年に一度の土地・家屋の固定資産税評価額の評価替えが行われ、固定資産税の税額が見直されます。
家屋については、同じ家屋を再度新築した場合の費用と、築年数に応じた損耗を考慮して評価されます。建築費の上昇によって評価前の評価額を上回ることになる場合は、税負担を考慮して、評価前の評価額に据え置く措置がとられています。そのため、家屋については、年々古くなっても、一般に固定資産税の税額が変わりません。
住宅やアパートの敷地として利用されている「住宅用地」は、税負担を軽減する目的から、その面積の広さによって固定資産税を減額する措置がとられています。
中小企業を応援する様々な補助金が用意されています。主なものとして、業務効率や売上のアップを図るためにITツールを導入する場合の「IT導入補助金」、事業承継をきっかけに経営革新や事業転換を行う際の費用を補助する「事業承継補助金」、新サービスの開発や生産プロセス改善のための設備投資費用などを補助する「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」、経営計画に基づく販路開拓を支援する「小規模事業者持続化補助金」などがあります。
また、税理士等の経営革新等認定支援機関の助言を受けて早期経営改善計画を作成する場合の費用を補助する「早期経営改善計画策定支援事業」も引き続き実施されています。
5月に入ると、住民税の特別徴収税額の決定通知書が送られてきます。決定通知書が届いたら、記載内容や税額を確認し、決定通知書(従業員用)を従業員に渡しましょう。
従業員の給与から天引きした住民税は、翌月10日までに各市長村に納付します。納付が遅れると延滞金が加算されます。従業員が常時10人未満の場合、市町村への申請によって、年2回の納付が認められます。
住民税の決定通知書(従業員用)からは、所得に対して原則10%の税率が課税される「所得割」と、一律に課税(原則年額5,000円)される「均等割」、ふるさと納税(寄付金控除)などの住民税額からの控除分、毎月の給与から天引きされる「納付額」がわかります。
繁忙期に従業員から有給休暇(有休)の取得申請があった場合、有休を希望通りに与えることが原則です。しかし、「同じ時季に多くの従業員が休む。代替要員の配置が難しい」など事業の正常な運営が妨げられる場合、経営者は取得時季の変更を求めることができますが、単に「日常的に忙しい。人手が足りない」という理由では、時季の変更を求めることはできません。事前の取得申請を求めることができるため、あらかじめ他の従業員との調整をはかるようにしましょう。
また、一斉付与、交替制付与、個人別付与などの方法で、あらかじめ有休の取得日を割り振る計画的付与制度なども活用して、有休の取得促進をはかりましょう。
融資申込や経営計画の提出にあたり、金融機関などの外部者に自社の概要を説明する機会が増えています。その際、事業内容、理念・ビジョン、役員構成、従業員数、沿革などの文章情報だけでなく、ビジネスの商流・物流・資金の流れを図式で表した「ビジネスモデル俯瞰図」を作成すると相手に事業の全体像が一目で伝えやすくなります。ビジネス全体を俯瞰することで、自社の現状と課題を明らかにすることができるため、経営計画の策定や改善策を立てる一助にもなります。
出産を控えた女性従業員から請求があれば会社は産前休業を与える必要があり、産後については、原則として8週間は就業させることができません。また、原則として、育児休暇の申請を受ければ、子が1歳になるまで育児休業を与える必要があります。
産前・産後、育児休業期間中は、従業員本人と会社負担の保険料が免除されるほか、従業員には、出産手当金や出産育児一時金、育児休業給付の支給などの制度もあります。
経験豊富で優秀な人材の離職を防ぐためにも、情報の周知や社内体制を見直してはいかがでしょうか。
4月は、新入社員の入社や従業員の扶養家族の異動がある時期です。家族に就職などの異動があった従業員や新入社員からは「扶養控除等(異動)申告書」の提出を受けるとともに、新入社員には、申告書にマイナンバーを記載してもらいましょう。
新入社員が入社した場合、入社日から5日以内に健康保険・厚生年金保険の資格取得の届出、入社日の翌月10日までに雇用保険の資格取得の届出が必要です。
中小企業融資において、経営者の9割が個人保証を提供し、うち半数以上がその解除を望んでいます。
「経営者保証に関するガイドライン」では、経営者が会社の資金や資産について公私の区別を明確にすること、会社の資産・収益力によって借金返済が可能であると判断できること、金融機関へ財務情報を提供すること、など一定の経営状況を満たせば、個人保証のない融資や既存の保証の解除などの可能性があるとしています。
健全経営に取り組み、個人保証のない安心感のある経営をめざしましょう。
中小企業では、会社の資産と役員個人の資産との区別が曖昧になりがちです。
会社と役員との間の金銭や不動産の貸し借りは、通常の取引と同様に、契約書の作成や、利息や家賃の支払いが必要な場合があります。事業に関係のない役員の個人的な支出は、税務上、役員給与となり損金への算入が認められません。金融機関からも厳しい眼で見られます。
本業の業績が良くても、役員の私的流用が多いと資金繰りが苦しくなり、経営に悪影響を及ぼすだけでなく、社内全体のモラルの低下を招きます。自社の状況を見直しましょう。
自社の「売掛金管理と回収の5つのポイント」を押さえ、売掛金の不良債権化や貸し倒れのリスクを小さくするように再点検してみましょう。
経済が右肩上がりの時代は、資産の含み益を担保にした融資や、資産売却による借入金返済が可能でした。しかし、経済が低成長の時代に入った今、これからは、黒字を重ねて利益を内部留保し、経営基盤を安定させなければ、企業の継続が難しくなっています。
会社を継続させるために、最低限必要な売上高と利益を確保するための経営計画を作成し、目標に向かって経営することが必要になっています。
黒字化を目指した経営計画の作成を通じて、自社の経営課題を明らかにして、その改善策を図ることが成り行き経営からの脱却になります。
設備資金の借入れにあたっては、毎年の返済額を「減価償却費の範囲内」に収める返済計画を立てましょう。減価償却費は、資金流出のない費用であるため、この範囲に返済額が収まれば資金繰りが楽になり、利益を内部留保として蓄積することができます。このような返済計画での借入れが困難であれば、「減価償却費と税引後利益の合計の範囲内」に収めるようにしましょう。
「TKC経営指標(BAST)」の「借入金対月商倍率(月)」「自己資本比率(%)」の数値から、赤字企業ほど、借入金が多く、自己資本の割合が低い傾向にあることがわかります。自社の数値と比べてみましょう。
個人事業者や不動産オーナー、給与以外の収入がある人などは所得税の確定申告が必要です。以下のような申告もれがないか、確認しましょう。
○満期保険金・解約返戻金の受け取りは、一時所得として申告が必要な場合があります。
○ふるさと納税の返礼品や懸賞金、競馬の払戻金なども一時所得です。満期保険金などとの合計で50万円を超えると、申告が必要になることがあります。
○医療費控除額は、平成29年中に支払った医療費の総額から、保険会社からの保険金や高額療養費などによる補てん金額を差し引いて計算します。
○外国為替証拠金取引による利益は、雑所得として申告が必要です。
○ふるさと納税のワンストップ特例は、確定申告をすると無効になります。確定申告において、あらためて寄付金控除(ふるさと納税)の申告が必要になります。
自社に経営理念はありますか。その経営理念は、社内に浸透し、活かされていますか。せっかくの経営理念を活かせていない例が少なくありません。一方で、経営理念の実践のために様々な取り組みをしている企業も多くあります。
本誌では、事例として「理念、年度方針、数値目標などを記した理念手帳の全社員への配付と社内勉強会を通じて、経営理念の実践に取り組む美容院」と「経営理念を文化として、個々の業務の中に根づかせるために具体的な行動指針を定め、実践している歯科医院」を紹介しています。
新年を迎え、事例を参考に自社の経営理念の浸透について考えてみましょう。
平成30年1月から、配偶者控除と配偶者特別控除が改正されます。例えば、夫がサラリーマンで妻が夫の扶養の範囲で働く場合、以下の点に注意が必要です。
○妻の収入が年103万円を超えると、配偶者控除に代わって適用できる配偶者特別控除が大幅に拡大され、妻の収入が年150万円以下(改正前:105万円未満)であれば、最高で38万円の所得控除が受けられるようになりました。
○配偶者控除・配偶者特別控除に所得制限が設けられ、夫の収入が年1,120万円を超えると控除額が逓減し、年1,220万円を超えると控除を適用できなくなりました。
改正によって、制度が複雑になりましたが、夫の年収(給与収入のみ)が年1,120万円以下であれば、従来と変わりません。本誌では、配偶者控除等の額を確認できるチャート図を掲載しています。
どうして赤字経営ではだめなのでしょうか。これまでは、赤字続きで資金不足に陥っても、銀行からの借入れや社長の個人資産でカバーすることができました。しかし、これからは、黒字でなければ、借入れも難しくなり、個人資産もやがて枯渇します。状況は変わり、黒字でなければ、会社の存続が難しい時代になっています。
業績改善に取り組み、黒字化をめざしましょう。本誌では、限界利益率の改善、固定費の削減、売上アップの視点から、改善策のヒントをチェックリスト形式で掲載しています。
経営計画(予算)を立てて、業績目標を明確にして営業活動を行いますが、決算直前になって目標と予算との大きな差異に気付いても、もはや挽回することはできません。目標達成のためには、期中に業績検討を行って、予算と実績の差異に気付き、その原因を把握し、対策を打つことです。そのため、期中に計画と実績の相違を検証するための業績管理の仕組みをつくり、実践しましょう。
さらに、その情報を金融機関へ積極的に提供する企業が高く評価される時代が来ています。本誌では、期中の業績管理によって経営改善に取り組んだ企業の事例を紹介しています。
業績管理は、部門別に行うことで、課題がより明確になります。部門別業績管理は、決して難しくはありません。部署や部門といった名称にとらわれず、例えば、商品群別や営業担当者別、営業エリア・地域別、得意先別など、社長自身が知りたい「小さな単位」に分けてみましょう。
部門別で業績を見ると、「何が自社の収益に貢献しているのか。何が損失を出しているのか」について、社長の感覚ではなく、数値で客観的に把握することができます。月次決算と併せて、部門別で業績を把握し、利益率やコスト、採算性が明らかになれば、業績向上のための対策がそれだけ的確になります。また、従業員に利益やコストへの意識、目標達成への責任感が生まれます。
平成30年からの配偶者控除と配偶者特別控除の大幅な改正に伴い、平成30年分の「扶養控除等(異動)申告書」の様式が変更され、従来の「A 控除対象配偶者」欄が「A 源泉控除対象配偶者」へと名称が変わりました。本欄の記載対象は、次の条件を満たす場合です。従来との相違は、納税者本人に所得制限が設けられたこと、配偶者の年収が103万円を超えても150万円以下であれば記載対象になることです。
①納税者本人(配偶者控除を受ける人)の平成30年中の所得の見積額が900万円以下
(給与収入のみの場合、年収1,120万円以下)
②納税者本人と生計を一にする配偶者の平成30年中の所得の見積額が85万円以下
(給与収入のみの場合、年収150万円以下)
※青色事業専従者として給与支払いを受ける人や白色事業専従者でないこと
平成29年のパートの収入と税金と配偶者控除等については、来年(平成30年)からの配偶者控除等の改正と混同しないように注意しましょう(今年は従来通りです)。
妻の収入が103万円以下であれば、妻に所得税は課税されず、夫は配偶者控除(38万円)を受けることができます。妻の収入が103万円を超えても、夫は配偶者特別控除(3万円~38万円)を受けられる場合があります。本誌では、配偶者控除等と社会保険の扶養の範囲を一覧化しています。
今後5年で、経営者の30万人以上が70歳以上になるとされ、多くの企業が事業承継のタイミングを迎えます。中小企業庁においても、今後5年をめどに事業承継を集中的に支援するとしています。
事業承継は、重要な経営課題ですが、明確な期限もなく、差し迫った理由がないと、なかなか進まないといわれています。
しかし、事業承継には5~10年という長い準備が必要です。後継者が決まっていれば「育成」、後継者不在であれば「第三者への譲渡」などを検討しなければなりません。
有期雇用契約のパート・契約社員の雇用期間が5年を経過すると、労働者から無期雇用への転換の申し出ができる「無期雇用への転換ルール」が、施行から5年を経過する来年4月から本格化します。
経営者に正しく理解してほしい点は、「無期雇用への転換は、正社員にすることではない」「単に有期から無期雇用に転換するのみであれば、賃金などの労働条件を変更する必要はない」「無期雇用の場合、解雇については正社員と同様の扱いになる」ことです。
「早期経営改善計画策定支援」は、「資金繰りが不安定」「売上減少の要因が不明」「自社の状況を客観的に把握したい」といった中小企業の取り組みを支援する国の事業です。税理士等の専門家(認定支援機関)が、計画策定の支援、その後1年間のフォローアップを行います。
計画書の作成を通じて、経営課題の発見・分析ができ、資金繰りの把握が容易になります。計画書を金融機関に提出し、達成状況を一緒に確認することで、関係強化をはかる機会にもなります。
ふるさと納税は、平成27年から、控除限度額の拡大や確定申告が不要なワンストップ特例制度が始まったこともあって、昨年は、寄附した人が225万人と前年から倍増しました。
ワンストップ特例の利用条件に当てはまる人にとっては、確定申告とワンストップ特例の“どちらの方法が税金は得なの?”といった疑問があるようですが、どちらも控除される税額は同等で、控除の方法が異なるだけです。ワンストップ特例は、控除税額の全額が翌年度の住民税からの控除になります(還付はありません)。
クレジットカード情報の漏えいや偽造カードによる不正利用の被害が増加しています。昨年12月に改正割賦販売法が成立し、クレジットカード加盟店(小売店等)には、カード情報の非保持化やカード決済端末のIC対応化などのセキュリティ対策が義務づけられました(平成30年6月施行)。
小売店や飲食店などでは、カード決算端末のIC対応化のため、端末の追加、入れ替え、システム更新などが必要になります。ネット通販業では、「なりすまし」による不正防止のため、パスワードやセキュリティコードによる本人確認の仕組みが義務づけられます。
「中小会計要領」(中小企業の会計に関する基本要領)は、中小企業のための会計の共通ルールであり、多くの中小企業がこれに準拠して決算書を作成しています。共通ルールで作成された決算書であれば、金融機関は、融資先企業の客観的な評価を行うことができるうえ、自社への信頼性も高まります。
社長の経営判断においても、前月比較、前年同月比較、他社比較などが、より精度の高い数値で分析できるため、経営判断が的確になります。
相続が発生すると、不動産や銀行口座の名義変更などの相続手続を行う必要がありますが、登記所や金融機関に、相続関係を証明するための戸籍関係書類の束を、その都度提出する必要があるなど手続が大変面倒でした。
「法定相続情報証明制度」は、戸籍関係書類の束に代えて、法務局が発行する「法定相続人が誰か」を証明した「法定相続情報一覧図の写し」を利用することで、相続手続の負担を軽減するための制度です。(5月29日運用開始)
従業員数が少ない企業では、「日常業務が1人の従業員に集中」「仕入から販売までの一連の事務処理が1人の担当者」など、業務の流れの中で、他者チェックができない環境が多く、不正やミスが発見されないことがあります。
不正やミスを未然に防止し、早期に発見するためには、社内の牽制機能を働かせることが理想ですが、難しい場合には、例えば、銀行取引、口座新設は必ず社長や上司の承認を得ること、得意先・仕入先と新たに取引する際は、担当者以外の者がチェックするなど、重要な業務については社内ルールを明確にして、定期・臨時のチェックを徹底しましょう。
金融庁は、金融機関に対して、「ローカルベンチマーク」(ロカベン)によって、融資先の経営者と対話しながら、経営改善や生産性向上を積極的に支援することを求めています。
ロカベンとは、経済産業省が策定した企業の経営診断ツールで、売上増加率、営業利益率、労働生産性などの財務情報と、ビジョン、製品・サービスの内容、技術力・販売力などの非財務情報をもとに、経営者と金融機関や税理士などの認定支援機関等が対話しながら、将来の可能性を評価し、今後の方向性を導き出すものです。
ロカベンを利用することで、経営者と金融機関等が同じ目線で、経営改善を進めることが期待されています。また、ロカベン帳表は、TKCローカルベンチマーク・クラウド」から作成可能です。
製品の製造や技術の改良・発明等にかかった試験研究費の一定額を法人税額から控除できる研究開発税制は、これまで製造業を中心とした制度でした。平成29年4月から、IoT(モノのインターネット)やAI、ビッグデータ等を活用した「新たなサ-ビスの開発」にも適用対象が広がり、ITや情報サービス系の企業でも税制の優遇を受けやすくなりました。
また、中小企業の研究開発投資意欲を高めるインセンティブとして、試験研究費の増加率が5%を超える場合には、最大で17%まで控除割合が上乗せされました(2年間の時限措置)。
残業時間と残業代については、誤解が多いようです。法定労働時間「1週間につき40時間、1日につき8時間まで」を超えると残業になり、時給単価に25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。夜22時から翌朝5時までの時間帯の残業については、50%以上の割増賃金になります。
法定労働時間内であっても、会社が決めた所定労働時間(例:1日7時間就業など)を超えると残業になり、残業代を支払う必要があります。ただし、法定労働時間内の残業については、賃金の割増は不要です。
なお、残業代の時給単価の計算には、家族手当や通勤手当、住宅手当などを含める必要はありません。
利益を向上させるには、「①固定費の削減」「②販売数量の増加」「③売上原価の削減」「④販売価格を上げる」の4つの打ち手があります。どの打ち手が最も利益を増加させるか、変動損益計算書を活用してシミュレーションしてみましょう。
いずれの打ち手も、利益の向上につながりますが、固定費や変動費の削減だけでは限界があり、販売数量を増やすための安易な値引きは、大きく利益を減らす結果になります。実際には、4つの打ち手を組み合わせて考えることになりますが、最も利益を増加させるのは「販売価格を上げる」です。変動損益計算書の考え方を販売戦略に活かすことで、経営力を高めることができます。
不動産売買、工事請負、金銭消費貸借などの契約書は、印紙税法上の課税文書として、記載金額に応じた税額分の収入印紙を貼らなければなりません。税務調査の際、貼り忘れや金額不足などを指摘されないよう、注意しましょう。
文書の表題に「○○契約書」といった記載がなくても、文書の記載内容が契約の成立等を証明するものであれば、課税文書になります。印紙税は、文書課税であるため、契約書を2通以上作成した場合、そのすべてに印紙を貼る必要があります。ただし、単に契約書の控えとしてコピーしたときは、コピーした文書に印紙を貼る必要はありません。
最近は、紙の契約書を作成せず、電子メールでやり取りするケースが増えていますが、このような電子文書は課税文書に該当せず、印紙税はかかりません。
介護離職者は年間10万人を超え、介護離職予備軍ともいえる「隠れ介護者」(家族の介護を職場に隠している)は1,300万人と推定され、今後、介護離職者は急増することが予想されています。子育て(出産・育児)のために離職した女性の25%は「仕事との両立が難しく、退職せざるを得なかった」といいます。
育児・介護休業法では、企業に対して、従業員が離職することなく、子育て・介護と仕事との両立ができる介護休暇制度、育休制度などの環境整備を求めていますが、なかなか進んでいないのが実情です。介護・育休制度の整備にあたっては、両立等支援助成金が受給できないか検討してみましょう。
両立等支援助成金は、介護休業を利用しやすくした場合(57万円)や、男性に育児休業を取得させた場合(57万円)、育児休業の取得と職場復帰をさせた場合(それぞれ28万5千円)などに支給されます。
平成29年度税制改正において「中小企業経営強化税制」が創設されました。これは、生産等に係る設備投資を対象に、経営力向上計画の策定・認定を受けることで、取得価額の即時償却又は10%税額控除ができる制度です。
新税制では、税優遇の対象設備として「生産性向上設備(A類型)」「収益力強化設備(B類型)」が設けられ、特に「収益力強化設備(B類型)」については、生産性向上や販売開始日の要件がなく、さらに対象設備が生産性等に係るすべての器具備品・建物附属設備にまで拡大され、より多くの業種で利用できるようになっています。なお、平成29年4月1日以降の設備の取得・共用から利用が可能です。
決算が終了し、法人税の申告・納税を終えても、金融機関への情報開示、帳簿書類の保存など、まだまだ重要なことが残っています。
帳簿書類の保存については、法人税では原則7年間の保存義務があり、これを怠ると、青色申告の取り消し、消費税の仕入税額控除の否認など、税務上の不利益を被るおそれがあります。
金融機関への決算報告の際には、事業計画書も持参し、今後の経営の見通しや将来の資金需要について説明しましょう。
残業についてのアンケート調査によると、企業の約8割が「残業削減に取り組んでいる」と回答していますが、依然として削減が進まないのが実情のようです。
残業が削減できない理由を「人手不足」「業務量の多さ」など、漫然に捉えていないでしょうか。
まずは、社内の体制や社員一人ひとりの仕事について、改善すべき点を明らかにしてみましょう。社内の風土、仕組みや管理体制、仕事の進め方、季節性、業務の特性などの複数の要因が絡み合っており、それらを一つひとつ紐解きながら、改善していかなければ、なかなか削減することができません。
株主総会では、決算の承認、役員の選任、剰余金の配当、定期同額給与の改定、定款変更などの重要事項を決定します。役員の選任(改選)を行った場合は、必ず変更登記を行いましょう。登記を怠ると、過料の制裁があります。
総会後は、議事録の作成・保存が義務付けられています。税務調査では、定期同額給与の改定や事前確定届出給与の支給などについて、株主総会の議事録がチェックされます。
同族企業であっても、毎期、株主総会を開催して、決算内容を報告し、業績を客観的に確認することを続けることで、緊張感をもって経営に臨みましょう。
「所得税の住宅ローン控除」「住宅取得等資金の贈与税の特例」は、消費税率の引上げ延期に伴い、措置の見直しが行われています。
住宅ローン控除は、適用期間が平成33年12月31日まで延長されています。
贈与税の特例については、適用を検討される方は注意してください。消費税率の引上げ延期に伴い、省エネ等住宅を取得する場合の非課税枠最高3,000万円(消費税率10%が適用される方)の適用が延期されています(平成31年4月~32年3月まで)。
そのほか、平成29年度税制改正では、特定の増改築等に係る税制優遇措置について、耐震改修・省エネ改修に加えて、一定の耐久性向上改修(劣化対策、維持管理・更新の容易性の確保)を減税の対象にした「長期優良住宅化リフォーム減税」が創設されました。
現在の法令では、社員が60歳以降も引き続き雇用を希望する場合には、会社は、原則として雇用しなければなりません。60歳以降の雇用について、年金支給や高年齢雇用継続給付の活用も踏まえ、経営者と社員が話し合って、
①引き続きフルタイムでの勤務
②勤務日や勤務時間を減らすなど労働条件を見直した働き方
③退職
から選択することになります。
今後、会社側の人材確保、従業員の年金支給開始年齢の引き上げによる収入確保の問題、などから継続して働く人が増加するでしょう。会社としても、社員の合意のもと、定年延長(60歳→65歳)、継続雇用、定年廃止などの制度を整備しなければなりません。
決算手続きの基本的な考え方は、期末における資産・負債の一切を帳簿から離れて、その実在性や網羅性を確認し、確定することにあります。
決算日までに、滞留債権、不良債権への対処(債権放棄通知の発行)、不良在庫の処分(処分時の証拠資料の保存)、固定資産の実物と台帳の突き合わせ(売却・除却の場合は証拠資料の保存)などを行い取締役会等の承認を得ておくことも重要事項です。
貸借対照表の資産・負債の金額がもれなく確定すれば、総額主義の原則に従って、損益計算書の金額も正しく表示され、当期利益も正しく計算されます。
平成29年5月30日から改正個人情報保護法が施行され、これまで適用免除となっていた「保有する個人情報が5,000人以下の事業者」にも適用されることになります。
個人情報保護法では、顧客や従業員の個人情報を取り扱う事業者が守らなければならない「5つのルール」として、
①利用目的を明示して取得する
②利用目的の範囲内で利用する
③流出、漏えいさせないよう安全に保管する
④第三者への提供には、本人の同意を得る
⑤本人からの個人情報の開示や訂正、削除の要請に応じる があります。
個人情報の流出や漏えいは自社の信用に関わり、経営にも大きな影響を与えます。個人情報の取扱いのルールを守ることは、自社の信用を守ることでもあります。
受取金額が5万円以上の領収書には、記載金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。実務では、領収書の発行や代金決済の方法に様々なケースがあるため、誤解や判断に迷うケースがあるようです。
例えば「再発行した領収書」「仮領収書」「レジから発行されるレシート」「領収書と明細書を発行するとき」「Web上で電子発行された領収書」「電子マネーによる決済」「クレジットカードによる決済」などの事例で印紙を貼る必要があるかないかを紹介しています。
実地たな卸は、「財産(期末たな卸高)」と「売上に対応した売上原価」を確定させる大切な手続きです。期末たな卸高は、決算手続きばかりでなく、税務調査や金融機関にとっても重要です。
税務調査では、決算期末日前後の取引を中心に、在庫や締め後の売上が正しく計上され、所得もれがないかが確認されます。
金融機関は、在庫過多の場合には、不良品やデッドストックが含まれていないか、水増しが行われていないかなど、その資産性の有無を確認します。
税務調査への不安をなくし、経営に専念したいと思いませんか?
そのためには、日々、正しい記帳を行って、月次決算を実施することが不可欠です。毎月、会計事務所の巡回監査を受けた決算書をもとに作成された税務申告書は税務署からの評価も高くなります。
さらに、税理士による書面添付(税理士法第33条の2第1項)が行われた税務申告書であれば、より評価が高まるでしょう。決算書の信頼性が高くなれば、金融機関の評価も高まります。
労働基準法で、労働時間は「1日8時間、1週40時間」が原則です。ところが、業務に繁閑や季節変動がある業種・業態では、この原則が馴染まない場合があります。
そのような実情を踏まえた働き方として、1年単位の変形労働時間制があります。これは、平均で1週間40時間(年間2,085.7時間)以内に労働時間を設定し、その範囲内であれば、例えば、1日10時間働いても時間外労働にならない制度です
このような制度を上手に活用して、労働時間を管理し、残業代の抑制や長時間労働の改善に取り組むことが求められています。
内容が不明な取引等があった場合に、仮払金や立替金などのいわゆる仮勘定で安易に処理してしまい、そのまま精算されず残高が残っていることがよくあります。
仮払金などの仮勘定は、月次の決算、遅くても期末の決算までに精算し、決算書に残高を計上しないように努めます。
決算書に仮払金等の残高が残っていると、税務署は、それが役員や従業員への給与や貸付金ではないかという疑いの眼を持つでしょう。また、金融機関は、仮払金等に資産性がないと判断すれば、資産を減額して実態修正をするでしょう。一方で、決算書に仮勘定の残高が計上されていないことは、決算書の信頼性が高いことの証にもなります。
与党の平成29年度税制改正大綱が公表されました(12月8日)。中でも、注目されるのは、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しです。
●配偶者控除の見直し案
納税者本人が配偶者控除を受ける場合、納税者本人の合計所得金額900万円(給与の年収が1,120万円)までは、従来どおり、38万円までの配偶者控除が受けられますが、給与の年収が1,120万円を超えると控除額が26万円、13万円、0円と段階的に縮小されます。
●配偶者特別控除の見直し案
配偶者控除の適用ラインを超えた場合に、控除対象配偶者の収入103万円~141万円の範囲で段階的に控除される配偶者特別控除が大幅に見直されます。控除対象配偶者の給与の年収が150万円以下であれば、38万円の配偶者特別控除が受けられます。(ただし、配偶者控除と同様に給与所得によって控除額は段階的に縮小されます)
政府において働き方改革の議論が進められており、その狙いの一つに長時間労働の抑制等があります。
中小企業における働き方改革とは、まずは、労働時間や残業時間についての労働法規を正しく理解して、経営者と従業員が協力して、労働時間のあり方を見直し、自社の特徴にあった(変形労働時間制やパート従業員の活用などを含めた)働き方を考えていくことにあります。
元巨人軍の桑田真澄投手は、中学時代はコントロールの良さが強みでしたが、高校野球では通用せず、球拾いの毎日だったそうです。桑田投手は、自分の強みは何かを冷静に分析し、投手としてずば抜けた力はないが、野球の基本である打つ、守る、走る、(配球や癖を)考える、などの一つひとつの力に磨きをかけて、それらの力を総合力として生かすことを考えました。その後の活躍はご承知のとおりです。
一流の強みはなくても、複数の準一流を磨いて総合力を上げるという考え方は、中小企業の経営のヒントになります。
平成28年分の法定調書(支払調書や源泉徴収票など)と市区町村へ提出する給与支払報告書の提出期限は、1月31日(火)です。今回の提出から、原則として、マイナンバーの記載が必要です。
●給与支払いに関係する法定調書と給与支払報告書のマイナンバーの記載の注意点
①源泉徴収票等へのマイナンバー記載には猶予期間はありません。
②給与支払報告書は平成28年分からマイナンバーの記載が必要です。
③中途退職者の源泉徴収票にもマイナンバーの記載が必要です。
④受給者に交付する源泉徴収票へのマイナンバーの記載は不要です。
●外部への報酬等の支払いに関係する法定調書のマイナンバーの記載の注意点
①外部への報酬等の支払先からマイナンバーの提供を受けます。
②マイナンバー等の提供を受ける際には本人確認が必要です。
決算手続きには、貸借対照表の勘定科目を確認し、残高を確定するという重要な作業があります。
①実地たな卸や残高証明書によって、資産や負債が実在しているか、金額は正しいかを確認し、残高を確定します。
②貸借対照表上の資産・負債は、営業循環基準や1年基準によって、流動・固定に分類します。
③各会計期間の損益計算を正しく行うため、翌期以降の収益や費用とする項目を前払費用などの勘定科目によって貸借対照表に計上します。
正しい決算書から経営状況を把握し、明日からの経営に役立てましょう。
営業循環基準… 資金の循環に着目し、営業活動から生じる資産(たな卸資産、売掛金、受取手形)と負債(買掛金、支払手形)は、保有期間の長短にかかわらず、すべて流動資産、流動負債とします。
1年基準… 期首から1年以内に現金化される資産(流動資産)と1年を超える資産(固定資産)に分類し、1年以内に支払期限が到来する負債(流動負債)と1年を超える負債(固定負債)に分類します。
会社が自社の現状を知るためには会計が必要です。そして決算を行う(決算書を作成する)ことで、数値を自社で利用したり、金融機関など外部へ公開したり、税務申告に役立てます。決算書は正しいルールに従った会計処理に基づいて作成されることで、正しい経営判断ができ、金融機関等から信頼性のある決算書として評価されます。
損益計算書は、会社の1年間の儲けを表すもので、その作成にあたっては4つの大きな原則があります。
①発生主義の原則
収益と費用は、現金の収支に関係なく、発生した事実に基づいて処理します。
②総額主義の原則
費用と収益は、それぞれ総額で記載します。
③費用収益対応の原則
費用と収益は、その発生源泉に分類して、相互に関連のある費用と収益を対応させて表示します。
④実現主義の原則
収益は、販売の事実があり、対価として現金や売掛金などの貨幣資産を受領した事実があったときに認識します。
これらの原則に基づいて損益計算書が作成されることで、勘定科目ごとに集計された収益と費用を表示し、その差額である利益をいくら獲得したかを確認できるのです。
年末調整事務において、従業員から「扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいますが、記載内容の漏れや間違いがよくある箇所があります。経理担当者は次の点をよく確認しましょう。
①マイナンバーが漏れなく記載されているか。
②扶養親族の記載漏れ、間違いはないか。
③同居老親等の記載漏れ、間違いはないか。
④「所得の見積額」欄には、収入金額ではなく「所得」金額が記載されているか。
⑤障害者控除・寡婦(夫)控除などを受ける場合、記載事項が記載されているか。
※平成28年分の扶養控除等(異動)申告書にマイナンバーを記載して提出してもらっている場合、平成29年分の扶養控除等(異動)申告書で、改めてマイナンバーの記載を要するか否かについて確認しておきましょう。
飲食業、宿泊業や建設業のように、領収書や契約書など収入印紙を貼らなければならない文書が多い業種では、税務調査の際、印紙の貼付の誤りや漏れ等を指摘されることがよくあります。
注意① 印紙を貼らなければならない文書を課税文書といい、「印紙税額表」に掲げられています。
(例:不動産譲渡契約書、金銭消費貸借契約書、請負契約書、領収書など)
注意② 契約書、領収書など文書のタイトル(名称・呼称)ではなく、その文書の内容によって判断します。
注意③ 印紙に消印(割印)等がなければ、印紙税を納付したことにはなりません。
注意④ 貼り忘れ等には、過怠税が徴収されます(最高で3倍のペナルティー)。
貼付の漏れや金額の誤りなどで、余分な税金を徴収されないよう気をつけましょう。
金融機関は、融資先から提出された決算書が、どのような会計ルールに基づいて作成されたものかが不明だと、客観的な評価ができません。また、法人税申告のための決算書は、税法基準で作成されているため、その会社の真の実力や隠れたリスクが表示されないこともあります。金融機関は、「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」という共通のモノサシによって、融資先の実態を正しく、客観的に評価しようとしています。
ただ、中小会計要領は、例えば、貸倒れ、減価償却費、引当金などにおいて税法基準とは異なる会計処理を行うことで、税法基準による決算よりも利益が減少することや、赤字になることもありますが、中小会計要領に準拠して作成された決算書は、信頼性の高いものになります。
商業登記規則が改正され、次のような役員の変更登記申請等を行う際には「株主リスト」の添付が必要になりました。
①取締役の選任、解任など株主総会の決議が必要な事項を登記する場合
②組織変更など株主全員の同意が必要な事項を登記する場合
「株主リスト」には、「議決権数上位10名の株主」「議決権割合が2/3に達するまでの株主」のいずれか少ないほうの株主について、住所・氏名、株式数等の記載が必要になります。一定の要件を満たせば、法人税確定申告書「同族会社の判定に関する明細書」(別表二)を利用して「株主リスト」を作成することができます(別表二の添付が必要)。
年末が近づくと、パートで働く主婦は、自分の年収と夫の扶養家族の範囲が気になります(年収とは、給与の手取額ではなく、源泉徴収や所得控除などを行う前の金額のこと)。
○年収103万円以下なら夫は配偶者控除を受けられる(妻本人に所得税は課税されない)
○年収103万円以下でも住民税が課税される場合がある
○年収141万円未満であれば、夫は配偶者特別控除を受けられる
○年収130万円以上になると、夫の社会保険の扶養家族から外れる
○従業員501人以上の企業に勤務するパート社員には、106万円の壁もある
※本誌では、パート収入と所得税、住民税、社会保険の扶養家族の関係の一覧図を掲載しています。
平成29年1月末が提出期限となる「平成28年支払分に係る法定調書」には、支払先のマインナンバーの記載が必要です。
ほとんどの企業は、従業員のマイナンバーについてはすでに取得しているようですが、外部の支払先のマイナンバーはまだ取得していないところが多いと思います。外部の場合、取得には、時間と手間がかかります。取得が必要な支払先を確認し、早めに準備して、郵送やEメールによる方法などによって、取得漏れのないようにしましょう。
金融機関では融資を検討する際、担保や保証に過度に依存せず、会社の事業内容や成長可能性を重視する「事業性評価」を実施することを、金融庁から指導されています。
事業性評価では、財務情報(売上高や限界利益、キャッシュ・フローの増減など)とともに非財務的な情報を分析して、目に見えない強みを評価することが励行されています。
その際の視点として、次の4つの着目点があります。
1.経営者への着目
2.事業への着目
3.関係者への着目
4.内部管理体制への着目
会社の継続的な発展のためには、自社の事業の特徴や強みは何かを客観的に掘り下げてみることが必要です。この機会に、金融機関が着目する4つの項目に沿って整理してみてはいかがでしょうか。
会社(法人)の事業活動に必要な費用は、経費として処理します。事業活動とは、お金を使って、売上や利益を得る活動を言います。
したがって、税務調査において、社長が使用する消耗品や提供を受けるサービスの費用が、社長個人の利益にしかならず、売上や利益の獲得に直接必要でないと認定されると、社長への賞与(給与)とみなされる場合があります。損金として処理していた経費が、例えば、社長への役員賞与と認定されると、新たな税負担(法人税や社長個人の所得税など)が増えることになります。
会社の経費として損金算入が認められるのは、あくまで事業に関係ある支出に限られ、明らかに事業に関係のないもの、社長や役員の個人的な支出とみなされるものについては、損金算入が認められません。
利益が出ていると言うけれど、預金は増えてないよ…。決算が近づくと、社長からよく出る言葉です。損益計算書に計上された利益(黒字)はどこへ消えたのでしょうか。
その答えは、前期末と当期末の残高を比較した比較貸借対照表から知ることができます。
例えば次のようなケースでは現預金が増えません。
● 当期利益が500万円だった。(資金の増加:+500万円) ● 2期比較で、借入金返済300万円、売掛金増加200万円、在庫増加200万円の差異が生じていた。 (資金の減少:▲700万円) ● 減価償却費を200万円計上した。(資金の増加:+200万円) ○ 差し引きすると、資金の増減が0円のため、現金預金残高は変わらない。 |
2期を比較して利益が増加しても現預金が増加していないという場合は、このように、利益の増加分に見合う資金が、他の何かに使われてしまったことを意味します。
貸借対照表の借方(左側)には資産(資金の運用状態)が、貸方(右側)には、資金の調達源泉が表されます。会社の資産(資金)を増加させるには、次の3つの方法があります。
①借入れをする(主に金融機関からの融資)
②資本金を募る(新株発行等による増資)
③利益を出して留保する
返済能力の見極めなど中小企業を見る金融機関の眼が厳しくなり、また自社の株式を喜んで購入してくれる人がいない場合、つまり借入れや増資が現実的に難しいとなれば、「利益を出して留保する」しかありません。
会社の経営基盤を安定させるには、黒字化を図り、法人税を払い、残った内部留保を自己資本としてできるだけ蓄積する必要があるといえます。
経費の計上は、会社の利益に関係するため、税務調査でも厳しくチェックされる項目の一つです。“事業年度末までに債務が確定していない費用” については、その事業年度の損金に算入してはならないことになっていますが、前払費用のうち、支払った日から1年以内に提供を受けるサービスに係る短期前払費用については、支払った金額を継続してその事業年度の損金に算入しているときは、支払時点で損金算入が認められます。(借入金を預金等に運用する際の借入金にかかる支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、損金算入は認められません。)
このように、短期前払費用については、一定の要件の下、支払った時点での損金算入が認められますが、その要件を満たしていないと税務調査で否認されることになりますので注意が必要です。
外国人を雇用する機会が増えています。外国人従業員であっても、給与には所得税が課税され、源泉徴収が必要です。源泉徴収については、その外国人従業員が所得税法の「居住者」か「非居住者」のいずれに該当するかによって異なります。
厚生年金の保険料が、9月分から引き上げられます。また、9月分の社会保険料から、各従業員の標準報酬月額も改定となりますので、総務・経理担当者の方は注意しましょう。
5月に、中小企業や小規模企業の生産性向上を図るための中小企業等経営強化法が国会で可決・成立しました。
この法律では、中小企業等が、経営力を向上させるための事業計画を作成し、国の認定を受ければ、低利融資(商工中金)や信用保証枠の拡大(信用保証協会)などの特典があります。
なかでも、事業計画に基づいて、一定の機械・装置を新規に取得した場合に、3年間、固定資産税が2分の1に軽減される措置は、赤字企業が機械等を取得した場合でも減税効果が期待できます。
売掛金や貸付金などの金銭債権が、相手先の倒産などで回収できなくなることを「貸倒れ」といい、費用(損失)計上できます。
その場合「貸倒損失」として処理することになりますが、税務上は、①法律上の貸倒れ、②事実上の貸倒れ、③形式上の貸倒れ、の場合にのみ損金算入が認められるため注意が必要です。
貸倒れの発生は、資金繰りにも悪い影響を及ぼします。貸倒れを回避するためには日頃から以下のような対策を実施しておきましょう。
1.新規の取引先へは、少額の取引から始める
2.定期的に債権管理を行う
3.取引先の動向に注意する
4.社内で情報を共有する
請求漏れや請求ミス、回収遅れなどはありませんか。「売上」は商品を引き渡したタイミングで、「仕入」は商品が仕入先から納品されたタイミングで発生主義によってタイムリーに記帳(入力)することで、きちんとした売掛金・買掛金管理ができるようになります。
【売掛金管理の効果】
①入金(回収)予定がわかる ②請求漏れを防止する ③回収漏れを発見しやすくなる
【買掛金管理の効果】
①支払予定がわかる ②誤った請求書を発見できる ③取引先からの信用が上がる
売掛金を得先別、買掛金を取引先別に、それぞれ発生時、入出金時に記帳(入力)できるようになれば、資金繰りの改善につながります。
中小企業庁は、全国約325万の小規模事業者の事業活動の実情を調査・分析した「2016年版小規模企業白書」を公表しました。
※「小規模企業白書」では、概ね常時使用する従業員が20人(商業又はサービスは5人)以下の事業者を小規模事業者(個人事業者を含む)としています。
小規模企業は、厳しい経営環境にありますが、売上拡大に果敢な挑戦をした事業者は、そうでない事業者よりも、良い兆しが見られます。「売上が増加傾向にある」と回答した割合が高い事業者の例は次の特長が見受けられたそうです。
①商圏の拡大に取り組んだ事業者
②インターネット受注比率の高い事業者
③得意先・固定客がいる事業者
④経営計画を作成した事業者
現金管理の管理状況によって、その企業の経理水準がわかるといわれます。
現金管理が適正に行われている企業は、それだけ会計上の仕組みや内部牽制が機能していると判断され、反対に、現金管理がずさんであれば、社長の公私混同や、売上・経費の計上の不備が疑われる可能性があります。それだけに、現金管理は基本中の基本といえます。
日々の現金管理のチェックポイントは以下の4点です。自社の現状を確認してみましょう。
1.社長以外の現金管理責任者が現金の受払いを行っているか
2.小口現金制度を採用しているか
3.社内精算のルールを明確に定めているか
4.日々の取引を記帳し、現金有高を確認しているか
7月1日(金)~7月11日(月)は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の「被保険者報酬月額算定基礎届」の提出時期です。
実務でよくある間違いとして、現物給与の報酬への合算漏れがあります。この点は、最近、年金事務所等から指摘される企業が増えているそうです。
合算にあたっては、住宅や食事を提供している場合には、従業員の負担分によって報酬に合算する現物給与価額が異なりますので注意が必要です。
(以上の記事について詳細を知りたい事業者の方はお問合せください)
現代の企業会計の基礎である複式簿記は、中世ヨーロッパのヴェネツィア商人からヨーロッパ中に広がりました。
その理由は、
①借方と貸方の一致により、自分の間違いをチェックできる
②理路整然とした仕組みによって、取引を漏れなく記録できる
③若者の精神を鍛え、創造力をつけさせる
④商品ごと、事業ごとの利益が算出できる
という4つの効用にありました。
複式簿記の効用と、記帳とそこから算出された数字を経営に活かすことは、現代の企業においても変わりません。
近年、税務調査で厳しくチェックされている項目の一つです。個人事業者に対して、業務委託契約(請負契約)を結んで「外注費」として処理していても、税務調査では、その実態で、請負か雇用かどうかが判断され、「給与」に認定される場合があります。給与とされると、所得税の源泉徴収が必要になる一方、消費税の仕入税額控除が認められないことになります。
以下のような場合には給与と判断される可能性が高くなります。
①当社は外注先に対して、他社の仕事を請け負うことを制限している。
②外注先が負担すべき交通費等の諸費用を当社が負担している。
③外注先に対して、仕事の進め方・内容について具体的な指示・命令等を行っている。
④仕事に必要な道具や材料を当社が支給している。
⑤請負報酬について外注先は自ら計算せず、かつ請求書を発行していない。
⑥外注先が当社の退職者で在職中と同じような業務をしている。
⑦損害賠償規定が契約書に盛り込まれていない。
6月1日~7月11日は「労働保険の年度更新」です。平成27年度の確定保険料の申告・納付については、保険料の計算対象となる賃金総額と従業員の範囲に注意しましょう。
また、平成28年度の概算保険料は、前年度の賃金総額と比較して特に大きな変動がなければ、前年度の賃金総額を見込み額として計算します。概算保険料が40万円以上の場合などは、3回に分割して納付することも可能です。
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消費税の仕入税額控除を受けるには、「課税仕入等に係る帳簿及び請求書等の保存が必要」です。
食料品等への軽減税率が導入されると、将来的にインボイス方式が導入され、今以上に、仕入税額控除の要件も厳格になります。現在の記帳に不備がないか確認しましょう。
仕入税額控除を受けるためには、次の4点の帳簿への記載が必須要件となっています。
①課税仕入れの相手方の氏名又は名称
②課税仕入れを行った年月日(課税仕入れを行った年月日が異なる場合にはその日付も)
③課税仕入れに係る資産又は役務の内容
④課税仕入れに係る対価の額(税込み)
自社の年度経営計画(短期経営計画)を作成する際には、まず預金積立額と借入金(元本)の年間返済額を確保できる金額を試算し、「目標経常利益」を決めます。次に、売上や限界利益率、人件費などを吟味して、目標経常利益を達成できる計画へと仕上げていきます。
目標経常利益を達成できる数字になれば、月次に展開し、商品別や得意先別、営業所・営業担当別の販売計画を検討して具体的な行動へと反映し、目標達成を目指しましょう。
当事務所では、経営計画策定から業績検討までを支援するサービスをご提供しています。
(詳しくはお問い合わせください)
消費税増税の延期がマスコミで取り沙汰されています。
予定通り増税される場合、特に完成引渡しまでに長期間を要する請負工事等については、増税半年前の平成28年9月30日までの契約であれば、平成29年4月1日以後の引渡しであっても、経過措置によって8%の税率が適用される場合があり、増税前の駆け込み需要が期待されます。
大手などは、積極的に契約獲得に動いていますので、関連業種は、駆け込み需要の取りこぼしがないようにしましょう。
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経営に必要な資金を確保するためにも、毎期一定以上の経常利益が必要です。自社の年度経営計画(短期経営計画)を作成する際には、まず「目標経常利益」を決めましょう。
目標経常利益は「年間の預金積立額」「借入金(元本)の年間返済額」の合計額に、減価償却費や利益に対する法人税等を加味した額がひとつの目安になります。
そして、目標経常利益を確保するために、売上高・限界利益率の伸び、従業員給与・賞与、固定費の見直し、営業サイクルや販売先の見直し、社長の役員給与の増減等を含めて、検討しましょう。
役員給与は、定期同額給与であれば、全額損金算入が認められます。また、定期同額給与は、原則として事業年度開始から3か月以内であれば、給与の額を改定することができます。
役員給与の額を決める際には、
①税引き後利益から試算
②キャッシュ・フローに注意
③法人税、所得税、社会保険料を考慮
④経営計画に基づく
の4点に注意しましょう。
社長の家族、親族を役員や社員として給与を支給している場合には、その勤務実態に対して支給額が相当かどうか税務調査でよくチェックされます。日頃から、勤務状況や業務内容等の記録を残しましょう。
4月から労働基準法の年次有給休暇についての改正が行われる見込みです(今国会で審議中)。
新制度では、年10日以上の有給休暇が与えられる労働者については、そのうち5日分について、社員の希望を踏まえて取得日を予め企業が指定し、必ず与えることが義務づけられます。この改正は、中小企業にも適用されます。
また、従業員数(被保険者数)501人以上の大企業では、1週間に労働時間が20時間以上、月額賃金88,000円以上などの要件を満たすパートタイマーは社会保険への加入が義務づけられます。配偶者が大手企業などでパート勤務をしている場合には、影響があります。
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今期に計上すべき売上や仕入、経費などを誤って来期に計上したり、反対に来期に計上すべきものを今期に計上してしまうことを「期ズレ」といいます。
一般に売上取引は、「納品→請求(請求書発行)→入金」といった流れで行われますが、この流れが決算日をまたいで行われると、売上計上の誤りが起こりやすくなります。例えば、決算日が3月31日、請求書の締め日が毎月20日の会社が、決算月の3月21日から31日までの売上を4月(来期)に計上してしまうといったことがよくあります。
法人税額に影響するため、税務調査においてよく指摘されるところなので、注意しましょう。
過去の税制改正で今年の4月1日から施行される制度があります。更に今年の国会で可決成立すればこの4月から施行されることになる税制があります。企業経営や個人で活用できるものもありますので、確認しておきましょう。
①一定の機械装置等を新規取得した場合に固定資産税が3年間半減されます(赤字企業でも使えます)
②ジュニアNISAが始まります(4月1日以後の受け渡し分から)
③所得拡大促進税制の要件緩和(賃金増加率を5%から3%に緩和)
社長・役員クラスの方など、毎月の給与などの報酬が123万5,000円以上の人は、4月から健康保険の標準報酬月額が引き上げられるため、健康保険料が上がります。
また、被保険者が病気やケガのために会社を休み事業主から十分な報酬が受けられない場合に健康保険から給付される傷病手当金については、受給直前の標準報酬月額を高くして給付額を増やす行為を防止するため、計算方法の変更が行われます。
※以上の記事について詳細を知りたい事業者の方には、「事務所通信」を送らせていただきます
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3月に決算を控えた企業も多いと思います。近年は赤字企業に対する金融機関の評価も厳しくなっています。決算予測が赤字の見通しならば、今からでもできる利益確保策に取り組みましょう。あきらめたら、それまでです。
■ 重点得意先への営業
■ 商談中や見積り段階の案件の成約
■ セール販売などの営業活動の強化 等
黒字の見通しなら、資金を流出させるだけの対策ではなく、来期の業績につながるような節税対策を検討しましょう。
一般的に年に1回行われる決算の直前にできる対策は限られています。そのため、直近1か月の業績をタイムリーに把握し、迅速な経営判断を行う月次決算体制の中で検討することが望ましいといえます。
毎月、帳簿を締めて、最新の売上高、売上原価、経費や利益を掴む月次決算での検討の積み重ねがあって、はじめてより的確な決算対策が可能になります。
国税庁は、相続税調査時などの機会を通して、無申告事案を中心に積極的に贈与税の調査を実施するようです。過去に行った親族への贈与が認められず、相続時に相続財産として課税される例がよくあります。このように「贈与したつもり」でも、それが、認められない「つもり贈与」に注意する必要があります。
贈与について、民法では「当事者の一方が自己の財産を相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって成立する」とされています。したがって、一方的な意思表示のみで成立するものではなく、当事者間の契約があってはじめて有効になります。税務調査等で、生前贈与した事実を証明できるように以下の点に注意することが必要です。
注意1 贈与の際、契約書を作成する。
注意2 通帳や印鑑、カードの管理は贈与を受けた本人が行う。
注意3 お金の贈与は振込で行う。
マイナンバー制度がはじまりました。雇用保険関係では、平成28年1月1日以降提出分から、雇用保険の「被保険者資格取得届」・「被保険者資格喪失届」へのマイナンバーの記載が必要になります。
なお、税務関係の源泉徴収票などの毎年1月末までに提出する法定調書へのマイナンバーの記載は、平成29年1月末提出の「平成28年分」からになります。
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18世紀後半のイギリスにおいて、高級陶磁器会社として名を馳せたウェッジウッド。ところが、経営の内情は資金繰りの悪化と過剰在庫で火の車でした。しかし、その危機を救ったのが複式簿記の導入でした。そのポイントは次の3つです。
①複式簿記によって、仕事の流れと勘定科目をチェックし、問題点を明らかにした。
②費用には、固定費と変動費があり、それが利益に影響することに気づいた。
③業績を正しく把握するために、会計専門家に帳簿の監査を依頼した。
所得税の確定申告の時期が近づいて来ました。受け取った保険金には、所得税がかかるものがあります。また、受け取った保険金の情報は、保険会社から税務署に報告されるため、うっかり申告を忘れると、あとで税務署から申告漏れを指摘されますので、注意が必要です。
(所得税が課税される主な保険金・給付金の例)■ 満期保険金 ■ 死亡保険金 ■ 個人年金保険の年金 ■ 祝金、生存給付金 ■ 解約返戻金
■ 学資保険金
平成28年1月からマイナンバー制度が始まりました。実務では、企業が作成する税や社会保険関係の書類にマイナンバーを記載しなければならず、従業員等(その扶養家族を含む)や外部の取引先等からマイナンバー(個人番号)の提供を受ける(収集する)必要があります。その際、番号間違いや成りすまし防止等のため「本人確認」を行います。
この本人確認には、原則として番号確認と身元確認(省略ができる場合もあります)の2つが必要で、次のような書類等の提示を受ける必要があります。
■番号確認…通知カードやマイナンバー記載の住民票、個人番号カード
■身元確認…運転免許証やパスポート、個人番号カード
所得税確定申告の準備のために必要書類を準備しましょう。
事業収入がある個人事業者の場合、収入(所得)については、次のような書類が必要となります。
□ 現金出納帳等の会計帳簿、通帳、青色事業専従者給与の届出書など
□ 売上資料(請求書控、売上日報、支払調書など)
□ 経費資料(領収書、請求書、カードの利用明細など)
□ 固定資産取得についての資料
□ 自家消費や家事関連費の明細書
□ 12月31日時点の売掛金・買掛金等の残高の明細書及び棚卸表等
□ 借入返済表(リース支払明細書) 等々
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平成27年ももうすぐ終わりです。自社の今年1年の経営を振り返ってみませんか。売上や利益の中身を取引先別、商品別に見ると、「売上が顕著に増加(減少)している取引先や商品があった」「売れ筋商品の価格、性能、品質などが変わってきている」など、売上高の総額からは見えない変化に気づくことがあります。そこから平成28年の目標や行動を考えるヒントが得られます。
取引先別の売上変化の確認ポイント
□ 売上高が(増えている・減っている)取引先がある。
□ 大口や主要な取引先の売上高が(増えている・減っている)。
□ 取引が少なかった取引先の売上が増えてきている。
□ 新規開拓先の売上が増えてきている。
□ 新規顧客が(増えている・増えていない)。
年末調整の時期になると、「103万円の壁・130万円の壁」が気になります。例えば、妻がパート収入のみの場合、以下のようになります。(生命保険の一時金等、その他の収入がある場合は年収に合計するので注意が必要です)。
● 年収が103万円以下
妻本人の収入には所得税はかからず、夫も配偶者控除が受けられます。
(但し住民税は100万円超から課税されます。自治体によっては100万円以下でも課税。)
● 年収103万円超141万円未満の場合
一定の要件を満たせば、夫は配偶者特別控除を受けることができます。
● 年収が130万円以上になった場合
夫の加入する社会保険の扶養家族から外れ、妻本人が社会保険料等を支払うことになります。
※マイナンバー制度により、パート収入等もほぼ正確に把握されるようになります。誤りにも十分注意しましょう。
郵送されるマイナンバーの「通知カード」と、申請によって交付される「個人番号カード(マイナンバーカード)」は別のものです。通知カードには「個人番号カード」の交付申請書が同封されています。
「個人番号カード」の取得は任意ですが、今後、国や自治体が行う行政サービス(電子申告・申請、コンビニ設置の端末からの住民票等の取得など)を利用するには、「個人番号カード」が必要になるようです。
個人番号カードのサービス
■公的な身分証明書として利用できる。
■国や自治体等が提供するサービス毎に必要だった複数のカードが個人番号カードと一体化される。
■搭載された電子証明書を使って電子申告や各種行政のオンライン申請ができる。
■コンビニなどで住民票、印鑑登録証明書などの公的な証明書を取得できる。
■平成29年1月開始の個人専用サイト「マイナポータル」を利用できる。 など
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年末調整により生命保険料控除を受けるには、10月下旬頃に保険会社等から各従業員に届いた保険料控除証明書等が必要です。
こうした書類をもとに保険料控除申告書を作成しますが、配偶者特別控除申告書も含め間違いが見受けられます。以下の注意点を従業員に徹底しましょう。
■送られてきた「控除証明書」等を紛失しない。(原本を添付します)
■生命保険の種類と新旧区分が正しいかをチェックしたか?
■保険金等の受取人の氏名や続柄などが記載されているか?
■「保険料等の金額」欄には1年間に支払った金額が記載され、正確に控除額が計算されているか?
■「扶養控除等(異動)申告書」に記載があるのに「配偶者特別控除申告書」に二重記載していないか?
今年の年末調整の実務において、年内に平成28年分の「扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう場合には、企業がマイナンバーを取得することが認められています。
マイナンバーの記載された「扶養控除等申告書」を提出してもらうにあたって、「利用目的の明示」と「本人確認」が必要になります。
小規模企業共済制度は、小規模企業の個人事業主または会社等の役員の方が事業をやめられたり、退職されたりした場合に、生活の安定や事業の再建を図るための資金をあらかじめ準備しておく、小規模企業の個人事業主の「退職金制度」といえる制度です。
この制度は、掛金を払い込む時と共済金を受け取る時、それぞれに節税を受けられるというメリットがあります。
一般的な会社員の年金は、国民年金と厚生年金の2階建てになっています。国民年金は一律65歳から、厚生年金は生年月日等により支給時期が異なりますが、将来的には一律65歳からの支給になります。
年金は自動的には支給されず、請求する必要があります。日本年金機構から送られてくる「年金請求書」に必要事項を記載後、添付書類とともに最寄りの年金事務所に提出することで支給が開始されます。
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